株式会社BCNは9日、「デジタル家電で始まった4つの地殻変動」と題した記者発表会を開催し、TV、デジタルカメラ、携帯オーディオプレーヤー、PCの分野における市場の変化などを説明した。

　本稿では、同社アナリスト 森英二氏による、PCに関する話題のみを取り上げる。

　同氏はまず、2008(昨年)年8月～2009年(今年)8月の1年間のPC市場の動向について、「台数ベースではなんとか前年度を上回っているが、金額ベースでは今年の8月で約20%も減少した」とした。その原因は、ネットブックの割合増加と、デスクトップPCの価格下落によるものだとした。

　ノートPCの平均単価は、昨年8月に10万円台だったものが、今年8月には78,000円台になった。一方、デスクトップPCは118,000円台だったものが10万円を割るなど、PC全体で大きく下落した。

PC市場全体の動き	ノートPCの販売台数比と金額比	デスクトップPCの販売台数比と金額比

　現在PC市場を牽引しているネットブックだが、ノートPC中の割合が、昨年8月の19.8%から、今年8月で29.8%に上昇した。しかし、今年の2月からのデータを見るとほぼ横ばいであり、「ネットブックのシェアは今後大きく上がることはなく、3割程度で落ち着くだろう」とした。

　一方、ノートPCのカテゴリ別平均単価だが、ネットブックは昨年8月の53,000円台から、今年の8月には39,900円台に下落している。また、Let'snoteなどの「スタンダードモバイル」製品も、低価格なLet'snoteの投入により単価が下落した。13型以上の「スタンダード」も緩やかに単価が下落している。

　なお、同社では日本エイサーの「Aspire Timeline」のような製品を「スタンダード」とし、ソニーの「VAIO type P」などの12.1型以下でかつAtom搭載製品を「ネットブック」としているため、両製品はスタンダードモバイルのカテゴリの単価下落の要因に含まれない。

　一方、メーカー別のカテゴリ別シェア(今年8月のデータ)で見ると、スタンダードは富士通、東芝、NEC、ソニー、アップルの順となっている。アップルに関してはシェアを伸ばしたというよりも、シェアを維持することで浮上した格好となった。

　スタンダードモバイルは、パナソニックが堅調にシェアを伸ばし52.8%、続いて東芝、HP、ソニー、富士通と続く。ネットブックは、相変わらずASUSTeKと日本エイサーが2強だが、両社ともシェアを落とし、東芝、ソニー、NECなどの国内メーカーが力を伸ばしているとした。

ノートPCのカテゴリ別割合	カテゴリ別のメーカーシェア

　上記のように、PC市場は金額ベースでやや苦戦をしていることを踏まえ、Windows 7で市場が盛り上がるかどうかを分析した。

　同氏はまず過去のデータを挙げ、「Windows Vista登場時に、搭載PCの割合がいったん9割になったが、ネットブックの登場によりWindows XPの搭載割合も増えている。一方パッケージソフトについては、Vista登場時に3割だったが、その後はXPが6割のシェアをとるなど、Vistaはあまり市場に受け入れられているとは言えない」とした。

　また、XP搭載PCの平均単価については、Vista発売5カ月前(2007年8月)から発売直後(2008年1月)に6%下落したが、Vista搭載PCの平均単価は、7発売の5カ月前(2009年5月)現在に至るまで10.2%下落していると、Vista登場時以上の価格下落現象を紹介した。

　Windows 7の発売が、PC市場の起爆剤になるかどうかについて、森氏は、「ネットブックのように、AtomとXP搭載でも売れていることからすると、PC市場としてはもはや“速ければ売れる、新しければ売れる”という動きではなくなっている。これは7が“新しいから”売れるというわけではないことを示している」とした。

　また、「マイクロソフトが、7をVistaと同様に“新しい”というメッセージで消費者に訴えていくのなら、Vistaと同じ道をたどってしまいかねない。消費者の立場に立った、7の利用シナリオを訴えていき、PCを買い換えるメリットを促進しなければならない」と語った。

　その一方で、「XP搭載PCのハードウェア寿命が来ているものも多く存在する。マイクロソフトがその市場の需要を喚起できれば、PC市場は活性化するだろう」と付け加えた。

　また、シャープの「NetWalker」のような、PCとスマートフォンの間に位置づけられるMID製品も、今後市場を活性化させる可能性があることを指摘した。

XP/Vista搭載PC/パッケージの比率	XP搭載PCとVista搭載PCの平均単価推移	NetWalkerの位置づけ