イベントレポート

【詳報】iPhone登場以来、最大の変化「iOS 7」を発表

〜シンプルかつフラットなインターフェイスへ一新。今秋リリース

会期:6月10日〜6月14日

会場:Moscone Center West

シンプルかつフラットなインターフェイスに一新された「iOS 7」

 既報のとおり、米AppleはサンフランシスコでWWDC(世界開発者会議)を開催している。このWWDCの基調講演において、iOSデバイス向けの次期OS「iOS 7」が正式に発表された。同日付で、開発者契約を結んでいる開発者に対しては、このiOS 7のβ版にあたるプレビューリリースとSDK(Software Development Kit)の提供が始まった。WWDC参加者をはじめ、世界中の開発者がこのプレビューリリースを元に、自分のアプリケーションをiOS 7へ対応させたり、新しく提供されるAPIを活用して新機能を追加したり、まったく新しいアプリケーションの開発を目指していく。

 iOS 7のプレビューリリースは、iPhone(および第5世代iPod touch)に対応するもので、iPadなどタブレット向けのプレビューリリースは近日中に提供されるとアナウンスがなされている。これらのプレビューリリースは、一般向けに公開されたものではない。開発者が独自に撮ったiOSスクリーンショットの露出なども、Appleと結ばれているNDA(Non Disclosure Agreement:機密保持契約)を逸脱する行為にあたるので、気をつけるとともに、ユーザー側でもそうした違反した情報をありがたがったり、拡散するような行為は慎むべきであろう。

 iOS 7の正式リリースは「今秋」と発表された。例年どおりであれば、新iPhoneやiPadなどの製品発表をともなって、9月中旬から10月中あたりのリリースが1つの目途になるだろう。この時期は、特に北米エリアで消費活動が活発化するホリデーシーズンにあたる。

 予期される新製品はもちろん、既存のiOSデバイスにおいてiOS 7のアップグレードを適用できるのは、iPhoneであればiPhone 4(2010年発売)以降、iPadはiPad 2(2011年発売)以降、iPad mini、そしてiPod touchは第5世代(2012年発売)以降とされている。現行のiOS 6と比べてみると、長くサポートが続いていたiPhone 3GSが対象外となったほか、iPod touchについては現行製品である第5世代のみと、iOS 6に比べるとやや要求仕様が高くなっている。またSiriに代表されるように、製品によってはiOS 7全ての機能が利用できるわけではないことも注意点の1つとなる。

iOS 7の正式リリースは「今秋」を予定
開発者向けのβ版とSDKは、WWDC 2013の開幕にあわせて配布を開始
iOS 7では新たに1,500もの新しいAPIが、開発者向けに公開される

6億台のiOSデバイスを出荷。Androidに対するアドバンテージを強調

iOS 7の公開を前に、ティム・クックCEOがiOSを取り巻く世界のモバイルプラットフォームについて言及した

 基調講演の中でティム・クックCEOは、iOSを搭載するデバイスの総出荷台数が6億台を突破したことを明らかにした。昨年(2012年)、同じWWDCで公表された数字が3億6,500万台であったことを考えると、約1年間で2億3,500万台を上積みしたことになる。また、現行のiOS 6がインストールベースでは93%に達し、AndroidにおけるJelly Beanの33%を大きく引き離している点を強調した。この数字は最新OSの利用率が非常に高いことで、開発者がAppを開発する際にターゲットを明確にしやすいという利点を強調するものだ。

 皮肉られた格好になったAndroidだが、こうした比較は昨年のWWDCでも行なわれており、その時はiOS 5が80%程度で、Ice Cream Sandwitchが7%止まりだった。Androidにおける分断化はAppleの講演によらずさまざまな局面で指摘されている部分ではあるが、こうした定点観測でみれば、2013年はICSとJelly Beanを足すとほぼ6割まで達しており、好転しているという事実は見過ごすことができないポイントである。

