Raspberry PiといったARMを載せた市販の組み込みボードでもWindows 10 IoTは動作する 日本マイクロソフト株式会社は17日、WindowsのIoTに関する記者説明会を実施し、これまで主に組み込み向けOSとして提供してきたWindows Embeddedに変わるものとして、「Windows 10 IoT」の施策や各エディションについての紹介を行なった。
下表のようにWindows 10 IoTでは、3つのエディションを用意。医療やキオスク、シンクライアントといった大がかりな業務用端末向けの「Enterprise」、配送業での小型業務端末やモバイルPOSで使用される「Mobile Enterprise」、そして最小256MBのメモリや2GBのストレージといった極小のリソースで使用できる「Core/Core Pro」の3種類のエディションが提供される。
Windows 10 IoTで用意される3つのエディションとその仕様 米Microsoftでゼネラルマネージャ IoTテクニカルセールス担当を務めるカール・コーケン氏 これらのエディションについて解説を行なった米Microsoftのカール・コーケン氏は、全てのエディションがUWP(Universal Windows Platform)をサポートしており、例えばx86プロセッサのみで動作するEnterprise用にアプリを作ったとしても、ARMプロセッサのみ対応のMobile Enterprise搭載デバイスでも確実にアプリが動作するという汎用性の高さを強調。もちろんこれはコンシューマ向けのWindows 10も含めた話しで、1度UWPアプリを作ってしまえば、PC/Xbox/モバイル/業務用端末まで、メーカーはプログラム再構築の手間をかける必要がなくなり、高いROI(Return On Investment:投資利益率)を上げられるという優位点を説明した。
UWP(Universal Windows Platform)用に作成されたアプリはWindows 10のどのエディションでも動作する UWPアプリを作ることで開発リソースを新たに割く必要がなくなり、高いROIを得られる。これはドライバに関しても同様 UWPアプリを使ったハードウェアへのアクセスにはGPIO、I2C、SPIといった汎用的に使われているインターフェイスを利用でき、あらゆる周辺機器をアプリから制御できる セキュリティ機能としては、生体認証などのMicrosoft Passport、BitLocker、Device Guardをサポート。最後のDevice Guardはセキュリティが確保されているもの以外は動作を容認しないとする機能 エンドユーザーからはタブレットもPCと同じように管理したいという要望が多く、一貫性のあるロックダウン機能を提供することで対応する 米Microsoftでゼネラルマネージャ IoTデバイス エクスペリエンス セールス&マーケティング担当を務めるロドニー・クラーク氏 当然こうした高機能な組み込み向けエコシステムを提供する背景には、かなりの規模で勃興しているIoT市場の存在がある。米Microsoftのロドニー・クラーク氏は2020年までに1.7兆ドルの規模にまで拡大すると見るIDCのIoT市場の予測に加え、McKinsey & CompanyのIoTビジネスの70%はB2Bから発生するとの見通しを引用。大きなビジネスチャンスが起きており、日本では大半の市場が成長していない中、IoTは年12%(IDC Japan調べ)で成長を続けており、どこにフォーカスを当て、どこにリソースを注ぎ込むかが重要であると説く。
つい5年ほど前までは各デバイスがそれぞれ独立したユーザーエクスペリエンスを提供していたのに対し、IoTではそれが統一されようとしている。クラーク氏は共通の開発言語で共通のユーザーエクスペリエンスを提供する相互運用性の高さによってメーカーは大きな利益を生むとし、クラウドのAzure IoTと連携させることで、ビジネスの変革を促す。
IoTデバイスは2020年に250億台、市場売上げ規模は1.7兆ドルに成長。その70%がB2Bのシナリオから生まれると、各市場調査会社から見解が出ている 2010年と2015年のIoTデバイスの比較。デバイスは激増している MicrosoftはWindowsとクラウドのAzure IoTで顧客のビジネス変革を促す考え 日本マイクロソフト 業務執行役員 IoTデバイス本部長の菖蒲谷雄氏は、これまでも取り組んできた組み込み市場が、IoTの勃興によって若干役割が変わってきたとする。効率を上げるだけでなく、価値を高めていくといったビジネス上の課題を解決する案件が増えており、IoTのエコシステムを提供し、パートナーのビジネス変革を支援していきたいと述べた
説明会場にはWindows 10 IoT搭載およびそれに対応可能なデバイスが展示されていた。以下、その写真を掲載している。
Windows 10 Iot Enterpriseのシステムを表示すると「Enterpise 2015 LTSB」と書かれていた。LTSBとは「Long Term Servicing Branch」のこと。なお、IoT版のWindows 10にはEdgeとCortanaが搭載されていない NECの業務用10.1型タブレット「ShieldPRO」 エプソンダイレクトの「Endeavor ST170E」 株式会社インタフェースの「Classembly Devices」官製ハガキサイズの産業用コントローラ。Windows 10 IoT Enterpriseを搭載 岡谷エレクトロニクスの「スナップスキャン IoT for クラウド」開発プラットフォーム ベッコフオートメーションの組み込み型コントローラ「CX5130」 NTTデータのIoTデバイスのプラットフォーム基盤。湿度/温度/気圧を表示するセンシングデバイスと接続 ADVANTECHはゲートウェイ装置なども一緒に展示。中央は左は10.1型タブレットで、右はファンレスの組み込みコンピュータ 左から、DragonBoard 410c、Raspberry Pi 2、MinnowBoard Max