低消費電力と高解像度がトレンド
日経BPが主催するフラットパネルに関する技術展「FPD International 2011」が横浜パシフィコで開幕した。会期は28日までで、入場料は2,000円、事前登録の場合は無料となる。
FPD Internationalは毎年恒例で開かれているが、主な展示はディスプレイの最終製品というよりも、製品になるまでの製造過程に必要な部材や機材が多い。本稿では主にコンシューマ向け最終製品に近い技術や製品を取り上げる。
今回は2010年のトレンドだった半透過型ディスプレイと3D立体視対応ディスプレイに加えて、低消費電力や高解像度を謳う展示が多く見受けられた。また、狭額縁や薄型化もトレンドの1つと言える。
●低消費電力パネル低消費電力パネルの展示がもっとも目立ったのはChimei Innolux(CMI)だった。低消費電力パネル関連のブースを緑一色で染め、エコを意識している。
その中でも特に目立ったのは消費電力が6W以下という23.5型ワイド液晶と、9W以下という27型ワイド液晶。解像度はいずれも1,920×1,080ドット(フルHD)で、輝度は250cd/平方m、コントラスト比は1,200:1、視野角は上下160度/左右170度となっている。
いずれも完成品に近いスタンド付きでの展示となった。電源もACアダプタ化しているようで、厚みは23.6型で6mm、27型で9.6mmとなっている。企業などで一括導入して、全体の使用電力を下げるといったコスト面でのメリットもありそうだ。
Chimei Innoluxの超低消費電力の23.6型液晶。6W以下で稼働している | こちらは27型モデル。9W以下で稼動している |
モバイル向けの13.3型でも、1W以下のモデルを展示。解像度は1,366×768ドット、輝度は200cd/平方mとなっている。展示資料によれば、従来は黒ピクセル表示時に消費電力が少し上がっていたが、新製品では高効率LED/新型プリズムバックライト、そして低消費電力の電気回路などにより、黒/白/混合ピクセルのいずれの表示においても、ほぼ同等の低消費電力を実現したという。
また、TV向けの32型パネルでも、約16Wという低消費電力を実現した製品を展示していた。
1W以下で稼働する13.3型パネル | 13.3型パネルの主な特徴 | 32型で16W駆動のパネル |
やや違った切り口ではあるが、AUOは新開発の「AH-IPS」と従来の「AMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)」を比較し、低消費電力と画質面のメリットをアピール。展示で同等サイズのディスプレイ比較では、AMOLEDと比較してAH-IPSのほうが消費電力を約半分に抑えられていた。また、ホワイトバランスも自然な白に近い印象だった。
AMOLEDと比較して消費電力が低いAH-IPS | AMOLEDと比較してホワイトバランスも自然に近い |
●高解像度パネル
もう1つのトレンドである高解像度は、東芝が先日発表した超高解像度モバイル「Purezza fine」が注目された。
同製品の最大の特徴は、6.1型または7.5型というモバイル向けサイズでありながら、2,560×1,600ドット(WQXGA)という高解像度を実現した点。1インチあたりのドット数に換算すると6.1型で498dpi、7.5型で403dpiとなる。PC用ディスプレイで同等の解像度を実現したのは一般的に30型で101ppi。これと比較すると6.1型では約5倍、7.5型で約4倍の精細さとなる。
そのほかの仕様は、表示色数が約1,677万色、コントラスト比が1,000:1、視野角が上下/左右ともに176度。展示では高解像度写真や新聞紙1枚見開きの表示デモが行なわれており、高精細さを実際に確認できる。
東芝のブース | Purezza fineの主な特徴 | 30型ディスプレイと同等の解像度をモバイルで実現 |
WQXGA表示対応の7.5型モデル | 新聞の見開きデモ。細かい文字でも一切潰れず確認できる | こちらはさらに小型の6.1型モデル |
このほかにも4.3型で1,280×720ドット(367dpi)、4型で1,024×540ドット(292dpi)、3.45型で960×480ドット(310dpi)のディスプレイを展示した。
CMIも、4.5型で1,280×720ドットのモバイルIPS液晶、3型/3.5型で640×360ドット(200/250dpi)のモバイルAMOLEDディスプレイを展示。このうちAMOLEDの2モデルは、従来のRGBに加えてW(ホワイト)画素を追加することで、3型モデルで400cd/平方m、3.5型で350cd/平方mの高輝度化を実現。太陽光下での可読性を高めたという。
