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暴力的ゲーム、脳の攻撃性への影響は短期的と東大研究
(2014/9/12 14:01)
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の玉宮義之特任研究員、開一夫教授らは10日、暴力的ゲームを長時間遊んだ時の影響についての研究結果をとりまとめ、「Psychology」誌オンライン版に発表した。
暴力的ゲームが、プレーヤーの行動に悪影響を与えるのではという社会的関心は高く、国内外でさまざまな実証研究が行なわれているが、従来の研究は20~30分ほど遊んだ直後の短期的な影響を検討したものが多く、長時間遊んだ時にどのような影響があり、それがどれくらい続くのかという疑問は不明なままだった。
今回玉宮氏らは、成人男性と女性を対象に、市販の暴力的または非暴力的なゲームのどちらかを約1カ月(計16時間)プレイさせ、ゲームを遊ぶ前、遊んだ後1週間以内、3カ月後の計3回、脳波測定と、質問紙調査を実施した。脳波測定では、表情写真(怒り、恐怖、悲しみ、喜び、無表情)を呈示した際の脳波を記録することで表情認知に関連する事象関連電位成分を、質問紙では心理学で広く用いられている個人の攻撃特性に関して分析している。
脳波測定の結果、暴力的なゲームを遊んだ被験者において、怒り顔写真によって誘発される事象関連電位の後頭部におけるP2成分と呼ばれる電位の陽性成分に遅延が見られ、怒り顔の認識に時間がかかることを示唆した。また、この影響は、ゲーム終了直後だけでなく、3カ月後においても保持されていた。一方質問紙調査の結果、攻撃性は女性成人には現われず、男性成人のみに発現。また、暴力的ゲームを終了した直後には増加したが、3カ月後には遊ぶ前の水準に戻っていたという。
すなわち、怒り顔に対するP2成分の遅延と、攻撃性の変化には相関関係は見られず、暴力的ゲームが表情認知に与える影響は長期的だが、攻撃性に与える影響は短期的であることが示唆された。
ただし、研究チームでは、この結果の一般化にはさらなる研究が必要であるとともに、ゲームの遊び方は多様化し、ゲームのプラットフォームも専用機からスマートフォンなどへと広がっていることなどから、複数の要因が互いに影響する過程についてはまだ不明であるほか、悪影響だけでなく、加齢に伴う認知機能の低下を防ぐ効果といったものなど、さらなる知見の蓄積によって、適切な使用方法やガイドラインなどの作成が期待されるとしている。