メルコホールディングス、タイ洪水被害が響き減収減益に
~2012年度中にIEEE 802.11ac対応製品を国内投入へ

5月16日 発表



 メルコホールディングスが発表した2012年度(2011年4月~2012年3月)の連結業績は、売上高が前年比5.2%減の1,173億1,900万円、営業利益は39%減の65億5,300万円、経常利益は34.9%減の71億3,200万円、当期純利益は29.2%減の44億4,500万円と、減収減益の内容となった。

 売り上げ構成比の約3分の1を占めるストレージ事業が、タイの洪水被害により、主要部品に調達難が生じたことや、地デジ放送移行後の録画向けHDDの販売が減少。さらにネットワーク事業においては無線LAN関連製品での価格競争の激化、デジタル家電周辺機器市場における「ゼン録」や「おもいでばこ」といった新製品投入の遅延、メモリ価格の下落などが影響した。

BCNの部門別シェアGfK Japan調べのシェア
2012年3月期 連結決算四半期ごとの推移

 メルコホールディングスの松尾民男取締役管理本部長は、「第2四半期までは好調だったが、通期では主力製品が軒並み厳しい結果になった。第3四半期からのHDDの供給力の問題があったことに加え、調達価格の上昇に伴いHDDの値上げに踏み切ったが、消費者の間には、時が過ぎれば安くなるという認識があり、HDD市場そのものが縮小した。これが売上高の減少につながったほか、調達価格がさらに上昇し、価格改定でもそれを吸収できなかった。また、ブロードバンド関連製品での競争激化も大きく響いた。IEEE 802.11nではドラフト版から製品を投入するなどハイスペックモデルでの優位性を発揮してきたが、競合他社との差がなくなり、価格を下げざるを得なくなった。今の売価で利益を出している企業はないのではないか。ネットワーク製品は単価が前年に比べて20%も落ちており、収益性の観点から大きなターニングポイントを迎えたと考えている」などと総括した。

 製品別の売上高は、メモリが前年比47.8%減の46億800万円、フラッシュメモリが21.4%増の94億4,900万円、ストレージが12.5%減の370億3,800万円、NASが4.1%増の132億4,500万円、ネットワークが0.4%減の273億900万円、デジタルホームが10.5%増の72億2,600万円、サプライ・アクセサリが9.6%増の111億3,200万円、DOS/Vパーツが8.7%減の44億5,300万円、サービスが8.5%減の20億2,600万円、その他部門が5.7%減の8億2,700万円となった。

製品別の売上高売上の増減の要因

 ストレージでは年間で47億円規模の売り上げ減少となり、下期は営業赤字、通期ではブレイクイーブンになったという。だが、NASでは、iPadやスマートフォンなどが自宅のNASにアクセスできるプライベートクラウドストレージとしての提案や、簡単設定機能を搭載した製品の投入が効を奏した。

 「HDDの供給はほぼ正常に戻ってきた。最も影響を受けたのが1TBの製品であり、これが回復していくだろう。だが、市場にはまだタイの洪水影響を受けた製品があり、在庫保証の問題などを勘案しながら、新たな製品投入を考えていく必要がある。第1四半期にはほぼブレイクイーブンになるだろう」とし、2012年度通期では黒字化を想定していることを示した。

 メモリでは、PCの初期搭載メモリの大容量化に伴い、メモリモジュールの追加購入需要が低迷。販売台数、売上高ともに前年割れ。デジタルホームではアナログ放送終了後の需要低迷が影響する一方、フラッシュメモリではSDカードとUSB 3.0対応製品の拡大が貢献。USBメモリは販売台数、売上高ともにプラスとなった。

 また、ネットワークでは、スマートフォンでの無線LANの利用提案を展開。無線LANの販売台数は前年比22.7%増となったほか、法人向けに集中管理ソフトや保守パックなどのトータル提案で利益を確保。サプライ・アクセサリでは、スマートフォンの全キャリアに対応したコンパクトサイズのモバイル充電器や、コネクタの向きを気にせず挿入できる「どっちもハブ」などの製品群が好調。液晶保護フィルムや保護ケースなどのスマートフォン関連製品のラインアップ強化もプラスに働いた。

メモリ、フラッシュメモリ製品はともに前年割れストレージ製品はタイ洪水による価格高騰で減収減益
ネットワーク製品は台数増加も単価下落で減収その他は「どっちもハブ」やモバイル充電器などが好調
海外の売上高

