【IFA 2011レポート】
【詳報】Samsung MobileがGALAXY NoteをUNPACKED
~第3のカテゴリに筆圧感知の手書き入力機能を付加

会期:9月2日~7日(現地時間)
会場:Messe Berlin



2011年ではEpisode IIにあたるUNPACKEDイベント

 今回、Samsung GALAXY NoteとSamsung GALAXY Tab 7.7が発表されたのはSamsung Electronicsが開催したメディア向けのカンファレンスの一部だが、同時に発表されたSmart TVやデジタルカメラなどに対しても、これらMobile製品の位置づけは同社にとっても特別なようで、イベント内イベントとして「Samsung Mobile UNPACKED 2011」が冠されたものだった。同社は事前にAndroid向けのAppをAndroid Marketを通じて配布しており、ユーザーは手持ちのAndroid端末にAppをインストールすることで、製品のティザーや過去のUNPACKEDイベントの様子を見ることができた。加えて製品発表を終えた現在はニュースリリース、製品写真なども追加されている。

 同社によれば、UNPACKEDは、世界中のメディアやモバイル業界に向けたまったく新しい製品のグローバルローンチイベントで、2011年は2月にスペインのバルセロナで開催されたMobile World Congressが“Episode I”、3月にアメリカのオーランドで開催されたCTIA Wirelessが“Special Episode”と名付けられている。前者はGALAXY S IIの発表とGALAXY Tab 10.1のお披露目、後者はGALAXY Tab 8.9と10.1の正式発表が行なわれた。今回のIFA 2011はこれに続くもので、“Episode II - Sketches of your Desire”のサブタイトルが付いている。Sketchesがすなわち「S Pen」として発表された感圧式スタイラスによる意のままの操作を暗示していたということだろう。

 カンファレンスがUNPACKEDのモードに切り替わって登壇したのは、Samsung Mobileのグローバルセールス&マーケティング担当上級副社長、DJ Lee氏。まず日本市場向けには投入されてはいないが、グローバルモデルとして同社の独自OS「bada 2.0」を搭載して展開されているスマートフォンの新モデル「Wave 3」を加えた3モデルの主要ポイントを紹介した。その上で各製品の詳細はヨーロッパディビジョンの各担当者が説明するというスタイルである。「Wave 3」のポイントは4型サイズのスーパーAMOLEDを採用したことと、アルミ製のユニボディによるシックな外観、bada 2.0も従来バージョン同様にAppデベロッパーとの協力関係を続けていくといった内容だった。

 「GALAXY Tab 7.7」は、現時点で最大サイズのスーパーAMOLED Plusパネルを採用する世界初の製品になることをポイントに挙げた。もちろんスーパーAMOLEDはSamsungのテクノロジなので、世界初採用とすることも同社のマーケティング手法の1つとなるのだが、やはり大型の高性能パネルが搭載されるという点は見逃せないところである。

 もう1つポイントに挙げたのは、現時点でもっとも薄く、もっとも軽いタブレット製品になるという点。Lee氏の発表時点で詳細な数字は述べられていないが、最厚部で7.89mm、重量は335gを実現している。現行のGALAXY Tabが7型で12.2mm厚、382g(NTTドコモから販売されている日本向けモルSC-01C)ということを考えれば、一挙に軽量化を果たしたという感がある。同氏は、7型クラスのタブレットでは、この製品で今後も同社がリーダーシップを握ると明言した。

 「GALAXY Note」の発表では、UNPACKEDのスライドを再び表示。これが目玉であることと新カテゴリにあたる製品であることを強調してみせた。そして自らを含めて、この会場にいるようなユーザーの多くが複数のデバイスを持ち歩いていて、メールやWebを自由に見るためには(現在の)スマートフォンでは小さいと感じ、ひらめいたアイディアやメモを簡単にとるための手頃なサイズと入力手段を求めていると付け加えた。そして、スマートフォン製品発表の定番ではあるものの、内ポケットに手を入れてGALAXY Noteを取り出して、会場に集まったメディアに披露してみせた。

 GALAXY NoteについてはLee氏自らがスペックの一部を公開。5.3型の高精細スーパーAMOLEDパネルの搭載、1.4GHzのデュアルコアプロセッサ採用、バッテリ容量2,500mAhなどのポイントを矢継ぎ早に紹介した。GALAXY Noteはフルスペックのプレミアスマートフォンであり、最高のWebやメール、HDムービーなどを見るためのタブレット、そしてデジタル・メモパッドの3つの要素を兼ね備えているとして、究極のポータブル製品と紹介した。そして、スマートフォンとタブレットの隙間を埋めるのが、新カテゴリのGALAXY Noteであると締めくくった。

