セイコーエプソンは、インクジェットプリンタ「カラリオ」シリーズの発表会を都内で開催した。
セイコーエプソンの羽片忠明取締役は、「1995年にカラリオを発売して以来、今年で15年目を迎えた。今年度中には3,500万台の累計出荷に達する見込みであり、これらももっとお客様との生活密着度を高めて、『暮らしの中で、無くてはならない存在へ』という取り組みを加速したい。今年のカラリオの新製品ではユーザーの声を反映した改善に取り組んだ。とくに、もっと簡単な操作にしてほしい、無線LANの設定を簡単にしてほしい、パソコンを使わないでアルバムを印刷したい、インテリアに合う色のプリンタが欲しいといった観点から要望に応えた」と語った。
カラリオの累計販売台数とトピック | 暮らしの中で、無くてはならない存在」を目指す | 今年の改善ポイント |
また、セイコーエプソンの業務執行役員情報画像事業本部長 奥村資紀氏は、「今年は簡単、快適を進化させ『プリンタ選びで、もう迷わない』をキーワードにした」と語る。
「複合機では、使いやすさと置き場所で迷わない。コンパクトプリンタは年賀状作りで迷わない、顔料モデルはビジネス用途で迷わないと訴える。逆に唯一、迷っていただけるように主力機種のEP-803Aには、ホワイトモデルを投入した。従来のブラックモデルと合わせて、どちらにするか迷っていただける」とした。
エプソン販売代表取締役社長の平野精一氏は、「インクジェットプリンタの市場は回復しており、2010年度は5,000万台を越える。カテゴリ別の目標シェアは、複合機が50%以上、コンパクトプリンタが60%以上、単機能プリンタが50%以上を目指す。インクジェットプリンタ全体では、51%上のシェアを目標としている」と述べた。
以下、プレゼンテーションと展示の内容をまとめて、ジャンルごとに紹介する。
●無線LAN機能の強化が目立つ染料系複合機EP-903/803/703の各機種は、点灯するLEDが操作を指示してくれる「カンタンLEDナビ機能」が最大の訴求点だ。以前からチルト可能な前面操作パネルで、操作性の良さを訴求しているが、さらに改良が進んでいる。
さらに、無線LANを搭載するEP-903/803では、無線LAN機能の強化が目立つ。IEEE 802.11n対応、PCとUSBで接続するだけで無線LAN設定を自動設定する独自の仕組み、外部ストレージのネットワーク共有(903のみ)などが盛り込まれている。
ハードウェア面では、外観上の変更点は少ないが、内部での改良は進んでいる。質疑応答では、ヘッドの目詰まりの原因が紙粉であることの解明から、ヘッド素材を改良し、目詰まり防止動作を少なくしたという事例が紹介された。
●モノクロレーザーがライバルの顔料インク機
顔料インクを使用する機種として、複合機の「PX-503A」と単能機の「PX-203」が発表された。
プレゼンテーションでも、モノクロレーザープリンタとの比較がされるなど、低価格なSOHO/オフィス市場をにらんだ製品だ。
ビジネス用途に使われているインクジェットプリンタは、全体の2割で約100万台という。それを50%程度伸ばしたいとしている。
用紙がフロントローディングになり、両面印刷機能を備えているので、文字情報中心の個人宅でも魅力的な存在になりそうだ。
●キーボード付きコンパクトプリンタ
キーボード付きコンパクトプリンタは、昨年登場したが、あまりの売れ行きに品不足となり、TV CMも途中で打ち切られたという。それでも対前年で2倍になったという。今年は潤沢に供給し、3割増しを狙う。
当初は、シニア層をターゲットにしていたが、実際には幅広い層に受け入れられたという。PCで年賀状を作るのは面倒くさいという層は、思っていたよりも多いようだ。
●カラリオ ミー
カラリオ ミー E-340は2色。左がシルバーで、右がピンク |
L版写真やハガキを印刷するコンパクトプリンタの市場は、ボディーカラーが大切だ。今年は2色用意される。
TV CMについては、別途発表会が行なわれたので、そちらのレポートをご覧いただきたい
今年は役所広司さんに、黒木メイサさんが加わった | CMの一場面 | こちらは年賀状編 |
●質疑応答
質疑応答の模様。回答しているのはエプソン販売 取締役 販売推進本部長 中野修義氏 |
発表後の質疑応答では、率直な回答が多く、会場が沸いた。
「(キヤノンさんとの違いは)無線LAN接続の簡単さと、カラーの6色プリントだ。キヤノンさんも6本インクを使うが、うち2本は同じ黒だ(注:顔料インクと染料インクを使い分けている)」とか、「(キーボード付きコンパクトプリンタでは)カシオさんには負けない」などの発言は発表会では珍しい。
また、「(目標シェアが)50%ではなく、51%なのは、確実にトップシェアを取るというこだわりである」という回答があり、今年の製品への自負が強く伺われた。
インクジェットプリンタは、年賀状をターゲットにする年末商戦で、その年の出荷数の大半を売り上げる。また、例年キヤノンとエプソンの2社が40%以上のシェアを占める。今年の2大メーカーの対決は、無線LANと操作性が争点になっており、製品の特徴がやや似ていることもあって興味深いものになりそうだ。
(2010年 9月 3日)
[Reported by 伊達 浩二]