イベントレポート
Mobile World Congress 2014が24日から開幕
~iPhone向けのNFC対応ケースを配布して入場者管理に対応
(2014/2/24 00:00)
スペインのバルセロナにおいて、モバイルサービスにおける世界規模の展示会「Mobile World Congress 2014」が、2月25日(現地時間)に開幕する。2013年からは最大22万平方mの広い展示スペースが確保できるコンベンション施設「Fira Gran Via」へと会場を移動しており、この新会場における通算2回目の開催を迎える。2013年開催実績は1,700を超える出展企業、約72,000人の来場者だった。
Mobile World Congressでは、端末メーカー、回線キャリア、部品メーカー、ソリューション企業、ソフトウェア企業など、モバイルに関するありとあらゆる各国の企業が一堂に会してブース展示や基調講演そしてカンファレンスなどが4日間にわたり開催される。
2014年の「NFC Experience」はiPhoneにもフォーカス
2013年にMobile World Congressで実施された「NFC Experience」の概要は、昨年のレポートで詳しく紹介している。そこでも述べたとおり、FeliCaを使った決済が「おサイフケータイ」として広く普及している日本と比べ、欧米では少なくともスマートフォンを使った決済サービスに関してはまだまだ大きな差があると言わざるを得ないだろう。
2014年もこのNFC Experienceは実施される。昨年は約3,500台のXperia Tを公式端末として配布して、決済サービスやクーポンサービスを来場者に体験させるというところに目的がおかれていたが、意外にも2014年にピックアップされたのはiPhoneだった。
Apple自体はMobile World Congressに出展を行なっているわけではないが、世界的なシェアを考えると、スマートフォン市場での存在感は決して無視することはできないことは言うまでもない。展示フロアには関連周辺機器が数多くならんでおり、アプリケーション、ソリューションのデモも至るところで実施されている。表には出てこないものの、Mobile World Congressにおける影響力も大きいことは確実だ。
NFC Experienceのもっとも簡単な体験は入場バッジのNFC化である。昨年も触れているが本来は来場者に配布されるバッジとパスポートや運転免許証を合わせて提示することで入場管理が行なわれている。この部分を、来場者各自が所有するNFC内蔵のスマートフォンを利用して、バッジと本人を証明する写真の提示をスマートフォンをかざすだけで行なえるようにしている。とは言え、画面がアクティブでない状態では使えなかったり、Android端末ではAndroidビームを使っていたため、かざした後で操作が必要な点など必ずしもスムーズとは言えない部分も目立った。少なくとも日本の自動改札機と同じ感覚で進むとひっかかってしまう。
また、2013年2月時点では必ずしもNFCを内蔵したスマートフォンが世界的に広く普及していたとは言えない。決済サービスを実施する都合からセキュアエレメントを内蔵したSIMを用意する必要もあり、双方に対応する方策が公式端末としてのXperia T配布だったと推測される。もちろんXperia Tの配布を受けていない来場者でもNFC内蔵のスマートフォンを持っていれば、入場手段としての「NFC Badge」は利用できていた。
今回、このNFC BadgeがiPhone向けにも提供される。GSMAは米国のアクセサリ大手であるincipioからスポンサーシップを取り付けて、NFCを内蔵したiPhone向けのケースを限定数ながらiPhoneを所有する来場者に先着順で配布すると発表した。事前のバッジ受け取りに際して、弊誌でもこのiPhone向けケースを同時に入手したので仕組みを紹介しよう。
もちろんiPhone本体にはNFCは内蔵されていないので、iPhone本体とNFCケースとの紐付けが必要だ。ケースにはLightningコネクタがあり、一見バッテリ内蔵のパワージャケットのように見えるが、バッテリは内蔵されていない。代わりにmicroSDタイプのスロットが用意され、ここにNFCとおそらくセキュアエレメントを搭載したmicroSDがあらかじめ挿入されている。iPhone本体とケースはBluetoothで接続して紐付けが行なわれている模様だ。Lightning端子はケースのMicro USBポートへと接続されているが、給電以外の信号がこのmicroSDスロットにとおっているかまではまだ分からない。
ケースはiPhone 5/5s向けとiPhone 4/4s向けの2種類があり、自分の所有するiPhoneに合わせて選択できる。前述したように先着順で希望者に配布される。
iPhone本体にケースを取り付けて起動すると、アクセサリに対応するアプリのインストールが促される。必要なアプリはGSMAがiTunes Storeで無償配布している「GSMA Official」で、このアプリの項目にある「My Reg & Badge」をアクティブにする。あらかじめ入場者登録を行なったIDとパスワードでログインすると、NFCに登録情報が書き込まれる。筆者の場合は、昨年までAndroidのNFC Badgeを利用していたこともあって、入場者登録は更新に近い形だったため顔写真などは自動的にサーバー側から読み込まれたが、新規で登録を行なう場合は前面カメラなどで撮影するか、ライブラリから顔写真の選択が促されるものと推測される。
こうして事前準備は終わった状態にしているが、開場は24日(現地時間)を待つことになるので、このiPhoneを使って実際に入場できるかどうか、そしてその際の操作方法などは追ってレポートしたい。
さて、このincipioのケースだが、パッケージには「NOT FOR RESALE」と「PROMOTIONAL ITEM DEMO ONLY」の記載があり、現時点では非売品、デモ用途であることは間違いない。パッケージにもGSMAとMobile World Congressの文字が入った専用品だ。製品名は「INCIPIO CASHWRAP NFC CASE」とある。本来、iPhone向けのLightningコネクタが付いたケースであれば「Made For iPhone」のロゴが記載されているはずだが、パッケージには見あたらない。
とは言え、incipioはMFi認証を取得しているアクセサリメーカーでもあることから非正規品というわけでもなく、前述のとおりまだ商業製品ではないデモ用途という位置付けだろう。CASHWRAPには商標表記もあるので、将来的に決済も含めた商業化を意図している可能性はある。もちろん、Appleが直接関与しない場合は商用化してもどれだけ普及するかは未知数だ。セキュアエレメントとNFCはmicroSD形状になっているので、iPhone以外という選択肢ももちろん存在する。
Mobile World Congressの開幕後はNFC Badgeの使用感に併せて、microSD形状に納められたセキュアエレメントの実装や通信の仕組みなども取材して紹介する予定だ。