レノボ、パートナー向けカンファレンスでスレートPCを2011年投入と公表
~F1ドライバーのジェンソン・バトン氏も来場

ジェンソン・バトン氏

10月5日 開催



 レノボ・ジャパン株式会社は5日、東京・赤坂のグランドプリンスホテル赤坂において、パートナー向けカンファレンス「レノボ・ジャパン パートナーカウンシル 2010」を開催した。

 同社のパートナー向け戦略や製品戦略について説明が行なわれたほか、2009年F1ドライバーズチャンピオンであり、ボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのドライバーであるジェンソン・バトン選手が特別ゲストとして登場。同チームのプリンシパル・エンジニアの今井弘氏などとともに、F1マクラーレンチームのオフィシャル・サプライヤーであるレノボの貢献ぶりなどについて説明した。

 レノボ・ジャパンのロードリック・ラピン社長は、冒頭、業績の好調ぶりに言及。「レノボは世界市場で初めて2桁のシェアを獲得し、過去最高のシェアとなった。市場平均を大きく凌ぐ成長率となった。日本においても、4四半期連続で最も早く成長したベンダーとなった。これは1年ほど前にパートナー販売に100%シフトしたことなどが影響している」と語った。

レノボ・ジャパンのロードリック・ラピン社長レノボの実績。初めて2桁のシェアを獲得した

 またラピン社長は、10月5日にThinkPadの累計出荷が6,000万台に達したことに触れて、「ThinkPadは、大和事業所で開発された製品。外資系メーカーは投資効率を追求することから、これまでにも大和事業所をコストの安い地域に移転し、合理化するという選択肢もあった。だが、それはせずに大和事業所が持つノウハウと知的財産を守ってきた。今年12月にみなとみらいに移転することでさらに投資を加速していくことになる」とした。

 さらに、「他のPCメーカーとは異なり、レノボはハードウェア専業のメーカーである。パートナーが自社のソリューションと組み合わせてハードを販売してもらうことが可能で、レノボは、クラウド向けサービスや設置導入サービスには一切参入しない。その領域でも競合はしない。パートナー事業にフォーカスすることで、選ばれるベンダーになる」と語った。

 続いて、「パートナー様と切り拓く新しいPC事業の展開」をテーマに講演したレノボ・ジャパンの常務執行役員エグゼクティブ・ディレクター パートナー事業担当の留目真伸氏は、日本における具体的な成長率を示しながら、「第3四半期(7~9月)も同様の成長率を遂げている。5期連続でトップの成長率を維持できるかどうかが楽しみ」と高い成長に自信をみせながら、「今、パートナーとの新たな協業の形が求められている。ビジネスモデルを一緒に作り上げていくことが必要だ。そのためにレノボは7つの特徴をもって、パートナーと協業を行なう」とした。

 留目氏が掲げたのは、「パートナー事業、日本市場へのフォーカス」、「事業領域の補完関係」、「製品イノベーション、新たな価値提案の共同開発」、「コスト競争力、競争力のある報奨金および各種サポート」、「エンタープライズ協業、共同営業活動」、「マーケティング協業」、「グローバル展開サポート」の7つ。

レノボ・ジャパンの常務執行役員エグゼクティブ・ディレクター パートナー事業担当の留目真伸氏日本でも高い成長率を遂げているレノボ・ジャパンが取り組むパートナー戦略の7つのポイント

 「日本市場は、成熟市場における重点戦略地域としてだけでなく、ものづくりの強さの源泉としての役割も担う。また、レノボはハード専業ベンダーとしての資源を投下を続けており、マーケティングの価値をパートナーと共有して全体最適なオペレーションを行える体制が構築できる。さらに、大和の研究開発拠点を、みなとみらいに移転しても引き続き先進国市場にあった製品の研究、開発を行なっていく計画であり、日本の顧客、パートナーの声を真摯に聞いて、製品開発に反映させる」とした。

 加えて、「パートナーとの最適なフォーメーションを構築し、大手企業などを対象にした共同プロモーションの展開を推進。共同マーケティングによって、パートナーとの二重投資を避けた効率的なマーケティングの推進にも取り組む。さらに、グローバル4位のPCメーカーであるという実績を活かして、日本のパートナーがグローバル展開を行なう際の支援や、パートナーの顧客がグローバル展開する際の支援を現地から行なっていく」と語った。

