【WWDC 2012前日レポート】
Appleの開発者会議「WWDC 2012」が11日に開幕
〜Mountain Lionの全容に加え、iOS 6を初公開

会期:6月11日〜6月15日
会場:Moscone Center West



会場となるMoscone Center West。例年になくカラフルな旗で彩られている

 米Appleが次期OSに関連する技術情報などを開発者向けに開示するWWDC(Worldwide Developers Conference:世界開発者会議)が6月11日から開催される。今年も会場はサンフランシスコにあるMoscone Center Westで、2003年にこのコンベンション施設のこけら落としイベントとしての開催されてから10年目の節目の年にもあたる。

 その2003年にWWDCで発表されたのは、Mac OS Xでは4番目のリリースにあたる「Mac OS X 10.3 Panther」で、ハードウェアとしては「PowerMac G5」と「iShigt」だった。このPower PC G5プロセッサを最後に、Mac製品はPower PCアーキテクチャからIntelアーキテクチャへの転換を果たしたが、当時発表されたPowerMac G5の基本的な筐体デザインは現行のMac Proにも継承されている息の長いデザインになっている。

 またiSightカメラは、当時iChat AV向けのビデオチャット用カメラとして発表されているが、その後はMacBook、iMac、あるいはディスプレイ製品へと内蔵が進んだ。今ではiSightはiPhone、iPadに搭載されるカメラの総称としても用いられている。今回正式発表されるものと思われる「Mac OS X Mountain Lion(10.8)」では、iMessageがiOSとOS X間で統合されて、iChatクライアントがiMessageクライアントに置き換わる。言葉としての革新がひとり歩きをする一方で、テクノロジーや開発思想は10年の長きにわたって進行し続けているということを、もう一度あらためて考えるべき事例と言えるだろう。ちなみにiMessageは、βリリースとして現行のOS X Lion向けにも提供されている。

●iOS 6、Mountain Lionが披露される

 2012年のWWDCでフォーカスされるのは、iOSとOS X Mountain Lionである。WWDC 2012開催のニュースリリース中で同社のワールドワイドマーケティング担当上級副社長フィル・シラー氏も、「今年のWWDCは素晴らしいものを企画しており、iOSとOS X Mountain Lionの最新ニュースを開発者の皆様にお伝えできるのを楽しみにしています。iOSプラットフォームはまったく新しい業界を創出し、米国だけでなく世界中の開発者の皆様に幅広いチャンスを提供しています」と、世界中の開発者へメッセージを送った。

 2011年のWWDCはiOS5、OS X Lion、そしてiCloudがフォーカスされた。故スティーブ・ジョブズ氏が行った最後の基調講演でもある。2012年はCEO職をジョブズ氏より引き継いだティム・クックCEOを中心に、フィル・シラー上級副社長、スコット・フォーストール上級副社長らによる基調講演になるものと思われる。

 OS X Mountain Lionは、2月に同社が次期OSとして開発を明らかにし、現在は同社サイト内でプレビューページが公開されているとともに、契約デベロッパー向けのβリリースが進行中だ。Lionについても、ほぼ同様のステップを踏んで2011年のWWDCにおいて全容の公開があり、リリース日と価格等が明かされていることから、Mountain Lionも今年のWWDCでこれらの情報が明らかになるものと推測される。後述するMac新製品とも関連して「Today!」あるいは、極めて直近の発売となる可能性も高い。

 iOSについては、すでにMoscone Center Westのロビーに「iOS 6 (The world's most advanced mobile oprating system.)」の大型バナーが掲示されていることから、現行のiOS5からのメジャーバージョンアップとなる「iOS 6」の初披露は確定事項になった。なかには「すわ、iPhone5か!?」と考える向きもあるかも知れないが、基本的にiOSがPhone OSだった頃を含めて、iOSと新iPhoneの登場には規則性がある。まずiOSの新バージョンを開発者向けにβリリースして対応appを進行させた上で、iOSを正式リリース。そのタイミングにあわせて新iPhoneが発表されるという流れだ。