 クックCEOが引用した競合との比較はほかにもあり、1日におけるスマートフォンの利用時間は、iPhoneがAndroidに比べて5割増しの75分あまりで、WebのトラフィックもiOSが6割、タブレットに限定すればiPadが8割強を占める。サンクスギビング明けのBlackFridayセール(誰が商売しても黒字になるほどに消費が活発化する)におけるECサイトのトラフィックでもiOSデバイスがAndroidを上回った点をアピールした。こうしたメッセージは開発者に対しプラットホームの優位性を強調して、iOS向けのアプリケーションの制作は、開発者にとっての利益にも繋がるということを伝えるメッセージになっている。

累計のiOSデバイス出荷数は6億台に達した。昨年から2億3,500万台余りを上積みしている
iPhoneのユーザーは、Androidユーザーに比べて1日に端末を利用している時間が5割増しの75分程度というデータ
インストールベースでは、現行OSのインストール比率が突出して高いことをAndroidと比較してみせた
デバイスに対して「とても満足した」と答えたユーザーの比率。iOSが高い数値になっている点に加えて、Windows PhoneがAndroidを上回っている点にも注目
モバイルのWebにおけるマーケットシェアのデータ。iOSが6割でAndroidは24%に留まるという
BlackFridayセールにおけるECのトラフィックデータ。iPhone以上にiPadの比率が高いことは非常に興味深いデータだ

一新されたルック&フィール。10個のトピックをピックアップ

 続いてiOS 7の紹介が行なわれた。製品発表の場では恒例になっているジョナサン・アイブ上級副社長を中心にしたビデオメッセージだが、今回は例外的にセクションの冒頭で上映されている。

ビデオメッセージで登場し、iOS 7のデザインコンセプトやヒューマンインターフェイスの紹介を行なったインダストリアルデザイン担当のジョナサン・アイブ上級副社長

 現行のiOS 6における目玉機能の1つとして登場したApple純正のMaps(地図)アプリケーションだが、内外の大きな期待とは裏腹に、決して満足できる実装が行なわれたとは言いがたかった。当時iOSソフトウェアの責任者だったスコット・フォーストール上級副社長は、その責任を取る形で事実上の更迭がなされている。とは言え、これまでiOSを牽引してきた同氏の後を埋めるべき人材など、そう簡単にいるわけではない。そこでAppleの社内人事としては、OS Xソフトウェアを担当するクレイグ・フェデリギ上級副社長をiOSの責任者としても兼任させた。インターネットソフトウェアを担当していたエディー・キュー上級副社長が、Siriと問題の地図サービスを担当。加えて、インダストリアルデザイン担当のジョナサン・アイブ上級副社長がヒューマンインターフェイスという形でiOSのユーザーインターフェイスやデザインを統括することにして、問題の収拾を図り、次期iOSの開発に向かうことになった。これが2012年10月の出来事である。

 これまでインダストリアルデザイン担当として、主にハードウェアデザイン全体を統括していたアイブ氏が、ソフトウェアを含めて統括すると言うことは地図問題の収拾にとどまらず、幅広くiOSのルック&フィールやユーザーインターフェイスが変わることを意味した。スキュアモーフィズムをOSに導入していた原動力であるフォーストール氏と、同氏の後ろ盾でもあった故スティーブ・ジョブズ氏という体制から、ミニマルで機能的なデザインを前面に出すアイブ氏のスタイルに、ソフトウェア側の転換も図られるからである。8カ月という短期間、および工業デザインとソフトウェアデザインにおけるアプローチの違いなど、そのハードルは高いと言わざるを得なかった。

iOS 7のロックスクリーン。ロック解除はボタンのスライドから、下から上へのスワイプ操作に変わる。後述するが、上から下へのスワイプでロック画面からでも通知センターを表示できる

