MacBUがラウンドテーブルを開催、「Office for Mac 2011」の価格を発表
~一部製品は発売記念の限定パッケージとして出荷

Office for Mac 2011のパッケージ(米国版)

9月29日 発表

10月27日発売



 マイクロソフト株式会社は、Mac向けのオフィススイート「Office for Mac 2011」の詳細な製品構成と参考価格を発表した。日本における発売日は既報のとおり10月27日。

「Office for Mac 2011」は3つのエディション、5つのパッケージで提供される。従来の2008とは若干名称が変わっているが、Home and Studentが従来のファミリー&アカデミックに相当する仕様

 「Office for Mac 2011」は3つのエディション、5つのパッケージで提供される。「Microsoft Office for Mac Home and Business 2011」は、「Microsoft Word for Mac 2011」、「Microsoft Excel for Mac 2011」、「Microsoft PowerPoint for Mac 2011」、そして新たに加わる「Microsoft Outlook for Mac 2011」により構成され、1人のユーザーが2台までインストール可能な2パックと、1台のみインストール可能な1パックが用意される。参考価格はいずれも税込みで2パックが34,650円、1パックが22,050円

 「Microsoft Office for Mac Home and Student 2011」は上記のHome and Business 2011と比べ「Microsoft Outlook for Mac 2011」が含まれないエディションとなる。一世帯内の3台までインストールが可能なファミリーパックと、1人のユーザーが1台にのみインストール可能な1パックが用意される。参考価格はいずれも税込みでファミリーパックが17,850円、1パックが13,650円

 3つ目のエディションは「Microsoft Office for Mac Academic 2011」で、これはHome and Business 2011と同内容だが、購入対象者は学生、教職員、教育機関などに限られる。参考価格は税込みで17,850円となる。

 各エディションによってテクニカルサポートの期間は異なり、Home and Businessは購入より1年間(365日)、他の2つのエディションは購入より90日間となっている。

 なおHome and Businessの1パックとHome and Studentの1パックはOffice for Mac 2011発売記念限定パッケージとして提供されるため、限定数終了後の製品ラインナップは3エディション、3パッケージのシンプルな形へと収束する見込みだ。

 これまでとは異なり、Office 2008 for Macをはじめとした従来製品からの汎用的なアップグレードパッケージは販売されず、すべて新しいライセンスとして提供される。ただし既報のとおり、製品発表があった2010年8月3日から11月30日までにOffice 2008 for Macを購入したユーザーに対しては、実費3,000円でOffice for Mac 2011が提供される優待キャンペーンが行なわれている。キャンペーンへの応募はオンラインで登録してから購入証明書を指定の住所に送付する。応募締め切りは2010年12月31日となっている。

 「Office for Mac 2011」の動作環境はIntel製プロセッサを搭載したMacのみで、PowerPC搭載のMacは動作対象外となる。OSとしてはMac OS X 10.5.8以上(Leopard、Snow Leopard)がインストールされている必要がある。

 なおリリースには明記されていないが、現在Mactopiaでβ版が提供されているMac版の「Microsoft Messenger 8」は、「Office for Mac 2011」の出荷と同時にβがとれて、Officeのインストール時には正規版がインストールされる。正規版のダウンロード提供の有無と時期は現時点で明らかにされていない。

Office for Mac 2011の各アプリケーションの新しいアイコンちなみにOffice 2008 for Macはこうしたデザインだったフォルダのデザインも一新される。左側は正規版となる「Microsoft Messenger 8」

●2011にちなんで、11の新機能を紹介したラウンドテーブル
出来たての日本語版Office for Mac 2011の各パッケージを手にするプロダクトユニットマネージャのジェフ・プライス氏(中央)、ユーザーエクスペリエンスマネージャのハンイ・ショー氏(右)、ディベロップメント マネージャのアンドリュー・ライダー氏(左)

 米MicrosoftのMacBU(Macintosh Business Unit)によれば、「Office for Mac 2011」は9月10日(現地時間)にRTM(Release to Manufacturing)へと移行し、いよいよ出荷準備が整った。これを受けて、MacBUからプロダクトユニットマネージャらが来日し、メディア向けのラウンドテーブルが行なわれた。出席したのは米MicrosoftのMacBUからプロダクトユニットマネージャのGeoff Price(ジェフ・プライス)氏、ユーザーエクスペリエンスマネージャのHan-Yi Shaw(ハンイ・ショー)氏、ディベロップメント マネージャのAndrew Ryder(アンドリュー・ライダー)氏。さらに日本国内における担当者である仲尾毅氏を加えて、製品の特徴や今回のバージョンアップのポイントなどが紹介された。

