AMD、最大12コアを内蔵したMagny-CoursことOpteron 6100シリーズ

12コアプロセッサとなるOpteron 6100シリーズ

3月29日 発売



 AMDは29日、「Magny-Cours」のコードネームで開発してきたサーバー向けプロセッサを「Opteron 6100シリーズ」として発表。また、その下位モデルとして「Opteron 4100シリーズ」(コードネームLisbon)を来四半期に投入することを明らかにした。

1月付けで日本AMDの代表取締役社長に就任した宮本啓志氏製品の説明を行なったAMD本社サーバー/ワークステーション部門マーケティングディレクターのJohn Fruehe(ジョン・フリー)氏

 Opteron 6100シリーズは1つのプロセッサで12基ないしは8基の物理コアを内蔵しており、2Pないしは4Pなどの大規模なサーバーシステム向けと位置づけられる。Opteron 4100シリーズは6基ないしは4基の物理コアを内蔵しており、1Pないしは2P構成のサーバー/ワークステーションなどがターゲットとなる。

 CPUソケットはOpteron 6100シリーズがSocket G34(1,944ピン)、Opteron 4100シリーズがSocket C32(1,207ピン)と前世代から変更され、対応するマザーボードはサードパーティベンダから新たにリリースされることになる。

●2P以上の環境に対応する12/8コアのAMD Opteron 6100

 今回発表されたOpteron 6100シリーズ(以下Opteron 6100)、および来四半期に投入されるOpteron 4100シリーズプロセッサ(以下Opteron 4100)は、以下のようなスペックになっている。

【表1】Opteron 6100、Opteron 4100のスペック

Optero 6100Opteron 4100
開発コードネームMagny-CoursLisbon
コア数12864
キャッシュトータルキャッシュサイズ19.6MB17.1MB9.8MB8.6MB
L1キャッシュ(各コア)64KB(命令)+64KB(データ)64KB(命令)+64KB(データ)
L2キャッシュ(各コア)512KB512KB
L3キャッシュ(ソケットあたり)12MB6MB
HT3リンクx16リンク42
リンクあたりの帯域6.4GT/sec6.4GT/sec
メモリコントローラチャネル数42
DDR31333対応1333対応
LV-DDR31066対応1333対応
プロセステクノロジー45nm(SOI)45nm(SOI)
ダイサイズ346平方mm346平方mm
トランジスタ数18億800万9億400万
対応ソケットSocket G34(1,944ピン)Socket C32(1,207ピン)

 Opteron 6100の開発コードネームはMagny-Cours(マニクール)。余談だが、AMDのサーバー向けプロセッサのコードネームは自動車レースのF1が開催されている地名に基づいており、このMagny-Coursも、一昨年までフランスGPが開催されていたサーキットがある地名だ。

 前世代にあたる「Istanbul」(イスタンブール)コアのOpteronに比べて強化されている点は大きく4つある。

 1つ目はコア数がIstanbulの6コアに対し、12ないしは8コアに増えていることだ。12コアと8コアの違いだが、実際にはどちらもダイサイズ、トランジスタ数は同じもので、8コアは12コアの内、4コアが無効にされた状態で出荷されることになる。ちょうどトリプルコアのPhenom X3が、クアッドコアの1コアを無効にした状態で出荷されているのと同じような形だ。こうした仕組みを取ることで、CPUメーカーは歩留まりをあげることが可能になる(12あるコアのうち1つ、2つ動かないものがあったとしても8コアとしては出荷できるため、不良品としてはじかないといけない分が減るため)。

 2つ目はHyper Transportのリンク数が、Istanbul世代ではHT3に対応したx16リンクが3つだったのに対して、Opteron 6100では4つに増えている。これにより、従来のOpteronでは4P時に1つのプロセッサから見ると2つのプロセッサまでは直結しているものの、残りの1つは別プロセッサ経由でしか接続できていなかったのに対して、Opteron 6100では1つのプロセッサから残り全部のプロセッサに直接接続することができるようになる。これにより、プロセッサ間の通信速度が33%向上し、プロセッサに直結するメモリのチャネル数を4チャネルにできるようになったりなど、システム全体としての性能が向上した。

 3つ目はIstanbul世代まではDDR2のトリプルチャネル構成となっていたが、Opteron 6100ではメモリコントローラがDDR3に対応し、かつクアッドチャネルとなり、メモリ帯域幅が大幅に向上している。DDR3-1333を利用した場合には、プロセッサ毎に最大で42.7GB/secの帯域幅となる。

 4つ目は省電力機能の拡張だ。Opteron 6100にはIstanbul世代で実装されていなかったC1E(CPUがスリープモードにあるときの電力を減らす機能)が実装されたほか、「AMD Cool Speed Technology」と呼ばれる省電力機能が実装されており、温度センサーで温度が限界を迎えたと判断したとき、プロセッサのPステートをより低い段階へと強制的に移行させる機能だ。これらの機能により、プロセッサの電力効率を前世代に比べて高めている。

