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産総研、14nm FinFETに適用できる低抵抗のソース-ドレイン形成を開発

~平面トランジスタでは使えなかった技術を応用

低抵抗のソース-ドレインを形成できる高温イオン注入技術
12月9日 発表

 独立行政法人産業技術総合研究所 ナノエレクトロニクス研究部門 シリコンナノデバイスグループの水林亘主任研究員および昌原明植研究グループ長と、日新イオン機器株式会社は共同で、14nm世代の3次元トランジスタ(FinFET)に適用できる低抵抗のソース-ドレインを形成する技術を開発したことを発表した。

 次世代のトランジスタプロセスである14nm FinFETは、ソース-ドレイン間の低抵抗化のために従来より用いられてきた不純物のイオン注入を行なうと、極薄のシリコンフィン全体が非晶質(結晶でない状態の物質)となり、活性化熱処理を行なっても欠陥の多い結晶となってしまうことで抵抗が増す。ソース-ドレイン間の抵抗増大は、ドレイン電流の減少というトランジスタ性能の低下を生むため、低抵抗化は不可欠となる。

 今回の発表は、不純物のイオン注入を行なう際に、室温ではなく、注入温度500℃という高温でのイオン注入を行なうことで低抵抗が実現されたというもの。高温でのイオン注入は、結晶質は維持できる一方で、欠陥が多く生まれる。平面トランジスタではその後の熱処理でも欠陥を回復できないために用いられてこなかったが、FinFETはフィンが薄いため、熱処理時で欠陥がフィンから抜けて、無欠陥のシリコン層を生成できるという。

 その手法で生成されたFinFETは、ゲートに一定電圧をかけた時のしきい値電圧の経時変化が、室温イオン注入で生成されたFinFETに比べて小さく、信頼性も高いというデータも得られており、14nm世代以降のソース-ドレイン形成技術として有望であるとしている。

従来の室温でのイオン注入後、11nmの薄さの非晶質が形成され、熱処理でも欠陥のある結晶となってしまう
高温イオン注入後では結晶質が維持され、熱処理により無欠陥のシリコン層を形成できる

(多和田 新也)