 その回答として流れたのが、異例となる冒頭のビデオメッセージだろう。このビデオ部分は、現時点では英語のみだが、Appleのサイトで観ることができる。アイコンや各アプリケーションの表示自体は極めてフラットであるものの、それぞれにレイヤーが意識されていて、例えばアイコンと壁紙の間には常に一定の空間がイメージされている。設定メニューや、操作パネルにおいても、アプリケーション上に空間を配置して、レイヤーを重ねていく。フラットな多層構造でありながらも単に紙を重ねたようにはならない立体感が演出され、それがOSとアプリケーション感で統一が図られている。これまでは自分の直接的な指揮下ではなかったソフトウェア担当のエンジニアに対してコンセプトイメージを伝え、わずか8カ月でこれだけの仕事をさせたことは大きな驚きでもある。

 言うまでもなくOSのアップデートとは、マルチタスクや省電力化など目に見えない部分でもあるコア技術の更新と、今回のような見た目の大きな変化や、機能追加を含んだ集合体だ。それがトータルされて、OSのアップデートとしての評価に繋がる。

iOS 7の紹介とデモンストレーションを行なったクレイグ・フェデリギ上級副社長

 ビデオ上映のあと、インターフェイスデザインを含め、新機能の紹介とデモンストレーションは、クレイグ・フェデリギ上級副社長が担当した。まずは、iOSにおける既存のロック画面やホーム画面、およびプリインストールされるアプリケーションがどのように変わったのかをスライドで見ていこう。手元にiPhoneなどがあるユーザーは、自分のiOS 6の画面と比べてみるといいだろう。

ホーム画面。全てのプリインストールされるアプリケーションのアイコンがデザインし直されている。細かい点では、時計はアイコンレベルで現在時間を表示、Mapsのアイコンでは、現在地表示がこれまでのApple本社から、建設中の新社屋に変わっている
アプリケーションアイコンのレイヤーと、壁紙のレイヤーの空間的な位置関係。デバイス本体を傾むけることで、壁紙自体の見え方や、壁紙へのアイコンのドロップシャドウが変化している
「天気」のアプリケーション。これも気象データと背景ではレイヤーが異なっている。気象状況に合わせて、背景がアニメーション表示される。登録した地域の気象状況は、ピンチ操作で一覧表示へと変わる
「メッセージ」のアプリケーション。iMessegeの画面では、入力するキーボードがメッセージの上のレイヤーとなり、磨りガラス状に背景が透けている。最新のメッセージは下からスクロールアップして、キーボードの下をくぐり抜けて表示される。一覧へ戻る操作も、メニューの選択からスワイプへと変わった
「カレンダー」。縦表示、横表示とも一新されている。月表示はiOS 6のようなボタン操作ではなく、上下スクロールで前後の月へ移動できるようになる。
新たに、年間カレンダー表示も加わった
「メール」。メッセージ一覧でのスワイプで削除や他の操作が選択できる。添付写真のプレビュー表示にも対応する
機能面での大きな変更点は少ないが、スキュアモーフィズムとの決別という点で、もっともわかりやすい「Game Center」。フォルダに複数ページにまたがって多数のアプリケーションを登録できる機能は、大きな歓声をもって迎えられた
パスコードの入力画面。全画面に大きくひろがって表示されるようになった
「電話」と「連絡先」のデザインも一新された
いわゆる本棚のデザインから一新された「Newsstand」
やはりデザインが一新された「コンパス」、「株価」、「計算機」
「時計」。iOS 6ではスイス鉄道時計のデザインをタブレット版に使用したことで、盗用問題も起きたが、後日和解。金額は公表されていないが、Appleはスイス鉄道とライセンス契約を結んでライセンス料の支払いに応じた。iOS 7の時計はiPhone版を見る限り、スイス鉄道のデザインとは異なる感じがする。iPad版は不明
ロック画面からでも表示が可能になる「通知センター」。半透過なデザインになり、通知内容も、Today、All、Missedに大分類。累積していた通知のため、延々と長くスクロールが必要だった状況が改善される
クローズアップされた10のトピックス

