イベントレポート
【詳報】ARM、VRやAIも見据えた新世代CPU Cortex-A75とGPU Mali-G72
~Cortex-A75は3GHz駆動で、前世代に比べ50%性能向上
2017年5月29日 17:18
ソフトバンク傘下でイギリスの半導体設計メーカーとなるARMは、台北で開催されるCOMPUTEX TAIPEI 2017開幕前日となる5月29日(現地時間)に記者会見を行ない、新CPUとなるCortex-A75とCortex-A55、および新GPUとなるMali-G72を発表した。
Cortex-A75/3GHzはCortex-A73/2.4GHzに比べて50%性能向上
ARM副社長兼コンピュート製品事業本部事業本部長のナンダン・ナヤンパリー氏は「ARMはサーバーからIoTまで非常に効率の良いソリューションを提供している。その結果として、これまでに1,000億個のARMアーキテクチャに基づいた半導体が出荷されたと今年発表させてもらった。我々の予測では、2021年までにもう1,000億個のARMに基づいた製品が出荷される見通しだ」と述べ、ARM製品の順調な業績を紹介した。
その上で「コンピューティングモデルは今後も大きく変わっていく。AI、機能安全と自動化、MR、インテリジェントサーバーなどが新しいユースケースとして登場しており、今後はそこに対応した製品を提供していくことが重要だ」と述べ、新しいCortex-A75、Cortex-A55という2つのCPUを発表した。
@@|em|r|【お詫びと訂正】初出時に出荷数を1兆個としておりましたが、1,000億個の誤りです。お詫びして訂正させていただきます。@@
Cortex-A75は、昨年(2016年)ARMが発表したCortex-A73の後継となるCPU。同じクロック周波数で比較した場合、20%性能が向上しており、2.4GHzのCortex-A73と3GHzのCortex-A75を比較した場合には50%の性能向上が実現できるとARMでは説明している。
ARMが3月に発表したDynamIQにも対応しており、ナヤンパリー氏は「AI、ハイパフォーマンスコンピューティング、機能安全などの観点でCortex-A75は優れている」と述べ、性能だけで無くAIや機能安全による自動車への適用などの特徴があるとアピールした。
Cortex-A55は、big.LITTLE時の省電力側のCPUとなるCortex-A53の後継となる製品。省電力向けの製品となり、28nmのCortex-A53と16nmのCortex-A55を比較すると電力効率で2.5倍とのこと。big.LITTLE時のリトル側のプロセッサだけでなく、IOTゲートウェイなどにも使えると、ナヤンパリー氏は説明した。
ナヤンパリー氏によれば、A75 4コア+A55 4コアというハイエンド構成から、A75 1コア+A55 7コアという構成、さらにはA55 4コアといったエントリーレベルの構成までさまざまな構成が可能なことが、DynamIQに対応しているメリットであり、加えて、GPUやアクセラレータなどを組み合わせることでヘテロジニアスなプロセッサを構成して、IAやMRに最適なSoCを設計できるとアピールした。
機械学習、VR、モバイルゲーミングに最適化されたMali-G72
引き続き登壇したARM副社長兼メディアプロセッシング事業本部本部長兼フェローのジェム・デビース氏は、ARMの新GPUであるMali-G72を発表した。
デビース氏は「市場のトレンドとして、機械学習、VR、モバイルゲーミングへの対応が必要とされている」と説明。そして、ARMのGPUであるMaliが、モバイルVRとスマートフォン向けの市場でシェア50%をおさえており、すでに10億個のMaliが市場に出荷されているとした。
Mali-G72は、昨年発表されたMaliーG71の後継となる。Mali-G72は機械学習、VR、そしてモバイルゲーミングにフォーカスしたGPU。今年のモデルの製品に搭載されているGPUと比較して性能は1.4倍になり、電力効率は25%改善されている。また、機械学習の性能も17%改善されおり、さらにメモリ帯域幅を効率よく利用する仕組みが入っており、従来世代に比べて68%ほど帯域幅を節約して利用できるという。