 留目氏は、「2010年はパートナーとの成長戦略のすり合わせ、成長戦略に基づくパートナーシップの確立に取り組んでおり、IT市場において、何を強みに、どのようなビジネスを行なっていくのか、あるいは、パートナーとレノボの戦略をどのようにリンクするのかといったことを、パートナーごとにディスカッションし、支援体制の強化を図る。戦略の共有、効率の良いオペレーション体制の確立、首都圏以外の地域におけるシェア拡大、新規市場の開拓、パートナーと連携したソリューションメニューの整備などにも乗り出していく。パートナーのクラウドビジネスを、新たに企画する製品で支援し、製品開発段階からディスカッションを行なう体制も作りたい」などと、パートナーとの連携に関して一歩踏み込んだ方針を示した。

 そのほか、パートナー事業部の人員強化、パートナー向け技術支援の窓口の設置、情報ポータルである「LPN(レノボ・パートナー・ネットワーク)」の強化、ディストリビュータが持つ在庫を柔軟に活用するシングル・インベントリーの展開、ブランディング強化などに取り組むとした。

レノボ・ジャパン 製品事業部・佐塚千帆事業部長

 さらに、レノボの製品戦略については、レノボ・ジャパン 製品事業部・佐塚千帆事業部長が説明。レノボが全世界で2億ドルを超える研究開発投資や、約2,000人の開発者、科学者、エンジニアを擁していること、5,500件以上の特許取得実績、100件以上のデザイン賞を受賞していることなどを紹介し、「IdeaPadにおいては、日本で10シリーズ、約220製品をラインアップし、地方への販売チャネルを拡大した。また、量販店におけるIdeaブランドの強化などを進めた。一方、ThinkPadではEdgeシリーズやX100eの発表により、11型液晶を搭載したノートPC市場では第1四半期に52%のシェアを獲得。第2四半期には74%を獲得した。WiMAX搭載モデルは約100製品となり、いつでも使える環境を提案している。先頃発表した『ThinkPad Edge 11"』は、高いコストパフォーマンスを実現した製品であり、今後、日本の市場に特化した製品を拡充していくことになる。さらに、オールインワン型デスクトップも日本市場に適した製品ラインアップを拡充していく」と語った。

日本における2010年の取り組みレノボによる2014年度のPC市場予測。高い成長が見込まれる
レノボによる製品事業戦略の取り組みパートナーのクラウド戦略にはハードウェアの観点から支援する
会場に展示されたThinkPad Edge 11"オールインワンモデルのラインアップ強化にも取り組む

 レノボによると、2014年度までの全世界のPC市場は、2010年比55%増となる5億4,800万台になると予測。ノートPCは90%増の3億9,500万台に達するのに対して、デスクトップPCは5%増の1億5,300万台になるとみている。だが、オールインワンデスクトップPCは37%増の1,540万台になるとしており、これがデスクトップPC分野の牽引役になると見ている。さらに、スレートPCやシンライアント端末などで構成するクラウドPCの成長が著しく、スレートPCは全世界で10倍の成長、日本では20倍の成長を遂げるとみている。

 「成長分野に対する製品を投入し、市場の変化に柔軟に対応していく。スマートフォンはすでに中国で発売しているが、日本での投入時期を検討しているところ。スレートPCは来年にも発売する予定」などとした。

 こうした取り組みにより、2011年度はパートナービジネスで対前年比30%の成長を目指すという。

レノボ・ジャパン 執行役員 オペレーションズ/マーケティング担当のフランク・ルーブリック氏

 マーケティング施策については、レノボ・ジャパン 執行役員 オペレーションズ/マーケティング担当のフランク・ルーブリック氏が説明した。

 同社では、第2四半期までの期間、パートナーエグゼティブフォーラム北京に約20社のパートナーを招待したことや、最新製品によるキャラバンの実施、屋外広告やチャネルパートナー媒体への広告掲載、特定パートナー向けのインセンティブプログラムなどを展開してきたことを紹介。それらの実績をベースに、今回、東京で開催したパートナーカウンシルを、名古屋や大阪でも開催し、合計で900人を動員。さらに、西日本地区に続き、東日本地区でもキャラバンを開催することで、累計40回の開催を予定していること、企業イベントへの積極参加などにも乗り出す考えを示した。