 これら既存のアプリケーションの改良に加えて、新機能あるいは大きな変更をともなったアプリケーションは、10個のトピックスにまとめられて個別に紹介とデモンストレーションが行なわれている。続いてそれらを見ていこう。

 まず紹介されたのは「Control Center」だ。ホーム画面で下から上へスワイプすることで表示されるのは、頻繁に利用する機会のある設定や操作などを一覧にしたメニューである。利用できるのは設定項目として、「機内モード」、「Wi-Fi」、「Bluetooth」、「おやすみモード」、「画面回転ロック」の5つ。これらの設定をタップするだけでトグル式にON/OFFできる。「画面の明るさ」の設定はスライドバー式で調整できる。これらはいずれも設定アプリケーションを階層式に辿っていくことで個別に設定できる項目だが、利用頻度の高いものを一覧にした形だ。

 操作できるものとしては音楽プレーヤーがある。音楽プレーヤーはiOS 6まででもロック画面などから同一の操作を呼び出すことはできたが、iOS 7では「Control Center」に統合されることになる。その他、Air Drop、AirPlayといったファイルやストリーミング先の共有設定も「Control Center」に含まれる。加えて懐中電灯、時計、電卓、カメラのショートカットが加わった。LEDフラッシュを使った懐中電灯機能は、これまでサードパーティ製のアプリケーションとして人気だったものの1ジャンルだが、iOS 7ではOSの機能として実装される模様だ。

 Control Centerは、たびたび繰り返しているレイヤーの概念の中で、最上位のレイヤーに位置するものと思われる。磨りガラス状の表示レイヤーの下には下層のレイヤーが半透過で表示されている。

「Control Center」。頻繁に行う可能性の高い設定項目や操作などが1枚のパネル状に配置されている。AndoroidでもJelly Bean以降や、各メーカーの実装により実現している機能の1つ

 続いてはマルチタスク機能の強化だ。これまではアプリケーションやAPIを限定して可能だったバックグラウンド動作をすべてのアプリケーションに解放する。起動中のアプリケーションにおける情報更新はインテリジェントにスケジューリングされるという。更新頻度などはネットワークの状況なども考慮されるほか、プッシュトリガーなどによって管理される。気になるのはこうしたバックグラウンド動作によるバッテリ消費の増加だが、Appleによれば、こうした動作を行なってもバッテリ消費は大きな影響を与えないようなOSレベルでの対応がなされるようだ。

 起動中のアプリケーションの切り替え画面も、これまでのアイコン単位から、アプリケーションのプレビューを伴うものに変更されて、左右のスワイプ操作でフォアグラウンドにするアプリケーションが選択できるようになる。このプレビュー画面も前述のバックグランド動作で更新されている内容が反映されたものになる模様。

「マルチタスク」。バッテリ消費を維持したままで、マルチタスク、バックグラウンド動作をすべてのアプリケーションに解放する。アプリケーションの切り替え画面には、更新されたプレビュー画面をあわせて表示する

 標準のWebブラウザである「Safari」は、フルスクリーンのインターフェイスに変更された。分離していた検索ウインドウとURLウインドウは統合され、Samrt search fieldに置き換わる。このSamrt search fieldはシステムワイドなもので、サイトの検索にとどまらず、iOSデバイス内のアプリケーションやデータにも及ぶ。つまり、これまでホーム画面をもっとも左へスワイプして表示されていたデバイス内検索の画面はなくなって、このSamrt search fieldに統合されることになる。

 そのほか、これまで最大8つだったウインドウ表示は、新たなタブ表示に変更された。こちらも、各タブ間に空間をイメージしたレイヤー表示となり、上下スクロールでアクティブなウインドウを選択できるようになる。そのほか「iCloud keychain」にも対応。これは各サイトのIDやパスワードなどを一元管理する仕組みで、住所などのAuto Fill機能やクレジットカード情報の保管などにも対応する。iCloudを通じてMacなど他のデバイスとも情報を共有することができる。

