デル株式会社のジム・メリット社長は29日、都内で会見を行ない、デルの日本における最新状況や今後の方向性などについて明らかにした。その中でメリット社長は、これまでのデルモデルの特徴となっていた「BTO」によるカスタマイズ中心の提供手法から、スペックを固定したモデルを中心とした展開へと転換する姿勢を明確に示した。
「自在に構成を組み上げるよりも、顧客は低コストで、簡単、シンプル、短納期の製品を欲している。それにあわせた仕組みを構築する」などとし、「これまでは何百万通りもあった製品構成内容を、99%以上削減する」とした。
メリット社長は、「顧客の変化に向けて、細かく対応していくことが必要である。バーチャル時代を迎えたことで、製品、サービスは大きく変化しなくてはならない。今やモビリティ、仮想化、ユビキタスといったものが強く求められており、それに向けてデルは取り組んでいく。構成内容を豊富に用意しカスタマイズするモデルからの脱皮もその1つ。また、グローバルでは、サービスを強化したのが最大の変化であり、Perot Systemsの買収もあって、いまでは全世界に41,000人のサービススタッフがいる。箱売りのベンダーから、ソリューションベンダーへの脱皮を進めているところであり、その成果が見られ始めている。また、現在、売上高の80%が法人部門からのものである」としたほか、「現金残高は100億ドルを有しており、買収資金も潤沢。毎日11万台を超えるシステムを出荷している。2008年に買収したEqualLogicは、当初は1,000ユーザーだったものが、1万ユーザーを超える規模に達している」などとした。
また、全世界の96,000人の社員の多くを新興国に配置していることを示し、中国・成都に新たな生産拠点を稼働させたことを発表したことにも触れ、「今後は中国西部の開拓が進む」とした。
同社概況 |
日本においては、売上高で30億ドル、従業員数で1,600人以上の体制となったことを示し、川崎、宮崎、大阪、東京の4拠点から営業、サポート体制を構築。「2011年度第2四半期の売上高は前年同期比5%増、粗利益は58%増となっており、付加価値ソリューションプロバイダーへのビジネス変革が進んでいる」と語った。
実際、法人向けソリューション比率は、2009年度の42%から、2010年度は46%に拡大しており、「PCとソリューションがほぼ半分ずつになっている」と位置づけた。官公庁/教育/医療機関向けビジネスでも今年度の見通しで46%がソリューションが占めるとし、中堅・中小企業ビジネスではそれを若干下回る比率になると予測している。
従業員で500人以上となる大規模企業向けビジネスにおいては、ソリューションに関する売上高比率が最も上昇しており、すでに売上高の47%を計上。2010年度にはこれを55%にまで拡大できるという。将来的には70%に拡大する計画を示した。また、サービス担当スタッフを前年に比べて10%増としているほか、第4四半期末までには20%増となる120人を超える体制とする考えだ。
大規模企業ビジネスの最新状況 |
日本ではEqualLogicを中心としたストレージビジネスが堅調で、第2四半期時点ではiSCSI市場において43%のシェアを獲得しているという。
大規模企業向けビジネスの日本における売上高は、前年同期比15~20%増で推移しており、利益では売上高の成長を上回る実績を遂げているという。
官公庁/教育/医療機関向けビジネスについては、「これまで十分に開拓できていなかった分野。まだまだビジネスチャンスがある」とし、HPCへのフォーカスを継続するとともに、ヘルスケアビジネスの強化を打ち出し、さらに高等教育機関向けの水平的ソリューションの提供に力を注ぐとした。
「顧客指向がデルの基本方針だが、ヘルスケア分野ではとくにその成果があがっている」とした。
公共市場においては、富士通、NECに次ぐシェアとなっており、10%半ばの成長を見込む、売上高を超える伸びを見込んでいる。
大規模企業ビジネスの最新状況 |
中堅/中小企業においては、「日本においては中堅/中小企業の市場が極めて重要である。その市場において、デルは存在感を高めており、業績も好調である。その理由として挙げられるのが、デルとは取引がしやすいという声が顧客からあがっている点だ。さまざまな選択肢を用意しているのがその背景にある。デルは、ストレージ、ネットワーキング、法人向け周辺機器、サービスへの投資を倍以上に拡大したほか、マーケティングキャンペーンにも積極的な投資を行なっている」などとした。