東芝のそのほかの高解像度モバイル製品 | CMIの1,280×720ドット表示対応モバイルIPS液晶 | CMIの3型AMOLEDディスプレイ |
CMIの3.5型AMOLEDディスプレイ | RGBに加えてWを追加することで高輝度を実現したという | 日立の高解像度モバイルIPS液晶ディスプレイ |
●狭額縁/薄型などその他
Samsungのブース |
デバイスの小型化/薄型化に貢献するディスプレイの狭額縁化/薄型化のトレンドも見られ、スマートフォン用の小型製品を中心に狭額縁の製品が複数展示されていた。
また、SamsungのブースにはIntelが提唱する「Ultrabook」が展示され、13.3型の薄型製品が採用されていることをアピールした。
Samsungのブースで展示されていたUltrabook | 液晶フレームの角が切り取られており、内蔵しているディスプレイの薄さを確認できる |
一方LGのブースには「Shuriken NBPC」と名付けられた14型の薄型ノートが2モデル展示された。こちらは製品名が伏せられていたが、それぞれDellの「XPS 14z」とAcerの「TravelMate」シリーズとみられる。
LGのブースで展示されたShuriken NBPC 2機種 | DellのXPS 14zとみられる製品 |
このほか、裸眼立体視対応液晶や、透過型ディスプレイなども多数展示された。このうちAUOは、IntelやMicrosoftと共同開発した透過型ディスプレイ搭載の自動販売機をデモし、来場者を多数惹きつけた。
東芝の狭額縁モバイル液晶ディスプレイ | 東芝の裸眼3D立体視対応液晶 | AUOの狭額縁モバイル液晶ディスプレイ |
AUOの狭額縁モバイル液晶ディスプレイの従来品との比較 | CMIのMobile High-Difinition Link対応ディスプレイ | 日立の高解像度IPS液晶 |
電子ペーパーE Inkのブース | カラー表示対応の電子ペーパー「Triton」 | E Inkを応用したスノーボード。先端に各種情報を表示できる |
300dpiの電子ペーパー | Samusungの透過型ディスプレイを応用した冷蔵庫ドア |
【動画】AUOの透過型ディスプレイを応用した自動販売機のデモ |
●ショットのタッチ対応ガラスパネルも発表
ショット日本株式会社 取締役副社長のルッツ・グリューベル氏 |
なお、初日となる26日には、ショット日本株式会社(ドイツ本社:SCHOTT)が、タッチ対応のガラス新製品「Xensation(センセーション)」シリーズを日本で販売開始することを発表した。
SCHOTTという企業は、本誌の読者にはやや馴染み薄いかもしれないが、高級/レトロカメラレンズで有名なCarl Zeiss(カール・ツァイス)財団のグループ企業で、Carl Zeiss製レンズ向けにガラスを製造しているメーカーだ。第2次世界大戦時にも双眼鏡の製造で活躍し、1884年創業以降127年の歴史を持つ、「Gorilla Glass」で有名なCorning(こちらは160年の歴史)と並ぶ老舗のガラス製造企業だ。
ただ一般的なガラスメーカーとは違い、標準的なアプリケーションは提供しておらず、すべて受注生産しているのが同社の特徴だ。
Xensationシリーズ |
今回発表されたXensationは、CorningのGorilla Glassや旭硝子の「Dragontrail」の対抗となる製品。いわゆるアルミノケイ酸塩ガラスだが、独自のマイクロフロート法によって製造し、イオン交換層の深さを高めることで、競合製品と比較して20%高い強靱性を実現。さらに、競合と比較して短時間でイオン交換が可能で、プロセスの最適化により生産性を高めつつコストを削減できるという。
また、世界で唯一静電容量式、抵抗膜式、光学式、超音波式という4種類のタッチセンサーにそれぞれ対応したパネルをラインナップした。製品名は順にXensation Cover/同3D、Touch、Look、Soundで、製品特性がやや異なる。
日本での販売活動開始にあたって、日本にあるデバイスメーカーと協業することでシェアを高めていき、3年以内には世界市場全体で20%のシェアを狙うとした。
独自のマイクロフロート法による製造 | Xensation Coverの特徴 |
ほかのアルミノケイ酸塩ガラスとの比較 | ほかのアルミノケイ酸塩ガラスとの強度比較 | 展示会場でのデモ |
(2011年 10月 26日)
[Reported by 劉 尭]