Safariの機能強化一覧。インターフェイスがフルスクリーン化するほか、検索フィールドはシステムワイドになる。iCloud keychainにも対応
システムワイドになったSamrt search field。サイトの検索をはじめ、iOSデバイス内のアプリケーションやデータも合わせて検索対象になる
iOS 7に搭載されるSafariのメイン画面
MacのSafariなどと共有できるReading List
Macや他のiOSデバイスで開いているタブの情報が共有され、簡単に呼び出すことができる
レイヤー表示になったウィンドウ選択画面。スクロールでアクティブにしたいウインドウを選択できる

 「Air Drop」はOS XからiOSヘと取り入れられる機能で、P2Pでのファイル転送機能。自分の周囲の対象デバイスに対してファイルの転送が可能だ。操作はファイル共有の手順で、例えば写真ならメールへの添付やFacebookへの投降などと並んで、Air Dropによる周囲への転送が選択できる。すでに連絡先に入っている宛先はもちろん、その場で認証を取っての転送も可能。

OS Xでは以前から実装されているAir DropをiOSデバイスにも導入する。
シェアしたい写真などを選択して、共有先にAir Dropを選ぶことで転送が可能。転送先を複数同時に選択することもできる
Air Dropの対応機種は限定される。スペックの基準とは直結しないが、わかりやすく言うとLightning搭載の製品が対象

 「カメラ」機能は、これまで分離していた静止画と動画の切り替えスイッチを廃止。ビデオ、写真、縦横比が1:1の正方形の写真、パノラマ撮影を左右のスワイプ操作で撮影モードの切替が可能になった。さらに、フィルタとしてMono/Tonal/Noir/Fade/Chrome/Process/Transfer/Instantが設定可能になっている。これは、プレビューを表示したままで効果が確認できるダイナミックフィルタとなっている。

 関連して管理アプリケーションである「写真」にも改良が加えられた。これまではカメラロール単位、あるいは一覧でずらりと写真が並んでいるだけで、検索性には乏しかった部分が、年別表示、あるいは位置情報、イベント情報を元にした絞り込みを行なうことによって、過去に撮影した写真への検索性が高くなっている。

人気のカメラ機能も強化される
ビデオ撮影モードは写真と同列になり、iOS 6のようにスイッチで切り替えることなく、スワイプ操作でビデオ撮影モードに移行する
写真の撮影モードとしては、縦横比が1:1の正方形の写真を撮影するモードが加わった
パノラマ撮影モードも、前述の正方向モードと同列に、左右のスワイプで撮影モードを切り替えることができる
ダイナミックフィルタ。プレビューイメージを表示してフィルタ効果を適用できる
管理ソフトである「写真」も機能強化される。感覚的なものだが、このアイコンは今回の更新の中では、用途がアイコンだけではわかりにくかったものの1つ
撮影日時や撮影場所をもとに、写真を絞り込む。こうしてグループ化された写真をそのまま共有することも可能
年単位の表示。個々の写真が非常に細かくサムネール化されている
サムネールの上で指を滑らせていくと、選択した写真がポップアップで表示され、目的とする写真が探しやすくなる
インターネットソフトウェア&サービス担当上級副社長のエディー・キュー氏は、Siri関連とApp Store、iTunes Radioなどの紹介を行なった

 Siri以降の4つのトピックスについては、インターネットソフトウェア&サービス担当上級副社長のエディー・キュー氏による紹介とデモンストレーションが行なわれた。Siriの強化は継続して行なわれており、Siriによる検索可能な範囲はさらに拡大する。例えば、WikipediaやTwitterもその対象になる。Twitterは特定のアカウントを指定すれば、そのユーザーのツイート一覧を表示するといった使い方ができる。