 現行のiPhone 4Sを例にとれば、搭載されているiOS5はWWDC2011でアナウンスして開発者向けにβリリース、10月にiPhone 4Sの発表と同時に正式リリースして現行製品への更新が行なわれている。つまりWWDCではiOS 6の概要こそ紹介されるものの、エンドユーザーの手に届けられるのはもう少し先になるものと推測できる。2010年のWWDC基調講演はiPhone4にフォーカスした極めて異例な基調講演ではあったが、搭載されたiOS4のプレビューは、WWDC以前にあらかじめ行われていたということを忘れてはならない。そしてiPhone 4SにSiriが搭載されたように、次期iPhoneにも今回のWWDC基調講演では公開されない何らかのサプライズ機能があると考えるべきだろう。

会場1階にある大型のバナー。早々にiOS 6の名称が明らかにされた。メジャーバージョンアップということがわかる OS X Mountain Lionのバナー。The world's most advanced desktop oprating system.の表記はiOSのそれと対をなす 昨年に続いてiCloudのバナーもある。MobileMeは6月30日に終了予定で、いよいよiCloudに統一される。新機能の追加はあるのか?

●Mac製品のラインナップに更新も?

 WWDCはその名称のとおり、あくまで契約開発者向けにOSに関連した技術情報を開示したり、Appleのエンジニアと開発者が直接コミュニケーションする場所であって、その基調講演は新製品発表イベントとは決してイコールな関係ではない。iPhoneを除いてはハードウェアとしての新製品が披露されるのはむしろ稀なケースと言える。しかし2012年に関しては、その限りではないかも知れない。

 現行のMac製品ラインナップを見渡すと、Mac Proを除いては、いずれもSandy Bridgeベースになっているが、実はMac関連の新製品はいずれもおおよそ1年にわたって発表されていない。iMacが2011年5月に、Mac miniとMacBook Airが同7月の発売だ。そしてMacBook Proは搭載プロセッサの更新によるマイナーチェンジを行なっているものの、実質2011年2月発表の製品にあたる。

 Intelアーキテクチャを採用している以上、IntelプロセッサのロードマップとMac新製品の発表には密接な関連がある。Thunderboltインターフェイスを搭載した現行のMacBook Proは、Sandy Bridge発売から約1カ月半後に発表されている。IntelによるIvy Bridge発売のニュースは記憶に新しいが、WWDCはちょうどそれから1カ月半後にあたる。MacBook Proには4月発売のモバイル向けクアッドコアを搭載してくると考えるのが妥当だ。

 また先日のCOMPUTEXのタイミングにあわせてデスクトップ向けのCore i5のラインナップが拡充されている上に、MacBook Airへの搭載が予測されるTDP 17Wの低電圧版Ivy Bridgeも正式に発表された。これで、Macの全ラインナップをIvy Bridgeベースに更新する体勢は整ったとみることができるわけだ。

 またWWDCでのハードウェア製品発表というのは、テクノロジー面での大きな転換を遂げるという意味もある。例えば前述のPowerPC G5を搭載したPowerMac G5、近年ではバッテリを内蔵しユニボディ化されたMacBook Proなどがその例だ。

 今回、可能性の鍵になっているのはディスプレイの高精細化である。iPhone、iPad製品ではすでに「Retinaディスプレイ」として採用が進んでいる高いppiのディスプレイパネルをMac製品にも採用するとなれば、それは大きな転換点となりえる。COMPUTEXではすでに11.6型クラスでフルHDのパネルを搭載したPCが参考展示されているだけに、例えばプロ向け製品とされる15型MacBook ProにおいてフルHDを超えるパネルを搭載するとなればWWDCでの発表とも合致し得る。ディスプレイ解像度やアスペクト比が製品間で違うPCでは縦横を2倍にした新しいiPadとはまた異なる対応を求められることにもなるので、前述のMountain Lionの開発状況ともからめて、新OSとともにハードウェア面での前進にも期待したい。