 今回のOffice for Mac 2011は、前バージョンにあたるOffice 2008 for Macからおおよそ2年半ぶりのバージョンアップにあたる。2010年6月にWindowsプラットフォーム向けにOffice 2010が出荷されたのを受けて、極力短いスパンでMacプラットフォームへの投入を目指したという。やはりポイントとされているのは相互の互換性で、ファイルフォーマットには引き続きOpen XMLを採用。Office 2010と同一のファイルを扱うことができる。またOffice Web App、SkyDriveへの対応でWebアプリケーションとしてWindowsプラットフォームとの協調作業環境の実現が可能だ。そしてもう1つ、Office 2008 for Macでは搭載が見送られたVBAが復活したことは嬉しいニュースである。

 これまでのレポートで何度も紹介しているが、Office for Mac 2011には従来のEntourageに代わって「Microsoft Outlook for Mac 2011」が電子メール・情報管理ソフト、Exchangeクライアントとして搭載される(※ただし前述の通り、Home and Studentには含まれない)。また、WindowsプラットフォームではOffice 2007から採用されていたリボンインタフェースがMac向けにアレンジされ、Macリボンとして追加されている。さらに後述するダイナミックソートや、スパークライン、条件付き書式の採用など、誰でも簡単にプロフェッショナルなビジネス文書作成を行なえるのがMac版のポイントとされている。

Office for Mac 2011の2011にちなんで紹介された11の新機能

 仲尾氏は、Office for Mac 2011の2011にちなんで11の新機能を、下記のとおりトピックスとして紹介した。

  1. Outlook for Mac、新登場
  2. Office Web App / Windows Live SkyDriveインテグレーション
  3. リボンインターフェイス
  4. テンプレートギャラリー
  5. Word全画面表示
  6. PowerPoint / Word 写真やビデオを使ってドキュメント作成
  7. PowerPoint / Word ダイナミックソート
  8. PowerPoint ブロードキャスト スライドショー
  9. Excel スパークライン / 条件付き書式
  10. VBA復活 (Visual Basic for Applications 6.5)
  11. Windows Office標準日本語フォント、新たに10書体バンドル
1. Outlook for Mac、新登場

 これまでMac版Officeにおける「O(オー)」のアイコンはOfficeの総称というべき位置づけだったが、Office for Mac 2011からは「Outlook for Mac」のアイコンへと変わっている。Outlook for Macでは、WindowsプラットフォームからMacプラットフォームへと移行するユーザーのために、pstファイルのインポートが可能。ただしOutlook for Macで利用されるファイルは独自のデータベース管理に基づくものでpstファイルそのものを利用するわけではない。これはデータベース自体を堅牢にし、Mac OS XにおけるTimeMachineへの対応を行なうためのもの。単一のファイルを扱うpstに対し、Outlook for Macではデータベースをスレッド化することでMac OS XのSpotlight検索やQuicklookによる添付ファイルの参照など有利な点があるという。

Outlook for Mac 2011の特徴。Macにおける最良のExchangeクライアントと強調Mac OS XのQuickLookによる添付ファイルの表示(英語版)Outlook for Mac 2011のカレンダー表示(英語版)

2. Office Web App / Windows Live SkyDriveインテグレーション

 Windows版OfficeとMac版Officeの互換性の概念を、クラウド環境まで広げる意図がある。無償で利用できるクラウド型のOfficeでWord、Excel、PowerPoint、OneNoteのファイルをOfficeアプリケーションで参照、編集が可能となる。

3. リボンインターフェイス

 WindowsプラットフォームではOffice 2007より採用されているユーザーインターフェイス。Office 2008 for Macでは採用が見送られたが、今回リボン部分はCocoaベースとなって各アプリケーションに統合されている。またリボンに馴染んだユーザーばかりではなく、既存のMac版Officeユーザーのために、従来の使い慣れたツールバーなどもインターフェイスとしては継続採用されているのも特徴。Mac OS Xのインターフェイスガイドラインから最上部のメニューバーをなくすることもできないため、メニューから項目を選択するというもっとも単純な操作方法も残っている。Windows版ではできないリボンインターフェイス自体を非表示にすることもできるなど、カスタマイズの自由度はかなり高い。