 パートナー向けポータルサイトのLPNでは、11月から1月にかけて製品情報などを提供。さらに今後30日以内に、トレーニングポータルを立ち上げる予定も明らかにした。

 さらにルーブリック氏は、「今後のマーケティング活動における最優先事項はブランドの確立」とし、「バランス、シンプル、驚きの3つのポイントから展開していく」と語った。

 バランスとしては、これまでは製品カタログによる価格訴求が中心となっていたものを見直し、認知度を高めること、購入を検討してもらうための仕掛けを用意するという。さらにシンプルという観点では、『Lenovo』というマスターブランドを前面に打ち出す取り組みを強化。驚きとしては、差別化され、ユニークな訴求を心がける一方で、16~34歳の消費者を対象にした展開を開始する。

 「コンシューママーケティングにおいては、16~34歳はインターネットを利用したネット世代であり、IT機器購入の意思決定に影響を及ぼす世代ともなっている。ここにフォーカスしていく」とした。

第2四半期までの国内におけるマーケティング戦略への取り組み今後の優先事項としてブランドの確立を掲げる
「バランス」、「シンプル」、「驚き」の3つのポイントから展開する

 一方、インテルの営業本部長である大塚桂一氏がレノボとのパートナーシップについてコメント。「レノボとは、お互いがテクノロジーリーダーであるという立場から緊密な連携をとっており、次期プラットフォームの早期検証や、評価ツールの共有などを行なっている。スペックの選定まで意見をもらっている。Sandy Bridgeの立ち上げでも密に協業していく考えである。また、インテルでは社内標準機としてThinkPadを採用している」などと語った。

インテルの営業本部長である大塚桂一氏会場ではインテルとレノボの両CEOの写真も披露。3か月ごとに緊密な情報交換を行なっているという

 トークセッションでは、「F1マクラーレンチームの快進撃に貢献するレノボのPCテクノロジー」をテーマに、今週末に鈴鹿サーキットで日本大会が開かれるF1での優勝に期待がかかるマクラーレンチームのジェンソン・バトン氏などが登壇した。

 レノボ・グループ ワールドワイド・コンペティティブ・アナリストのケビン・ベック氏によると、レノボは、2008年11月からスポンサードを開始。ThinkPad T410をはじめとする600台のクライアントPCのほか、サーバー、モニターなど、2,100台のレノボ製品を提供しているという。

ボーダフォン・マクラーレン・メルセデス プリンシパル・エンジニアの今井弘氏(左)と、レノボ・グループ ワールドワイド・コンペティティブ・アナリストのケビン・ベック氏(右)

 ボーダフォン・マクラーレン・メルセデス プリンシパル・エンジニアの今井弘氏は、「F1チームには、車の速度だけでなく、長い期間動かす耐久性や、自動車の開発の速さが求められており、その点ではマクラーレンチームは高い評価を得ている。路面温度が50度を超えたり、細かい砂が舞ったり、雨が降る、氷点下になるといった環境でもPCが使用されることになる。信頼性、堅牢性があるのがThinkPad。頼りがいがある」とした。

 今井氏によると、車体には250個程度のセンサーがつけられ、タイヤだけでも数十個のセンサーがある。これらのセンサーから得られるリアルタイムデータをもとに、さまざまな判断を下すことになるという。

 また、自動車の暖気のためにエンジンを吹かす操作が、ThinkPadのパッドをなぞるだけで行なえるといったこぼれ話も披露された。

 ジェンソン・バトン氏は、「私は車を走らせることが仕事だが、ThinkPadから得られる情報には注目している。今年からセンターハブという方法を取り入れており、ピットでは、2台の車の間にPCなどが置かれている。ここでチームメイトのルイス・ハミルトンや、エンジニアとも重要な情報交換ができる。鈴鹿での日本大会では、改良した車で参戦する。データを分析して改良したものであり、仕上がりもいい。この車によって、いい週末を迎えたいと考えている」として、レノボのPCを活用していることが、日本大会での勝利につながるとの考えを示した。

ボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのドライバーであるジェンソン・バトン選手チームメイトのルイス・ハミルトン氏とも情報を共有
今年から取り入れたセンターハブ

(2010年 10月 6日)

[Reported by 大河原 克行]