 一方、同社では、2012年度を「グローバル元年」と捉えており、海外事業の拡大を強化。海外売上高は前年比15.5%増の158億8,300万円と大幅な成長となった。

 アジア・オセアニアでは22.3%増の80億1,300万円と海外成長を牽引。北米・中南米は4.3%減の27億7,400万円、欧州は17.5%増の75億5,500万円となった。現地通貨ベースでは全エリアで増収になっているという。

●2012年度は海外事業を大幅に成長

 2012年度の通期業績見通しは、売上高が前年比17.6%増の1,380億円、営業利益は22.1%増の80億円、経常利益は20.6%増の86億円、当期純利益は21.5%増の54億円の増収増益を見込んでいる。

 製品別の見通しは、メモリおよびフラッシュメモリの売上高が前年比13.1%増の159億円、ストレージおよびNASが27.7%増の642億円、ネットワークが7.3%増の293億円、デジタルホームが19.7%減の58億円、サプライ・アクセサリが32.1%増の147億円、DOS/Vパーツ、サービスを含むその他事業が10.9%増の81億円としている。

通期の業績見通し製品別の見通し

 フラッシュメモリの販売拡大のほか、ストレージでは地デジ録画用途などの外付けHDD市場の拡大およびNAS市場の拡大を想定。ネットワーク事業ではスマートフォン向けなどの製品力を強化する。また、サプライ製品の販売を積極的に拡大していくとした。

 松尾取締役は、2012年4月付けで、バッファローコクヨサプライを100%完全子会社化し、バッファローブランドに統合したことについても説明。「当初は40億円程度の売り上げ規模だったものが、すでに100億円の水準に到達しており、これを今後拡大していくには、規模の追求が必要と考えた。バッファローが持つ営業力、開発力を活用していくことが必要。スマートフォン関連製品の製品を強化することで、2012年度の成長率は前年比32%増という高い成長を見込む」と意気込む一方、「スマートフォン関連製品を投入する企業が減少しており、新たなスマートフォンが登場したときにすべてのラインアップを揃えられる企業は、当社を含めて2社程度になってきた。新規製品に変わったときに、旧モデルの廃棄損を吸収できるような体制ができあがったきた」などと自信をみせた。

 また、ネットワーク分野においては、米国において、すでにIEEE 802.11acの製品投入。これを今後日本の市場にあわせた形で投入していくことを示しながら、「新たな通信規格において、優位性を再び発揮したい」などと語った。

 IEEE 802.11ac対応製品の日本市場への投入時期には、「今期中。日本の電波法に対応する必要がある」とするに留まり、具体的な時期には言及しなかった。

 「日本では11acの規格をそのまま使えないため、日本向けの製品の速度は半分ぐらいになるだろうが、11nのハイパワーに比べても速い。製品の優位性は十分にある。米国で発売した製品価格は200ドル弱。同じぐらいのレンジを想定しているが、製品投入時に11n対応製品の価格がどの程度になっているかを考慮する必要もある」などと語った。

 さらに、2012年4月に開発体制および販売体制の機構改革を実施。海外事業においては、中南米の事業拡大を目的に、新たにブラジルに販売拠点を設置し、2012年9月末から営業を開始。新興国での販売を強化する姿勢を強調した。

 海外の売上高は前年比44.5%増の265億円を計画。海外売上高構成比を19%にまで高める。アジア・オセアニアでは前年比77.2%増の142億円、北米・中南米では63.3%増の45億3,000万円、欧州では2.8%増の77億7,000万円を見込んでいる。

ブラジルに販売子会社を設立海外の売上高見通し

 「中国では、中国市場に進出しているヤマダ電機への展開に加え、地場量販店との連携強化により、バッファローストアとして、数百店舗を展開していくことで売り上げ拡大を計画している。欧州、米国では新たな通信規格への対応とNASが成長ドライバーになる。また、アジア・オセアニアではHDD事業の成長が中心になる」という。

 「2012年度の売上高拡大は約200億円。そのうち、海外での成長が90億円、サプライを除く国内での成長が70億円弱。サプライ事業では30億円の増加を見込んでいる」と語った。

 また、「今後はPCに依存しない、デジタル家電領域の周辺機器での売り上げ拡大を進めていく」との姿勢を示し、「TV市場は縮小しているが、外付けHDDを搭載可能なTVは全体の7割程度にまで拡大しており、外付けHDDに対する録画ニーズは堅調である」などとした。

 さらに、研究開発費で15.7%増の40億8,500万円を投資する計画を示し、「高付加価値製品の開発強化、海外事業の拡大に投資する」と語った。

デジタルホームの普及でPCに依存しない製品を推進設備投資、研究開発費

(2012年 5月 17日)

[Reported by 大河原 克行]