レノボ・ジャパン株式会社は29日、ThinkPad誕生20周年を迎えることから記念会見を開催した。
ThinkPadは1992年10月に発売された「ThinkPad700C」を初代製品として、現在まで20年間継続して製品が発売されている。今回の発表会では、「ThinkPadの父」といわれる内藤在正取締役副社長、日本IBM在籍時にThinkPad初代製品開発にエンジニアとして関わっていた渡辺朱美代表取締役社長、現在のThinkPadの開発責任者である横田聡一執行役員常務の3人から、これまでのThinkPadの歩みと、現在のビジネス、今後登場する製品の紹介などが行なわれた。
レノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 渡辺 朱美氏 |
渡辺社長は、「初代ThinkPad開発にもエンジニアとして携わり、その後90年代後半には日本およびアジア・パシフィックのブランドマネージャーを担当した。今回、20周年を迎えたことを感慨深く感じるし、自分とThinkPadの深い絆を感じる」と最初に個人的な関わりを紹介した。
そしてレノボ・グループの業績について紹介し、現地時間8月16日に発表された2012~13年度4月~6月の売上高は35%増、純利益30%増となり、「PC業界全体が厳しい環境にある中、売り上げ、利益ともに増加し、11四半期連続で業界最速成長を続けている。ワールドワイドでのシェアも2012年第2四半期は過去最高の15%シェアを獲得し、トップとの差も0.7ポイントまで縮まった」と業績、シェアともに順調に成長していると強調した。
ThinkPadについても、世界160カ国で販売され、法人用ノートPCとしては世界で最も出荷台数が多い実績ある製品とした。
日本市場でのレノボは、2012年第2四半期に出荷台数が13.6%増加し、シェアも過去最高の7.8%を獲得。日本でのThinkPadも順調に出荷台数を増やし、日本でのシェア拡大に大きく貢献していることが紹介された。
世界市場でのレノボ | 世界市場でのThinkPad出荷台数 |
レノボ・ジャパンの成長 | 日本市場でのThinkPadの成長 |
「日本に大和研究所という開発拠点があり、お客様が大和に行って直接エンジニアと接することができる。エンジニアにとっても直接お客様の声を聞くことができる貴重な機会となり、品質に対し厳しい基準を要求する日本のお客様に鍛えられ、品質、堅牢性に反映されている」(渡辺社長)。
レノボではワールドワイドで「守りと攻めの戦略」を掲げ、日本市場においては好調な法人市場を守るべき市場に、中小企業向け市場を今後開拓する攻めの市場と位置付ける。守り、攻めのいずれにおいても「核となるのはThinkPad」として市場開拓を進める。
渡辺社長個人としても、「初代ThinkPadの前身となる製品からエンジニアとして開発に関わったが、当時はノートPC開発の黎明期で、エンジニアとしてはエキサイティングな時期だった。元々デスクトップPCに入っていた機能をどう入れ込むのか、チャレンジとなる時期だった。中には大晦日まで泊まり込んでテスト作業をしているエンジニアもいたが、それは実は私自身(笑)。バタフライキーボードのように、格納されたキーボードが出てくるようなイノベーティブな製品が登場するのがThinkPad。さらに20年後となると私自身は引退しているだろうが、そうなっても自分はThinkPadのファンで居続けるだろう」と強い思い入れを持っていることを強調した。
2012年度レノボの成長戦略 | 渡辺社長のThinkPadへの強い思い | ThinkPad20周年へのメッセージ |
レノボ・ジャパン株式会社 取締役副社長 内藤 在正氏 |
続いて内藤副社長が壇上にあがり、ThinkPad誕生時を振り返った。