 またiOS 6までは米国で利用するアメリカ英語では女声、英国のイギリス英語では男声と国別言語別に応答可能な音声が決まっていた。ほかにもドイツ語では男声で、日本語では女声である。これは国民のニーズによるもので、アメリカ人はSiriに対し秘書的役割を求め、英国は執事の役割を求めるなどという勝手な意味付けを筆者なりにしていた。「それなら日本は初音ミクであるべきだろう」というのは明らかな余談だが、iOS 7では各国ごとにこれが男声、女声とも選べるようになる。デモされたのはフランス語、ドイツ語などで、日本語は含まれていなかったので、日本語でもiOS 7から男声が含まれるかは明言できない。

Twitterのタイムラインからの検索にも対応。ユーザーアカウントを指定することで、そのユーザーのツイート一覧を表示できる
BingによるWeb検索に対応した
こちらもBingによる画像検索の結果。次期OS XのMavericks由来ともなる波を表示

 Siriに関連しては「iOS in the Car」という機能もアナウンスされた。これは車載システムがiOS in the Carに対応することで、車載システム上でSiriによるコントロールやナビゲーション、通話やメッセージのやりとりが行なえるというもの。昨年も「Eyes Free」という名称で、Siriと車載システムとの連携はアナウンスされていたが、もう少し統合が進んだようなイメージになる。スライドでは、メッセージ、音楽再生、ナビゲーション、電話などの機能がSiriを使った音声コマンドで実行できるような紹介がなされている。実装は2014年以降を予定しており、スライドでは全12ブランドの車メーカーのロゴが表示され、順次対応が進められるとコメントされている。

「iOS in the Car」。メッセージ、通話、ナビゲーション、iOSデバイス内の音楽再生などを車載システムに連携してSiriによるコントロールを行なう。12ブランドの車メーカーと導入への協議を進め、実装は2014年以降の見通し

 App Storeに関しては、子供向けのカテゴリが新設されるほか、「Popular Near Me」というカテゴリも加わる。これは位置情報をもとに、その場で人気の有効なアプリケーションをリコメンドしてくれるサービスだ。App Storeにはアプリケーションの自動更新機能も追加される。Google Playではすでに実装済みの機能だが、App Storeでもようやくこの機能が有効になる。

App Storeには、子供向けのカテゴリが新設される
Popular Near Meは、位置情報を元に、その場で人気の有益なアプリケーションをリコメンドしてくれるサービス
例えばパリでPopular Near Meを利用した場合、ルーブル美術館のガイドアプリやパリ観光に適したロンリープラネットのパリ版などがオススメにあがる

 音楽サービスにはインターネットラジオサービスの「iTunes Radio」が加わる。これはストリーミングによる、いわゆる音楽聴き放題のサービス。広告収益型のサービスで、iOSデバイスに限らず、Mac、PC、Apple TVで利用可能となる。同じチャンネルを聴き続けたり、レーティングをしていくことで、より好みに沿った音楽が聴けるようになるほか、気に入った曲はそのままiTunes Storeで購入ができるような導線が用意される。広告収益型であるため、サービスの利用自体は無料だ。クラウドロッカー型のiTunes Matchの契約者は広告なしでの利用が可能となる。iTunes Radioのサービスは米国でのみ開始され、各国への展開は後日発表される見通し。日本では前述のiTunes Matchも開始されていないため、このサービスがいつ頃日本でも利用可能になるかは不明だ。

一新されたデザインのiOSデバイスの音楽プレーヤー。ホリゾンタルモードでのカバーフロー表示はなくなるのかも知れない
iOSデバイスに限らず、iTunesのサービスに新しく加わるインターネットラジオサービスの「iTunes Radio」
まずは米国のみでサービスが開始される。広告収益型であるためサービスの利用料は無料。年額24.99ドルのiTunes Match契約者は広告が非表示となる
iPhoneで表示した「iTunes Radio」の様子。任意のステーションに加えて、自分好みのチャンネルなどを設定できる
気に入った曲はその場で、あるいは履歴などを元にしてiTunes Storeから購入が可能となる。音楽販売としての導線としての役割も持つようだ
トピックとして取りあげられた10項目に加えて、大小さまざまな新機能が追加されるiOS 7

