2012 International CES初日となる1月10日(現地時間)に、Qualcommの会長兼CEOであるPaul Jacobs氏の基調講演が行なわれ、同社が開発するプロセッサ「Snapdragon」がモバイル分野をどのように発展させてきたかを語るとともに、Snapdragonを搭載するさまざまな機器を紹介した。
基調講演の冒頭でJacobs氏は、「我々の目標は、モバイル分野の可能性をさらに広げていくことです」と語り、2011年に研究開発に30億ドルの投資を行なったことを紹介。そして、このような投資により、3G分野で革新を起こすとともに、4Gの発展につながっているとした。また、全世界で60億台を超える携帯電話が出荷され、その多くが3Gネットワークに接続され、高速ブロードバンド通信が行なえ、すでに生活の一部になっていると指摘。さらに、中国やインドなどを例に、新興国でのモバイル分野の成長が著しいとも指摘し、先進国だけでなく新興国でも、いつでもどこでも瞬時に情報を入手できる手段として欠かせない存在になっていると語った。
その上で、さまざまな機能が統合され、単一で多くの機能を提供するプロセッサであるSnapdragonが、モバイル機器の発展を押し上げてきたとし、消費電力などの問題点を改善してきたことで、Snapdragonは全世界で300機種以上の製品で採用されるとともに、さらに350機種以上の製品が開発中であることや、ハイエンドからローエンドまで広く採用されているとアピール。さらにSnapdragonは、携帯ゲーム機などゲームの分野にも採用され、より勢力を広げているとした。
Qualcommの会長兼CEO、Paul Jacobs氏 | 世界の人口の80%を占める新興国はモバイル分野の成長が著しく、モバイル機器が欠かせない存在になっていると指摘 | Snapdragonは、300機種以上の製品で採用され、350機種以上の製品が開発中 |
加えて、端末の低コスト化にも注力し、新興国にも続々と製品が投入されていくと指摘。そして、対応する全ての端末がSnapdragonを採用しているとし、Nokiaの社長兼CEOであるStephen Elop氏が壇上に招かれた。Elop氏は、新興国には大きな可能性があるとしつつ、低価格モデルとなる「Lumia 710」を紹介。また、Lumia 710を北米市場にも投入し、T-Mobileから発売されることを紹介。さらに、最新機種となる「Lumia 900」も取り上げられた。こちらは、LTE対応のWindows Phone端末で、北米ではAT&Tから発売される。有機ELパネルを採用し、常に鮮明な映像が楽しめることや、長時間のバッテリ駆動時間が確保されていると指摘。そして、「Nokiaは、先進国と新興国双方の市場を理解できるという点が強み」とし、新興国だけでなく北米市場にも一層注力して取り組んでいくと語った。
登壇した、Nokiaの社長兼CEO、Stephen Elop氏。Windows Phoneを中心とした同社の取り組みを紹介 | 低価格Windows Phone端末の「Lumia 710」が、北米でも発売されることを紹介 | 最新Windows Phone端末「Lumia 900」も紹介された |
次にJacobs氏は、Snapdragonの最新モデルである「Snapdragon S4」を紹介。Snapdragon S4は、次世代のスマートフォンに採用されるだけでなく、HD動画などを扱うホームシアター分野をはじめ、さまざまな分野で利用できるような性能を備えているという。そして、Snapdragon S4がマイクロソフトの時期OSであるWindows 8をサポートすると発表するとともに、Snapdragon S4(MSM8960)搭載のWindows 8端末試作機を披露した。10型クラスのタブレット型端末で、通信機能はLTEに対応。デモではAT&TのLTEネットワークに接続された状態でJacobs氏が操作を行ないながら紹介された。スワイプによるページ送りやピンチによる拡大・縮小、LETネットワークを介したWebアクセスなどが行なわれたが、どれもスムーズに動作していることが確認できた。
最新の「Snapdragon S4」は、次世代スマートフォンだけでなく、ホームシアター分野などさまざまな分野に利用できると説明 | Snapdragon S4がWindows 8をサポートすることが発表され、Snapdragon S4搭載のWindows 8端末が紹介された | Windows 8端末を実際に操作しながら紹介するJacobs氏 |
また、基調講演ではSnapdragonを活用した製品の紹介や、さまざまな分野への取り組みなども紹介された。具体的には、Lenovo製のSnapdragon搭載スマートTV、中国Hanbon製の電子書籍リーダー「mirasol」を利用した中国での教育分野への取り組み、Snapdragon搭載スマートフォンを利用して心電図を表示させるといった医療分野への取り組みなどだ。
そして、米国の教育番組「セサミストリート」を製作しているSesame Workshopの社長兼CEOのH. Melvin Ming氏が壇上に招かれ、セサミストリートのキャラクターと拡張現実(AR)技術を利用したアプリも紹介。壇上では、セサミストリートに登場するキャラクター「グローバー」が登場し、同じくセサミストリートのキャラクター「アーニー」と「バート」の人形を利用しつつ、タブレットでアーニーやバートの人形をカメラで撮影すると、AR技術で画面内が変化するといったアプリの動作が紹介された。
最後にJacobs氏は、「先進国であろうと新興国であろうと、今はすべてが“モバイル国”です。モバイルには無限の可能性があり、日々我々に力やインスピレーションが与えられています。そして、その原動力となっているのが“あなた”です」と、ユーザーやパートナーに対し力強く語りかけて基調講演を締めくくった。
(2012年 1月 12日)
[Reported by 平澤 寿康]