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富士通研究所、PCの画面を撮影するだけでファイルを転送する技術を紹介
~接続の確立とファイル転送を画面の撮影のみで実現
(2013/1/21 13:53)
株式会社富士通研究所は21日、PCの画面を携帯電話のカメラで撮影するだけで、PC・携帯電話間のデータ転送を容易に行なう技術を発表。都内で説明会を開催した。
説明にあたった富士通研究所 メディア処理システム研究所 イメージシステム研究部 主任研究員の田中竜太氏は、「携帯端末の機能が増えたことで、PC上で使っていたデータを携帯端末へ転送、またはその逆の転送を行なう機会が増えた。しかし、実際に転送を行なう手段はハードルが高く、手間や業務利用に際しての不安などがあった。今回の技術は、画面を撮影するだけで接続の設定も含めて簡単に実行できる、直感的な優しいインターフェイス」と説明する。
今回発表された技術は、PCの画面上に、IPアドレス/SSIDなどPCの識別情報を示す信号を表示させ、それを携帯電話のカメラで読み取らせることで対象となるPCを識別し、IPネットワーク接続を確立。さらにPC画面の一番上に表示されているファイルを特定して、携帯端末とのデータのやり取りを行なうものとなる
例えば、会議中に投影されているプレゼンテーションの画面を撮影するだけでPowerPointのファイルをダウンロードさせたり、会議の参加者に見てもらいたい参考資料などを埋め込むなどの利用シーンを提示している。また、逆に携帯電話内の写真などを、PCへ転送することもできる。
この技術でとくにポイントになるのは、前者の、携帯端末のカメラで撮影しただけでPCの識別とネットワーク接続を可能にする点だ。この技術は、2012年6月に同社が発表した「映像媒介通信技術」と呼ばれるものを基礎にしている。これは、人の目には見えない微小な光の明暗によってビットを表し、数Mbps程度の転送速度でデータを転送するというもの。今回の技術では、ここにIPアドレスやSSIDなどを重畳し、対象PCと携帯端末とのネットワーク接続を行なわせる。
“人の目に見えない微小な光”とは、緩やかに明暗を繰り返す光であり、不可視光ではないので、より正確に表現すれば“人が知覚できない光”となるが、微小な光でもあり、ほぼ人の目に見えないといっても差し支えないレベルという。ただ、逆に言えば、利用しているのはあくまで可視光なので、ディスプレイの特性などはあまり問わないことになる。
今回の説明会においても、プロジェクターで投影したものをタブレット内蔵のカメラを使って認識させるデモを実施していたとおり、液晶ディスプレイやプロジェクター、画面サイズなどの条件は緩い。また、画素レベルの認識をしてはいるものの、画面全体をパターンとして使って明暗させているのでそれほど細かく分解する必要はなく、撮影する側のカメラもそれほど多くの画素数は必要ないとしている。
この光の明暗で転送できる情報量は、現在は16bit/secとのこと。今回のデモでは、携帯電話の端末側にいくつかのPCのIPアドレスと固有のID(16bit)を紐付けさせているそうだが、カメラでの撮影からデータ転送を開始するまで2秒程度と、高速な接続確立が行なえている。
本技術を用いたデータ転送においては、PC側にサーバーソフト、クライアント側に専用カメラアプリが必要。現状では、サーバー側がWindowsプラットフォーム、クライアントがAndoridを想定。デモではWindows 7とAndorid 4系のタブレットを用いていた。
サーバーソフトは、IPアドレスなどの通信に必要な情報を画像パターンとして画面に表示する機能と、画面に表示しているファイルを監視して、クライアントからの要求時に転送を行なう機能を持つ。
クライアント側アプリは、カメラで受け取ったPC画面から画像パターンを認識しIPアドレスを特定。ネットワーク接続を確立したうえで、PCにファイル転送の要求を出す。
今回の発表はあくまで技術の発表であり、ユーザーへの提供やビジネス展開について検討中で、2014年度中の実用化を目指している。実用化に向けて通信速度など、技術自体の改善も進めるという。