ニュース
Aldebaran、Atomを搭載する第5世代目のロボット「Nao Evolution」
~大学や研究機関、高専などでのロボット研究・教育用として
(2014/6/18 12:25)
仏Aldebaran Robotics(アルデバラン・ロボティクス)日本支社は、6月16日と17日に、同社が創業以来、研究・教育用プラットフォームとして展開しているヒューマノイドロボット「NAO」の最新型「Nao Evolution」の内覧会を行なった。Aldebaran Roboticsはソフトバンク株式会社が78.5%の株式を所有する同社の子会社で、6月5日にソフトバンクから発表されたロボット「Pepper(ペッパー)」を開発した会社でもある。NAOについてはこれまで同様に大学や研究機関などのほか、高校や高専への販売に力を入れるという。価格はおよそ100万円。
「Nao Evolution」は身長58cm、重さはおよそ5.4kg。25自由度(頭2、腕5×2、腰1、脚5×2、手1×2)の小型ヒューマノイド。これまでの累計で70カ国の教育機関や研究機関で5,000台以上が活用されている。センサー類は、カメラ(1,288×968ドット、30fps)×2、3軸ジャイロ、3軸加速度、指向性マイク×4、超音波センサー×2、赤外線送受信機×2、圧力センサー、胸、脚、手、頭にタッチセンサーなど。
第5世代目に当たる「Nao Evolution」は、音声認識技術の「Nuance Communications」のクラウド音声認識エンジンを実装し、ギアを樹脂製から金属製に変えるなど耐久性も向上させた。人とやりとりするためのセンサーの配置・構成なども変わっている。第4世代の「Nao Next Generation」では、指向性マイクは耳にあたる位置にあるスピーカー脇に配置されていたが、「Evolution」では頭部上方に4つとなった。これによりノイズの影響を受けにくくなったという。額と口に配置されているカメラなども先頃発表された「Pepper」とよく似た配置となっている。材質はABS-PCなど。モーターはMICROMO製コアレスDCモーター。3種類のモーターが使われている。
胸に2組ある超音波センサーの感度も30cm程度から1cm程度へと向上しており、胸前すぐの障害物も認識できるようになった。足裏の素材なども変わっており、触ってみると滑り具合が違った。マザーボードのCPUはAtom Z530(1.6GHz、キャッシュ512KB、FSB 533MHz)。メモリ1GB、フラッシュメモリ2GB、8GBのmicroSDHCカードを搭載。Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n対応。バッテリはリチウムイオン(48.6Wh)で駆動時間は平均60分程度。
目の周囲はRGBフルカラーで光り、音声認識などのステータスを示す。音声認識と音声合成機能は、英語や日本語など19カ国語に対応している。日本語の音声合成エンジンには株式会社エーアイの音声合成エンジン「AITalk」が採用されている(エーアイによるリリース、PDF)。
OSはEmbedded GNU/Linux。「Pepper」同様、C++、Python、あるいは同社オリジナルのミドルウェア「NAOqiOS」上で動くソフトウェア「CHOREGRAPHE」を用いてドラッグ&ドロップによるプログラミングや、シミュレータの「WEBOTS」で動作確認が可能だ。歩行には単純な力学モデル(線形倒立振子)と二次計画法が採用されているという。
「NAO」の価格はおおよそ100万円だが、ソフトバンク・グループの「Pepper」は発売されるまでまだ時間がある。早くその開発環境に馴れておきたい、あるいは早速開発したいという人には最適のハードウェアであることは間違いない。「NAO」を用いてロボティクスの学習ができる日本語のカリキュラム・テキストも提供される。なお前世代のNAOは徐々にリプレースされる予定で、旧機種の下取りプログラムもあるという。
【お詫びと訂正】初出時、カリキュラムが購入者に配布されるとしておりましたが、正しくはオプション販売となります。お詫びして訂正いたします。
これまで国内では主に大学や研究機関での研究用途として販売されてきたが、これからはさらに高専などのほか、教育用途としても展開していきたいという。例えばNAOは多言語対応なので、英語教育用などにも用いることができるという。
また、NAOには「ASK NAO」という自閉症児向けのプログラムがある。特別支援学級などで学ぶ子供たちに対してNAOを使って教育を行なうもので、「動物カード選び」や「英語学習」などいくつかのアプリケーションが用意されている。教師は生徒の好みなどに応じた半自律的な教育プログラムをNAOで組むことができる。子供たちは同じプログラムを好んで何度も何度も繰り返し行なうことがあるが、NAOはロボットなので繰り返しにも何ら問題なく対応できる。日本国内でも「ASK NAO」には今後、力を入れていくとのことだ。