 プラットフォームベースでの進化だが、Ivy BridgeではUSB 3.0がチップセットに統合されている。高速なI/OとしてはThunderboltを推進するAppleではあるが、Ivy Bridge世代のMacではUSB 3.0もあわせて採用されるのは確実だ。またMac miniで光学ドライブを排除したのと同様に、MacBook Proクラスの製品でも光学ドライブレス、ゼロスピンドル化が進むことは想像に難くない。Mac App StoreはMountain Lionで採用されるGate Keeper機能にあわせて進化することでアプリケーションのインストールから光学メディアを排除するうえ、iTunes Storeの音楽、映像コンテンツ配信で、光学メディア自体を必ずしも必要とはしない体制をAppleは着々と築きあげている。

 こうした状況から、全ラインナップで新製品の可能性はあるが、やはり可能性としては製品更新が長くとまっていてPro向けと位置づけられるMacBook Proが最有力だろう。コンシューマ向けのiMacや、製品サイクルが元々長いMac miniはまた別の機会があるのではないかと思われる。またMacBook Airも、Sandy Bridgeの時と同様に低電圧版Ivy Bridge発売から1〜2カ月を経ての発表になるものと筆者は推測している。

●激化の一途をたどるWWDCチケット争奪戦

 5,000枚あまりのチケットをワールドワイドでオンライン販売するWWDCだが、その争奪戦は年々激化の一途をたどっている。それこそ10年前の2003年には当日会場に訪れても当日売りチケットが買えたものだが、2011年は約10時間、2012年にはなんと約2時間で1,599ドルのチケットが売り切れてしまった。WWDC開催のニュースリリースと同時にチケット販売が開始されたのは現地時間で4月24日の早朝。日本では同日の午後9時半頃に販売がはじまったこともあって、筆者のまわりでは日本人の開発者よりも、むしろ早朝にあたった西海岸周辺のデベロッパーが、いわゆる「WWDC難民」となるケースが目立った。

 セッション自体は、契約開発者に限定してWWDCの翌週から映像公開される。もちろんAppleのエンジニアと現地で直接コミュニケーションがとれるというメリットはあるが、いわゆるジョブズ詣的なプレミアム感も背景にあっての争奪戦とも想像していたが、ポストジョブズ時代になっても、このプラチナチケット化は、現在のモバイルプラットフォームにおけるAppleの勢いを象徴する事例の1つと言えるだろう。

開催前日のバッジピックアップの様子。参加者はパスポートなどの身分証明書を提示。バッジと今年のグッズを受け取る

 開幕を控えて、会場となるMoscone Center Westでは着々と準備が進んでいる。入場パスの配布は日曜日から始まっており、参加チケットの購入時に事前登録を終えている参加者が、断続的にパスの受け取りに訪れていた。パスポートなどの身分証明書の提示で、入場パスとWWDC限定グッズのフリースなどを受け取ることができる。現時点で入場可能な1階のフロアには、特に黒い幕で覆い隠されたバナーは見あたらない。バナーは3つあって、それぞれ、「iOS 6」、「OS X Mountain Lion」、「iCloud」が描かれている。そして、カウンター奥にある大型のバナーには数々のiOS向け人気appのアイコンが並んだ。例年2階以上のフロアにも何らかのバナーは用意されているのだが、日曜日時点ではまだ立ち入ることができない。


エントランスフロアの様子。3つの大型バナーとバッジのピックアップエリアが用意されている ピックアップエリアの大型バナーには人気appのアイコンをアレンジ。pathやinstagram、Evernoteといった定番に加えてゲームも目立つ 今年の参加記念品は昨年に続いて黒のフリース。背中には2012年をあらわす12の文字が刺繍されている

 5日間にわたるWWDCの中心となる数々のセッションは、参加者と同社の間でNDA(Non Disclosure Agreement:機密保持契約)が結ばれている。セッションに参加する場合はメディア関係者であっても開発者として正規の参加申し込みを行なった上で参加しているため、個々のセッションの内容を記事として公開することができない。会期中は唯一、基調講演で話された内容と、WWDCで正式発表された製品情報のみを記事として紹介することになる。

 PC Watchでは基調講演のレポートを中心に、関連のニュースを随時お届けする予定である。

(2012年 6月 11日)

[Reported by 矢作 晃]