新カテゴリといえども、やはり新製品は内ポケットから取り出して披露される「GALAXY Note」の主要スペック。薄いとはいえ本体の大型化によるバッテリの大容量化が目をひくGALAXY Noteを発表するSamsung Mobileの上級副社長DJ Lee氏

 この日発表されたモバイル向け製品の詳しい紹介は、ヨーロッパディビジョンの各担当者よりなされている。bada 2.0を搭載する「Wave 3」については、日本国内向けに販売される見込みがほぼ無いため簡単にまとめるが、低価格レンジにあたるスマートフォンのなかで、プラスチック筐体ではなく金属筐体のユニボディを使うことで高級感を増している。同様にパネルも同社の看板であるスーパーAMOLEDパネルを採用した。背景としてはこうした高性能パネルの供給安定と、それに伴う低コスト化が進んでいるものと思われる。

 また、ソフトウェア戦略としては「Ch@t ON(チャット・オン)」と名付けられたメッセンジャーを搭載。bada 2.0に加えてAndroid、フィーチャーフォンなどにまたがるマルチプラットホームのチャットシステムになるという。62の言語が利用できるチャットシステムとのことだが日本語が含まれるかどうかは不明。Androidも対応プラットホームに含まれているので、Appの提供によって利用できる可能性もある。

 GALAXY Tab 7.7については、2010年から始まった各種タブレットデバイス発表のサイクルが非常に速く、また多様化も進んでいる中で投入される新製品となる。繰り返しとなるが、スーパーAMOLED Plusのパネルを搭載。同パネルは高輝度、高精細、高速で見やすさが増しているとのこと。Plusが何を指し示すのかは明らかにされていない。解像度は1,280×800ピクセル。スペックとしては1.4GHzのデュアルコアプロセッサを搭載。モバイルデータ通信の仕様としてHSPA+に加えてLTEにも対応する。OSはAndroid 3.2、メモリは1GB、ストレージは16/32/64GB+microSD。200万画素前面カメラ、300万画素背面カメラ、Bluetooth 3.0+HS、USB 2.0(ホスト)、Wi-Fiダイレクト対応IEEE 802.11a/b/g/n無線LANなどを搭載する。バッテリ容量は5,100mAh。独自UIのTouchWiz、スマートフォンライクなボイスコール機能なども搭載される。

独自OS bada 2.0を採用する低価格レンジのスマートフォン新製品「Wave 3」。普及モデルのスマートフォンにも同社の看板技術が降りてきている。62言語、マルチプラットホームで提供されるチャットサービス「CH@T ON」。
Samsungの独自OS Badaの新バージョン2.0を搭載するスマートフォン「Wave 3」「Wave 3」の背面「GALAXY Tab 7.7」は、現時点で最薄、最軽量のタブレットであることをアピール。
プロセッサは1.4GHzのデュアルコア、LTEとHSPA+に対応。カンファレンス後、一般公開に先立ってメディア向けに公開されたSamsung Electronicsブースに展示された「GALAXY Tab 7.7」Android 3.2(Honeycomb)を搭載。
GALAXY Tab 7.7のインターフェイス部分。LEDフラッシュ付きのリアカメラ、電源スイッチ、ボリュームボタンMicro SDスロットはこの位置にあるGALAXY Tab 7.7の背面

 GALAXY Noteのコンセプトはユーザーの各種アプリケーションやサービスの利用状況の分析を背景に生まれているという。スマートフォンの役割として大きいのはWebの閲覧、電子メールの利用、ゲーム、音楽再生、写真と動画の撮影、そして地図の利用という順であると説明された。冒頭のLee氏の言葉にもあるように、我々が複数のデバイスを持ち歩いている場合は、その目的に応じたサイズのデバイスを選んでいることになるという。そこでその隙間を埋め、持ち歩く目的として優先的なデバイスの大きさとして、新カテゴリの製品が必要になったという。

 結果として、スマートフォンとしては最大サイズとなる5.3型パネルが採用された。高解像度であることもポイントで、前述のGALAXY Tabと同じ1,280×800ピクセルの情報量を画面に表示できることになる。カンファレンスのスライドではメールの閲覧画面が示されたが、スマートフォンを横位置で使い、横2ペインでリストと本文を表示させる様はまさにタブレットと同等の感覚と言える。またサイズが大型化しているとはいえ、ポータビリティを重視するために、より薄く、軽いデザインが用いられた。本体の最厚部は9.65mm、重量は178gとなる。このほか、16/32GBのストレージ、200万画素前面カメラ、800万画素背面カメラ、Bluetooth 3.0+HS、USB 2.0(ホスト)、Wi-Fiダイレクト対応IEEE 802.11a/b/g/n無線LANなどを搭載する。