Word for Mac 2011のリボンインターフェイスExcel for Mac 2011のリボンインターフェイス

4. テンプレートギャラリー

 Office 2008 for Macでは、プロジェクトギャラリーとしてOffice全体の入り口のような位置づけだったが、Office for Mac 2011では各アプリケーションにテンプレートギャラリーとして配され、まったく新しいデザインになった。標準でインストールされるテンプレートのほか、インターネット経由でマイクロソフトが用意した数万点のテンプレートにアクセスして、必要なものを随時追加できる。例えば賞状など日本独自とも言えるテンプレートも用意されるとのこと。これはWindows版OfficeにはないOffice for Mac 2011独自の要素となる。

インストールされる初期のPowerPointのテンプレートギャラリーオンラインで適切なテンプレートを探すこともできる。賞状などは日本向け

5. Word全画面表示

全画面編集に対応するWord for Mac 2011。デモは夏目漱石による「坊ちゃん」

 Word for Mac 2011では全画面編集が可能になっている。これも上記のテンプレートギャラリーに続いてMac版独自の機能だ。デモでは夏目漱石による「坊ちゃん」のWordファイルを表示。単に表示するだけであればMac OS Xが標準でサポートするQuickLookによってWordファイルの内容表示も可能だが、Wordでは書式も含めた縦書きの表示と、メニューやツールを排した全画面での編集モードが紹介された。

6. PowerPoint / Word 写真やビデオを使ってドキュメント作成

 WindowsプラットフォームではOffice 2010から搭載されている各アプリケーション内での写真編集機能などもOffice for Mac 2011に採用した。

7. PowerPoint / Word ダイナミックソート

 ユーザーからのリクエストに応える形で採用されたWindows版OfficeにはないOffice for Mac 2011独自の機能。PowerPointやWordにおいてレイヤー処理されている各種のオブジェクトを、直感的に移動できる。例えばプレゼンテーションにおける背景写真を一番後ろのレイヤーに持って行きたいときなど、コマンド操作ではなくドラッグ&ドロップで任意の位置まで移動が可能になる。

PowerPoint for Mac 2011でレイヤーの前後を入れ換えるダイナミックソート。コマンドやメニュー操作ではなく、直感的にドラッグして位置が変えられるのが特徴。Windows版Officeにはない独自の機能だ(画面は英語版)

8. PowerPoint ブロードキャスト スライドショー

 当日は環境の都合で実際のデモはなかったもののクラウドと連携したサービスの1つ。PowerPointのpptファイルをWebへとアップロードしたうえ、それを見せたい任意のユーザーにはURLのみを通知することで、ユーザーの各端末上でプレゼンテーションのスライド表示が可能になる。

pptファイルを受け渡すのではなく、URLの通知のみで任意のユーザーにスライドショーを表示できるPowerPoint ブロードキャスト スライドショー。(画面は英語版)

9. Excel スパークライン / 条件付き書式

 WindowsプラットフォームのExcel 2010で利用できていたスパークラインの機能をOffice for Mac 2011で利用できるようになっている。また条件付き書式を大幅に拡張し、セルの中にグラフを作成したり、アイコンを追加できるようになっている。

10. VBA復活 (Visual Basic for Applications 6.5)

 Office for Mac 2008には搭載されなかったVBAだが、ユーザーからの強いリクエストとWindowsプラットフォームとの互換性向上の意図から待望の復活を遂げた。開発時点では最新のバージョンとなるVisual Basic for Applications 6.5が実装されているという。

11. Windows Office標準日本語フォント、新たに10書体バンドル

 文書の互換性という意味で従来も搭載されていたWindowsの標準フォント。これまでは、「MS ゴシック/明朝」「MS Pゴシック/明朝」「メイリオ」といったWindows自体のフォントがMac向けにも提供されていたが、Office for Mac 2011では、Windows版Officeに含まれているフォントのなかから、HGフォントを新たに10書体バンドルした。

セル内へのグラフ表示や、アイコンの追加をOffice for Macでも実現従来までのWindows標準フォントに加え、Windows版Officeに含まれているフォントの中から、HGフォントを新たに10書体バンドルする