 ほかにも、暗いところでは地図が周囲の明るさに合わせる夜間モード、通知のデバイス間における同期機能、電話やFaceTime、メッセージのブロック機能など多数の機能がiOS 7には搭載される見込みだ。

 また、社会問題化しているスマートフォン盗難対策の1つとして、「アクティベーションロック」機能が導入される。これは、これまでの「iPhoneを探す」機能を拡張するもので、リモートロックやリモートワイプをかけた端末を再アクティベーションする際にApple IDを要求するものだ。スリ、ノックアウト強盗など手段はさまざまだが、スマートフォン盗難の目的はデータ自体の強奪と、デバイスの転売目的が挙げられる。特に後者については、アクティベーションロックをかけることで転売が不可能となるため、犯罪を犯してまでスマートフォンを奪うという行為に対する抑止効果が期待できる。

アクティベーションロック機能。「iPhoneを探す」機能で所在地の確認や、メッセージを送る、リモートロックをかけるなどの対策が可能。加えて、再アクティベーションに際してApple IDを要求することで、転売目的の盗難に対しての抑止効果が生まれる

 冒頭で述べた通り、今回の基調講演で紹介された内容はiOS 7の代表的な機能の一部であり、また開発者向けのプレビューリリースに基づく。また、スライドで示された機能でも正式リリースが近づくにしたがって機能が実装されていくケースも少なくない。逆にiOS 6における「地図」の例のように、発表どおりの成果がリリースにはあたっては実現しなかったという場合もある。

 「今秋」までにはまだ間がある。インターネットには秘密保持契約を逸脱して開発途上のスクリーンショットなどが掲載される例もままあるが、そうした本来は許されざる事例に踊らされることなく、製品や各機能に関しては、正式リリースをもってあらためて評価をくだすべきものであると考える。とは言え、前回の地図の誤りなどはあまりにもクローズドで進めすぎたが故にリリース後の衝撃が大きかったのも事実である。開発者によるフィードバックだけでは吸収できない問題も多いため、そろそろなんらかの形でエンドユーザーベースのフィードバックを受け入れる余地も設けてはどうかと思う。

 現時点で公開されている範囲で気になっている部分の例をあげれば、アンテナの感度表示がある。左上に○が5個で表示されており、●が有効で白抜きの○はそこまでの感度に至っていないことを表している。技術っぽい話をすればビットがたっているわけだし、こうした記事を書いている関係もあって、何となくその●が感度を表していることは筆者個人としては想像に難くない。しかし、それが万人にすぐに伝わるかどうかは疑問の余地がある。グローバルデザインのアンテナピクトの方がわかりやすいという気はするが、こうしたフィードバックをAppleが受け入れてくれるかどうか、開発体制の変化と同様に気になる部分だ。

 大きく印象が変わるiOS 7だが、その華やかさゆえか、スライドに登場しているiPhoneのほぼすべてがホワイトだったことは気にとめておきたい。iOS 7のセクションで、ブラックベースの製品がスライドに登場したのは、クックCEOによるマーケットシェアを紹介した部分と(これは、iOS 6の画面)、Air Dropにおける転送対象となったiPhoneの2カ所だけだった。これが次期iPhoneのヒントになるかどうかはわからないが、見比べれば白が基調のデバイスの方が映えるインターフェイスに思える。

 iOS 7のシステムフォントは、「Helvetica Neue Ultra Light」のようだ。非常に細い書体で、まさにRetina Displayでこそ映える書体とも言える。日本語をはじめとする2バイト書体には何が採用され、このHelvetica Neue Ultra Lightと組み合わせたときに、果たしてどんな見映えになるかも気になるポイントだ。

(矢作 晃)