 もう1つのポイントはスタイラスを使ったペン入力。イラスト制作などをデジタル化している人にとってはタブレットという用語が入力機器としてのペンタブレットを想起させるように、GALAXY Noteのスタイラスによるペン入力の考え方はペンタブレット機器の利用方法に近い。実際、ブースで尋ねてみたところ、スタイラスにはペンタブレット機器大手、ワコムの技術が用いられているという。「S Pen」と名付けられたこのペン入力は単なるポインティングデバイスとしてだけではなく、筆圧も加えてデジタイズが可能なスタイラスになっている。実際に操作してみたところ、操作にあたるポインティングデバイスとしての役割はもちろん、確かに手書きのメモや簡単なイラストなど筆圧に応じて強弱を変える、筆のサイズを変えるという感覚が感じられる。

 S Penによる入力はGALAXY Noteのシステムと統合されており、ポインティングデバイスとしての操作では静電容量による指のタッチ操作とポインティング操作は同等に扱われる、一方、フリーライティングにおいては筆の感覚になっているというイメージだ。メモ感覚としては白紙にメモをとるという意識もある。電話番号のメモ、こうした取材時のメモなどが代表的な例だ。もう1つ手書きが優先されるのは、今そこにある情報に何かを書き加えるという行為だろう。地図に印をつける。重要な部分にアンダーラインを引く、世代によっては写真にイラストや文字を書き加えるという行為もその1つだ。

 こうした地図や写真など、既存のデータをキャプチャして何かを書き足すという行為もS Penは行なうことができる。スタイラスには指先で押し込めるボタンが付いていて、例えば押しながらの操作で写真を範囲指定して切り抜き、メモ画面への貼り付けなどができるようになっている。地図なら画面全体をキャプチャして目的地にマーキングをしてもいいし、写真であれば対象物だけをフリーハンドで切り抜くこともできる。こうしたひらめきを形にするプロセスを同社はFree Capturing & Creationと表現した。S Pen対応の同社純正Appとしては、いわゆる手書きメモ帳とも言えるS Memo、タスク&スケジュール管理のS Plannerなどが用意される。

 S PenのAPIはAndroid Appを作成するサードパーティにもSDKとして公開されるので、今後同社以外からもこうしたペンタブレット的な使い方をするAppが登場する可能性が生まれる。AppleのiOSがカメラAPIを公開したことで、多様なカメラAppが登場して写真という身近なコンテンツから大きな市場とユーザーニーズが生まれたことと同じように、ペンタブレットを意識したユニークなAppの登場も期待される。

 今回発表された製品は、いずれの製品もグローバルモデルとして紹介されている。bada搭載のスマートフォンは除くとして、GALAXY Tab 7.7とGALAXY Noteの日本市場投入やローカライズなどはこの場では言及されていない。Samsung MobileによるUNPACKEDと題されるイベントは、今後も継続して開催される模様だ。

スマートフォンのより高いポータビリティと、タブレットの持つ高い表現力この新しいカテゴリが持ち歩くデバイスとして最優先となるスマートフォンとして見れば、あまたの現行製品を大きく上回る5.3型の大画面
スライドで示されたメールの画面。1,280×800ピクセルの情報量はタブレットと同等で、スマートフォンでは考えられない横2ペインの表示感圧式のスタイラスを採用して多様な手書き入力に対応する「S Pen」ブースに展示されていたデモ機にもインストールされていた手書きイラストなど
写真をフリーハンドで切り抜いて、メモを書き足すこともできるAppの「S Memo」。アプリケーションでは、S Penによる入力をGALAXY Note相互に連携可能SDKをサードパーティに提供。サードパーティもS Pen対応のAppが可能になる。
パーソナルユースのほか、企業ユースを意識している面も目立つ。セキュリティAppも用意される。専用ポーチやドック、本体収納とは異なる別売のS Penなど純正のアクセサリ。同社によるUNPACKEDイベントは今後も継続する。積極的な製品開発を示唆している。
稼働状態でブース展示されていた「GALAXY Note」。アイコンが横五列に並ぶところが5.3型、1,280×800ピクセルの証。手持ちのNexus Sと比較。Nexus本体の大きさがほぼ画面サイズというイメージ。サンプルとして用意されていた「S Memo」のイラストなど。
サンプルメモに文字を書き足す。意識しないで書くと、書き出しの力が入っていない部分は細く、筆圧が加わる止めが太くなっている。付属のS Penはこの部分に収納できる。背面カメラ部分。展示されていたグローバルモデルのデモ機は背面がスリップしにくい梨地のようになっている

(2011年 9月 2日)

[Reported by 矢作 晃]