 新機能のデモンストレーションのあと、プロダクトユニットマネージャのジェフ・プライス氏がコメントした。無事にRTMを迎えたことで大いにリラックスしているという同氏によれば、Office for Mac 2011はこれまでMacBU内でMac版Officeを開発してきたチームとしては、かなり規模が大きいながらも非常によいチームとして仕事ができたと評価した。開発にあたっては、なによりOffice 2010との互換性を重視するとともに、ユーザーに馴染み深いものにすることにフォーカスしてきたという。特に互換性という概念をOffice Web AppそしてSkyDriveを使ったクラウドまで広げることで、Microsoftの目指すクラウド化、情報の共有、協調作業を現時点でベストな状態にできるように意識したという。より具体的な部分では、きれいなドキュメントを簡単に作れるようにテンプレートギャラリーの充実、アプリケーション内部での写真編集など。また、ユーザビリティの視点では、多岐にわたるOfficeの機能を簡単にかつ直感的に使えるようなデザインを目指したとのこと。Mac版リボンをはじめ、こうしたUI部分は同席したハンイ・ショー氏のチームが担当したということだ。

 最後に行なわれた主なQ&Aは下記のとおり

Q:高速化を実現しているというが具体的にはどうしているのか?

A:さまざまな要素が含まれている。例えばMac環境ではMac OS Xのコアテクノロジーを採用するなどして起動の高速化などを実現した。またGPUを積極的に利用してグラフィック表示の高速化も行っている。またExcelの計算エンジンは、Windows版Officeの開発チームと協業することで高速化を図っている。

Q:VBAの実行速度は従来(Office 2004)やWindows版と比べてどう違うのか?

A:具体的な数字が手元にあるわけではないが、速くなっているのは事実だ(笑)。前述のとおりコアテクノロジーを採用しているほか、Intelプロセッサへの最適化も行なっている。

Q:リボンインターフェイスはWindowsに準じたものだが、よく見るとタブの名称など細部で異なっている部分もいくつか見受けられる。似て非なる部分があるのはユーザーが惑う可能性もあるのではないか?

A:何より重要なのは、これはMac向けのアプリケーションで(開発している)我々も、実際に利用するのもMacユーザーであるという点だ。Macにおけるユーザーインターフェイスのガイドラインは重視しているし、(Windows版の)リボンインターフェイスの初期開発時には考慮されていなかった部分もある。タブの移動方法や削除などが代表的な例となるが、これらはSafariと同じ操作感であることに気がつくだろう。ディテールを重視していけば、相互がブレンドされる形になった。

Q:iOSやマルチタッチのトラックパッドなど、Appleはタッチインターフェイスに力を入れている印象がある。それにはどう対応していくのか?

A:アプリケーションはCarbonベースから一部Cocoaベースへと移行している(※筆者注。Outlook for MacはCocoaベースの新規アプリケーション。他のアプリケーションもリボンをはじめとして一部のコンポーネントがCocoa化されている)。今すぐ具体的な内容があるわけではないが、将来的にタッチインターフェイスに対応できるような準備は(Cocoa化によって)行なわれていると考えている。

Q:MacBUに聞くべき質問かは微妙だが、iPhoneやiPadへの対応は検討しているか?

A:とくに話すべき内容は現在ない。むしろメディアやユーザーから具体的な要望を聞かせて貰いたいと考えている。

Q:Exchange Serverを利用しないユーザーにとってはカレンダー・スケジュール機能がうまく活用できないが、他のクラウドサービス、あるいはWindowsLiveやHotmailと連携していくような考えはないか?

A:今回一番大切だったのはExchangeにおけるカレンダー、スケジュールの共有だ。既存のMacユーザーからの要望も、Outlookとの互換性、パフォーマンスの向上が優先していた。それこそが最も克服しなければいけないフィーチャーである。取り込めていない部分もあるが、今後解決していきたい。他の要素については検討を重ねていく。

Q:Office 2010では右クリックの機能が非常に充実している。そもそもMacユーザーがどれほど右クリックをするのか疑問はあるが、どのように使われていくのか?

A:繰り返しになるが、互換性重視の姿勢は変わらない。同時にネイティブなMacのインターフェイスも活かしている。前述したMac版のリボンが最たる例だろう。同じようにライブプリントプレビューでは、Mac OS Xネイティブな部分を生かした。プリントダイアログはCarbonからCocoaへと移行している。

(2010年 9月 29日)

[Reported by 矢作 晃]