「当時、日本IBM自身が液晶、ストレージなどノートPCに必要となるたくさんの技術に投資を行なっていた。それらを統合し、製品を作り上げることがThinkPad誕生の背景となっている。しかし、1992年に製品を世の中に出すにあたっては、液晶を持っているといってもそれをそのまま製品に載せるわけにはいかない。我々自身の手でコアロジックを作る必要が起こり、低消費電力マイクロチャネル対応PCコアロジック、カーボンファイバー製機構部品などを内製し、さらに商品に盛り込むために液晶エンジニアなどと協議してThinkPadを作り上げた。その後、液晶、ストレージなどをIBMが手放したことで、それぞれのエンジニアがチームの一員となって開発に取り組み、コンポーネントから一緒に考え、開発する体制を作り上げた」。
ThinkPadはこれまでラインナップ充実を優先した第1期、その第1期で機種が増え互換性がなくなったことの反動からラインナップ収束を進めた第2期、Windows Vistaの登場とセキュリティ対策でマシンパワーが必要となる反面、薄い、軽い製品が求められるようになった第3期、Edgeシリーズが登場した第4期と世代を重ねてきた。
内藤社長は世代が変わっても、「世代は変わっても後ろに流れているものは同じで、いつでも、どこでもオフィスにいるのと同等の生産性をあげられるモビリティ、PCを使っていることを忘れて仕事に没頭できる透明性、ビジネスとパーソナルのどちらも成功できるという点は変わらない」と基本姿勢は共通していると説明した。
IBMからレノボへの移籍についても、「多くの方から心配の声があがったが、IBM時代の2,200万台という出荷実績を上回る5,200万台出荷をレノボで達成し、ThinkPadの品質、堅牢性についても年々に良くなり、実績を積み上げている」とプラスに働いていると内藤副社長は強調した。
今回発表した「ThinkPad X1 Carbon」から第5世代となるが、「新しい世代に移る必要性は実は以前にも感じていた。しかし、それがちょうどレノボへの移籍とタイミングが重なり、変化を別な理由に感じられる可能性があったので第5世代への移行を今回に遅らせた」(内藤副社長)という背景も説明した。
1992年10月に発売されたThinkPad 700Cの概要 | ThinkPad 700C開発時の大和事業所 | ThinkPadの歴史 |
ThinkPadの基本概念 | 2005年、ThinkPadがレノボへ移籍 | 現在のThinkPad開発を支える技術群 |
2011年、大和研究所はみなとみらいに移転 | レノボ、プロダクトグループの開発拠点 | ThinkPadはX1 Carbonから第5世代へ |
レノボ・ジャパン株式会社 執行役員常務 横田 聡一氏 |
第5世代の製品となるX1 Carbonについては、内藤副社長から引き継いでThinkPadシリーズの責任者となった横田聡一執行役員常務が説明を行なった。
X1 CarbonはThinkPad史上最薄で、14型液晶を搭載したUltrabookとしては世界最軽量の製品となる。
横田執行役員常務は、「初代X1に比べると横幅は小さくなりながら、画面サイズは13型から14型となった。これは画面周りの額部分を小さくしながら、より大きな液晶を搭載するための設計を行なった結果。Ultrabookのキーボードの中には無理して薄くした結果、タッチ感が良くないものもあるが、長時間入力も快適に行なえるキーボードにこだわった」などこだわった製品開発をアピールした。
この他にも新設計によるキーボードの薄型化、軽量化、空冷モジュールの薄型化、軽量化、無線LANカード、SSDの小型ものの採用などを実現すると共に、堅牢性を実現するために最高級カーボン素材を採用し、ThinkPad T420sに比べて2.3倍の強度を実現している。
また、現在Windows 8リリースに合わせ、Windows 8搭載の法人向けTablet製品を開発していることを明らかにした。
横田氏は「これまでAndroid搭載のTablet製品を発売したことはあるが、今回はWindows 8を搭載し、デジタイザーペンにも対応した、法人向けの製品となる。是非、ご期待頂きたい」とした。
現在開発中のWindows 8搭載の企業向けTablet | Tablet製品の概要 |
以下、会場に展示されたThinkPadシリーズを写真で紹介する。
(2012年 8月 30日)
[Reported by 三浦 優子]