パートナーの拡大にも力を注いでおり、「中堅/中小企業向けビジネスのうち約3割がパートナー経由のものとなっている。中小企業向けにはトランザクション型のビジネスを展開する北海道から九州までをカバーするパートナーを中心に展開し、中堅企業向けには業界ごとに強みを発揮できるシステムインテグレーターとのパートナーシップを強化していきたい。ヘルスケアや金融分野に強いパートナーとの連携を求めている」などとした。
大規模企業ビジネスの最新状況 |
コンシューマビジネスに関しては、「会社が期待した通りの実績をあげている」と前置きし、「これまでとは違った戦略が始まっている。従来は、シェアは追うことを優先したところがあったが、ゲーミングPCであるAlienwareの国内投入などもあり、中価格/高価格帯の製品を伸ばし、収益性の改善に注力していた」などとし、ヤマダ電機との提携開始による新たな小売店展開を強化や、直販のバックボーンを強化したことによる翌日発送モデルの確立などの成果を挙げた。
一方、メリット社長は、バーチャル時代のデルの戦略として、「Efficient EnterPriseソリューション」、「最も柔軟で効率的なバリューチェーンの構築」、「お客様との接点を強化するためのオンライン上でのリーダーシップの加速」の3点を挙げた。
Efficient EnterPriseソリューションとしては、「標準技術(Open)、十分な能力(Capable)、購入者しやすさ(Affordable)の実現という点でデルは妥協をしない」などとし、スタッフの効率化、データセンターの効率化、クラウドコンピューティングのそれぞれの領域において、標準化、シンプル化、自動化を提案する製品およびソリューションを提供するとした。
バーチャル時代のデルの戦略 |
「最も柔軟で効率的なバリューチェーンの構築」では、バリューチェーンの徹底した改革にも乗り出していることを示し、設計、計画/プライシング、調達/組立/配達、販売、サービス/サポートのサプライバリューチェーン全体を見直しにより、競争力が高い体制を構築することに成功したという。
「これまではユーザーに最適化されたPCを提供することに力を注ぎ、オーダーにあわせてカスタマイズすることにフォーカスしてきた。だが、ここにきて、経済性に優れた、シンプルなものを求める顧客が増加している。カスタマイズによるパーソナライズを求めるユーザーもいるが、それよりも、固まったスペックのものを用意し、ユーザーはこれを選択する傾向が強まっている。デルは、低コストで、短納期を求めるユーザーへのフォーカスを高めていきたい」などとした。
従来はカスタマイズに柔軟性を持つメリットがある一方で、構成が何百万パターンもあるために選ぶのに苦労していたという問題があった。デルでは、商品の構成手法を大幅に変更。99%のコンフィグレーションを削減し、これがサプライチェーン全体のコスト削減にもつながったという。
「製造部門では41%のコストを削減できた。この背景には、ここ数年取り組んできた製造拠点の集約や、製品の設計自体をスリム化したことも効果もあるが、コンフィグレーションを見直し、大幅に削減した効果もある」と語った。
オンライ経由の売り上げ |
「例えば、ノートPCのLatitudeでは、ビジネスレディコンフィグレーションとして提供。また、98%の製品がデル特急便を利用でき、翌営業日に納品できる」とし、日本の中堅/中小企業向け事業においては、クライアントPCの10%、なかでも中堅/中小企業向けとするVostroシリーズの20%がデル特急便を利用したものであることを明らかにした。
「お客様との接点を強化するためのオンライン上でのリーダーシップの加速」では、「オンラインは、よりパーソナルなもの、顧客を中心に据えたオンラインを展開しており、TwiiterやFacebookをソーシャルメディアを活用したテクニカルなアドバイスを行なっていく」とし、「法人向けには、オンラインそのものをスタマイズできるようにするなどの工夫を凝らしている。今後は、オンラインの売り上げを強化していく考えだ」とした。
現在、日本の法人向け売上高に占めるオンライン経由の販売比率は28.1%にまで上昇しているという。「これはさらに高まっていくことになる」とした。
(2010年 9月 29日)
[Reported by 大河原 克行]