インテル株式会社は9月26日、都内で恒例の記者向け説明会「IAプレス・ミーティング」を開催。9月中旬にアメリカで開かれたIDF 2011の内容に基づき、今後の製品や市場展望などを紹介した。
冒頭では、同社 代表取締役社長 吉田和正氏が挨拶。IDF 2011のハイライトについて触れ、IAプラットフォーム上でのAndroidサポートの強化、Ultrabookのロードマップ、さらに限界しきい値電圧コアの3つを挙げ、「これらは、インテルアーキテクチャ(IA)が、今後のクラウド環境の普及に伴うデバイスの変化をサポートしていくことをコミットメントしたものだ」と説明した。
PC市場については、1日に100万台のPCが出荷され、Sandy Brdigeが史上最速の立ち上がりを見せていることを挙げ、拡大基調が続くとした。その一方で、多岐に渡る利用方法、タブレット(スレート)の登場によるスマートデバイスの広がり、そして大容量データを支えるクラウド環境の登場により、「PCにも変革を求めるときがやってきている」とし、同社が提唱する「Ultrabook」のコンセプトこそが、この変革を提供できるものだとアピールした。
IDF 2011でのハイライト | PC市場の継続的な拡大 | コンピューティング環境の変革 |
具体的には、高性能による創造性、Intel Smart Response Technology(SRT)による応答時間の短縮、Intel Anti-Theifによるセキュリティ性、WiMAXやWi-Fiによる接続性、バッテリの長時間駆動、そして購入しやすい価格帯などを挙げ、「ユーザー体験を“向上”させることでなく、“刷新”することで、コンピューティング環境に変革をもたらすものだ」と語った。
そのUltrabookは、2011年にSandy Bridgeを採用したものが各社から登場予定となっているが、2012年には第3世代のCoreプロセッサー・ファミリー、そして2013年にはコードネーム「Haswell」で知られる次期プラットフォームで構成される予定。吉田社長は「これはインテルがUltrabookのロードマップに対してのコミットメントを示している」と説明した。
ことHaswellに関しては、新アーキテクチャ、22nmプロセス、そして3次元トランジスタの採用により、アイドル時の消費電力を現在の20分の1以下に抑えることで、より新しいイノベーションを提供できるだろうとした。
Ultrabookのコンセプトと利点 | Ultrabookの進化の継続 | Ivy BridgeとHaswellの特徴 |
また、新しいコンピューティング環境において、デジタルデバイド(利用者のスキル差による情報格差)が生まれては無意味だとし、技術が人々の生活に与えるメリットも積極的にユーザーに訴求していきたいとする。そこで、ディスカバリーチャンネルへのスポンサーや新しいキャンペーンのCMを通して認知度を高めていきたいとした。
また、10月4日のCEATEC JAPANで吉田社長が自らこの変革を説明する基調講演を開催するほか、インテルも初めて自社のみのブースを設け、来場者に訴求する。さらに、そしてインテル、A&D、NTTレゾナントの3社によるPCヘルスケアへの取り組みを行なうことで、PCの利用用途を広げていきたいとした。
新しいCMやディスカバリーチャンネルへのスポンサーによる認知度拡大 | CEATECでの吉田社長の基調講演 | ディスカバリーチャンネルへのスポンサー |
WiMAXの利便性訴求や、PCヘルスケア分野への参加 | PCヘルスケアへの取り組みとしての第1弾として、コンシューマが購入可能なレベルの、PCと連動可能な血圧計 |
●Ultrabookを支える次世代「Ivy Bridge」
羽切崇氏 |
続いて、同社 IA技術本部 アプリケーション・スペシャリストの羽切崇氏が、2012年に登場予定のCPU「Ivy Bridge」について説明した。説明の基本的な内容はIDF 2011と重複するため、ここでは詳細を省き、大まかな概要を紹介する。
Ivy Bridgeは、CPU+PCHの2チッププラットフォームで、IAコアとGPUコアを内蔵。そしてSandy Bridgeとの下位互換性を保つなど、既存のアーキテクチャを踏まえている。その一方で、22nmプロセスの採用、DirectX 11への対応、そしてIPC(クロックあたりの命令実行数)やSSE命令の性能改善などが新しいトピックとなる。
また、ハードウェアの乱数発生器や、新しい「コンフィギュラブルTDP」、液晶の消費電力を抑えられる「Panel Self Refresh Technology」なども特徴となっている。
Ivy Bridgeの概要 | Ivy Bridgeの機能強化テン | Ivy Bridgeの新機能など |
このうちコンフィギュラブルTDPとは、OEMメーカーが独自に定められるTDP枠のこと。CPUに負荷がかかり、TDPで定められた温度に上昇するまである程度時間に余裕がある。この仕組みを利用したのがコンフィギュラブルTDPで、例えばTDP 17WのCPUに、TDP 13Wまで対応できる冷却機構をメーカーが設計/装着することができ、Turbo Boostがもたらす最大クロックによる高性能と、冷却機構の軽量薄型化を両立できるとした。
羽切氏によれば、一般的な用途では、従来定められたTDP枠を使い切ることがほぼないため、こうした仕組みを新たに取り入れたとのことで、Turbo Boostの幅をより効かせたという意味合いが強い。「ドッキングステーション装着時など、より強力な冷却機構を備えた環境では、より高性能を維持できるなど、柔軟なシステム設計ができる」とアピールした。
一般的な用途ではTDPまで達することが少ない | バスタブによるTDPの考え方。TDPの温度に達するまでの時間差を利用してTurbo Boostで最大クロックまで引き上げる |
最大クロックは変わらないが、TDPに達した時の標準時のクロックを引き下げる仕組み | 軽負荷時(上)時と重負荷時(下)時のクロック変化。コンフィギュラブルTDPで13Wに設定すると重負荷時に早くクロックが下がることがわかる |
一方、Panel Self Refresh Technologyは、画面の更新が必要とされる際のみに、メモリからビデオデータを転送し、それ以外静止時などはディスプレイバッファ側にデータを保持して表示する機能。これによってイメージ転送にかかる消費電力を削減できるとし、Wordの編集画面やPDF/Webブラウジングなどで大きな効果を発揮するとした。
Panel Self Refresh Technologyの概要 | Panel Self Refresh Technologyによる効果 |
このほか、低電力状態から復帰し、Wi-Fiや3Gなどのネットワーク回線を通じてメールなどの同期を行なうことで、ユーザーが常に最新情報にアクセスできる「Smart Connect Technology」、SSDを利用することでS4から即時に復帰でき、なおかつS3より低消費電力で起動できる「Rapid Start Technology」、SSDをHDDのキャッシュとして使うことで高速性/低価格/大容量を両立できる「Smart Response Technology」などを紹介し、Ultrabookがよりよいユーザー体験を提供できることをアピールした。
Smart Connect Technologyの仕組み | Rapid Start Technologyの仕組みとメリット | Smart Response Technologyの仕組みとメリット |
(2011年 9月 26日)
[Reported by 劉 尭]