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インテル、無線給電の技術フォーラムを開催

~PCに残された"最後のケーブル"を無くす無線給電技術

「Wireless Charging Forum Japan」

 インテル株式会社は、4月23日、無線給電技術に関心のある業界関係者を対象とする「Wireless Charging Forum Japan」を開催した。

 Wireless Charging Forum Japanでは、Alliance for Wireless Power (A4WP) マーケティング委員会 副代表のグラハム・ロバートソン氏や、米Intel インテル・エクスペリエンス事業部 エコシステムおよび市場開発担当 ジェネラル・マネージャーのスマティ・シャラン・スティワート氏などによる講演、デモ・ショーケースなどが行なわれた。

A4WP マーケティング委員会 副代表 グラハム・ロバートソン氏
米Intel インテル・エクスペリエンス事業部 エコシステムおよび市場開発担当 ジェネラル・マネージャー スマティ・シャラン・スティワート氏

 会場では、まず開式の挨拶としてインテル株式会社 アジア・パシフィック・ジャパン 営業マーケティング本部 ネットワーク製品マーケティング・マネージャー 梅野光氏が登壇。

 梅野氏は「IntelはこれまでPCのワイヤレス化を目指してきた」と述べ、エンドユーザーへの意識調査の結果を挙げ、PCのワイヤレス化はユーザーからの注目度も高いことを示した。Intelは"No Wires"に向けた施策として、Wireless Data、Wireless Display、Wireless Docking(周辺機器接続)、Wireless Charging(電源)を4つの柱としている。既にデータは無線LANや携帯電話通信網、ディスプレイはWiDi、ドッキングはWiGigなどの技術によってワイヤレス化を実現しており、電源ケーブルがPCに残された"最後の1本"であると述べた。

インテル株式会社 アジア・パシフィック・ジャパン 営業マーケティング本部 ネットワーク製品マーケティング・マネージャー 梅野光氏
エンドユーザーの意識調査
"No Wires"に向けた4つの柱

 その後、1つ目の基調講演としてA4WPのグラハム・ロバートソン氏が登壇し、無線給電技術と標準化団体であるA4WP、無線給電技術規格「Rezence」について語った。

 ロバートソン氏は「この10年で人々の利用するデバイスは大きく変化した。個人がモバイルデバイスを必要とするようになり、消費者のバッテリ容量への要求は高まり続けており、無線給電技術にとってまさに機が熟したと考えている」と述べ、さまざまな調査結果を見ても電源に対する要求が右肩上がりなのは明らかで、その高まり続ける需要に対し、Rezenceは"キラーアプリ"となると語った。

 特にスマートフォンに対する需要が高く、まずはスマートフォンが需要の中心、最初の市場になるという。だが、スマートフォンだけを考えていてはダメで、今は個人がさまざまなデバイスを使用しており、今後さらに多くのなデバイス無線給電での需要が発生する。Rezenceのロードマップは「消費者が何を求めているのか」を考えた上で作成されており、さまざまなデバイスへの給電を想定し、1W未満から数十Wのデバイスまでカバー、効率の良さも考えられており、需要とそれを支える技術、ビジョンがあるとした。

機器別の給電レシーバ台数の増加グラフ
無線給電規格のビジョン
Rezenceのロードマップ

 さらにロバートソン氏は、1月5日に発表されたPower Matters Alliance(PMA)との統合についても言及した。

 無線給電の標準化団体はA4WPだけでなく、PMA、Wireless Power Consortium(WPC)の3つの団体が存在し、A4WPはRezence、PMAはPMA、QPCがQiとそれぞれが異なる規格を推進している。

 さらに無線給電の方式にも2つの方式が存在し、1つはPMAとQiなどで使用されている電磁誘導型(MI型)で、もう1つがRezenceで採用されている磁気共鳴型(MR型)となる。

 WPCはメンバー数などで他団体を上回り、対応製品の市場投入や、MR型も規格に盛り込むなど優位を保っているが、ロバートソン氏は「PMAとの統合によって影響力を得たことで、MR方式においてA4WPは大きなパワーを持つ」と述べた。

磁気共鳴(MR型)技術の成長性
A4WPとPMAの統合
2015年の統合に向け合意

 Rezenceの進行状況については、スマートフォン向けとなるBaseline System Specification(BSS) v1.1、タブレット向けのBSS v1.2に関しては、既に製品化に必要な認証プロセスをカバーしており、PC向けのv1.3、ウェアラブルデバイス向けの1.4などは現在進行中と、進捗は良好で、デファクトスタンダード化に向け良い流れで進んでいるとした。

 A4WPは4月時点で150社以上が加入しており、さまざまな業界から新たなメンバーが参加している。初期は欧米企業がメインだったが、今では6割以上のメンバーがアジアとなり、アジア地域の無線給電に対する需要は、全世界で見てトップだという。また最近ではPCへの需要が高まっており、新規の参加メンバーにもそれが反映されていると述べた。

仕様と認証の進行状況
A4WPの概要
150社以上のメンバー
A4WPに加入している日本企業
PC系メーカーの関心の高まり
アジア太平洋地域での大幅な増加

 2つ目の基調講演ではIntelのスマティ・シャラン・スティワート氏が登壇した。

 スマティ氏は、Intelは"No Wires"、"No Password"、"ネイティブUI/3D"をユーザーエクスペリエンスの重点領域とし、"No Wires"実現のため無線給電システムの市場導入に取り組んでおり、MR型給電技術を通し、無線給電を推進していくとした。

 取り組みとしてはA4WPを中心に業界を結集し、各種フォームファクタ対応のソリューションを提供しているという。スマティ氏は「複数の規格が存在すればユーザーは混乱する」と述べ、普及に向けてインフラ整備のためマリオットやヒルトンなど大手ホテルグループや、サンフランシスコ国際空港、エミレーツ航空などとパートナーシップを結んでいるとアピールした。

Intelのユーザーエクスペリエンス重点領域
Intelの無線給電戦略
最近のIntelの発表

 両基調講演後にはプレス関係者を対象に質疑応答セッションが行なわれ、ロバートソン氏らは、いくつかのサプライヤが2015年末にRezence対応デバイスを投入するべく動いており、IntelもRezenceを、第4四半期にリリース予定となっている次世代プロセッサ"Skylake"および"Cherry Trail"に統合して導入する予定であるなどと語った。

 別室で行なわれていたデモンストレーションを兼ねたショーケースでは、QualcommやMediaTekといった半導体、チップメーカーやFoxconnなどの企業が出展。

 QualcommはA4WP認定の給電パッド、レシーバーの展示デモを行なっていた。Qualcommは以前からA4WPの技術を使用した給電ハードウェアのリファレンスモデルを製造しており、既にいくつかのメーカーに採用されているという。

 MediaTekは3つの規格全てに認定を受けたマルチレシーバ、インテルはノートPCの無線給電デモを行なっていた。

Qualcommブース
「WiPower」採用機器の無線給電デモ
「WiPower」リファレンスモデルの無線給電デモ。展示機はUSB 2.0程度の出力だという
MediaTekブース
磁気共鳴型の無線給電デモ。名刺の束程度を挟んでも充電が可能
iPhone用無線給電ケース
iPhone 6用無線給電ケース(左)
ケース内の電源受信部
世界初マルチモードレーシバ「MT3188」を実装した受信基板
インテルブース
無線給電ベース
ノートPCの無線給電デモ。本来、Rezenceの仕様では受信側と送信側がBluetooth LEで接続され、電池残容量など充電に必要な情報を交換するが、今回のデモではPCが初期仕様のデモ機のため接続されていないという

(佐藤 岳大)