 Opteron 6100には以下のようなSKUが用意されている。

【表2】Opteron 6100のSKU
モデルナンバーコア数コアクロック周波数ACPノースブリッジクロック周波数千個ロット時価格(ドル)
6176SE122.3GHz105W1.8GHz1,386
6174122.2GHz80W1.8GHz1,165
6172122.1GHz80W1.8GHz989
6168121.9GHz80W1.8GHz744
613682.4GHz80W1.8GHz744
613482.3GHz80W1.8GHz523
612882GHz80W1.8GHz263
6164 HE121.7GHz65W1.8GHz744
6128 HE82GHz65W1.8GHz523
6124 HE81.8GHz65W1.8GHz455

Opteron 6100のスペック従来のDirect Connect Architecture 1.0では、4P時に1つの円のように接続されていた
新しいDirect Connect Architecture 2.0では、4P時に接続するレーンが増えることで通信速度などが大幅に向上しているOpteron 6100/4100では新しい省電力機能が実装されている

●1P/2P環境に対応する6/4コアのOpteron 4100シリーズ・プロセッサ

 Opteron 4100は従来Opteron 1300シリーズ(開発コードネーム、Suzuka)の後継と位置づけられる製品だが、Opteron 1300シリーズが1P向けとされていたのに対して、Opteron 4100は2Pもカバーする製品となっている点が大きな違いになる。AMDではOpteron 4100シリーズを、1Pないしは2Pで、かつ省電力や低コスト向けのソリューションと位置づけている。

 Opteron 4100は6つないしは4つのコアを備えている。4コアは6コアと共通のダイで、その技術的背景はOpteron 6100と同じく歩留まりのためこうした構成が採用されているのだと考えることができる。メモリはSuzukaと同じくDDR3の2チャネルだが、新しくLV-DDR3に対応してメモリの消費電力を下げることが可能になっている。

 Hyper Transportリンクに関しても、Suzukaでは1x16構成となっていたが、Opteron 4100では2x16構成になっており、前述の通り最大で2Pまで対応可能となっている。また、上位モデルのOpteron 6100と同じようにC1EやAMD Cool Speed technologyにも対応しており、省電力機能の充実が図られている。

 Opteron 4100のSKU構成は以下のようになっている

【表3】Opteron 4100のSKU
モデルナンバーコア数コアクロック周波数ノースブリッジクロック周波数
418662.9GHz2.2GHz
418462.8GHz2.2GHz
418062.6Ghz2.2GHz
413042.6GHz2.2GHz
412242.2GHz2.2GHz
4176 HE62.4GHz2.2GHz
4174 HE62.3GHz2.2GHz
4170 HE62.1GHz2.2GHz
4164 EE61.8GHz1.8GHz
4162 EE61.7GHz1.8GHz

Opteron 4100の概要Opteron 4100では従来製品に比べて消費電力が削減されている

●プラットフォームはMaranello、San Marino、Adelaide
AMDのサーバープラットフォームロードマップ

 AMDはOpteron 6100、Opteron 4100を利用するプラットフォームとして、「Maranello」(マラネロ)をOpteron 6100向けに、「San Marino」(サンマリノ)と「Adelaide」(アデレード)をOpteron 4100向けに用意する。

 MaranelloはSocket G34で、4Pないし2P向けのソリューションとして用意され、すでにAMDが市場に投入済みの「AMD SR56x0」(AMD SR5690/SR5670/SR5650)+「AMD SP5100」チップセットと共にプラットフォームを構成する。

 San MarinoとAdelaideはSocket C32で、2Pないしは1Pがターゲットになっており、やはりAMD SR56x0+AMD SP5100チップセットと組み合わせて利用できる。

 どちらのプラットフォームもすでにAMDが市場に投入済みのチップセットを利用するが、CPUソケットが従来製品のSocket Fから変更されることになるためマザーボードそのものの互換性はない。ただし、BIOS、API、ドライバレベルでは互換性が存在するため、マザーボードベンダーは新プラットフォームの開発期間を短縮することができるとAMDでは説明している。実際、マザーボードベンダーのSuper Microは、3月の上旬にドイツで行なわれたCeBITにおいて、Socket G34およびSocket C32に対応したマザーボードを展示しており、実際に動作する様子も公開していた。

 いずれのプラットフォームも将来のアップグレードが意識されており、2011年に登場する予定の新アーキテクチャ「Bulldozer」コアに基づく16/12コアの「Interlagos」(インテルラゴス)、8/6コアの「Valencia」(バレンシア)との互換性も確保される。プラットフォームレベルでの互換性が確保されており、基本的にはBIOSアップデートなどでそのまま利用できる見通しだ。

●性能、価格性能比、消費電力性能比でIntel Westmereを大きく引き離す

 AMDサーバー・ワークステーション部門 マーケティングディレクターのジョン・フリー氏は、AMD Opteron 6100の性能を公開。フリー氏は「競合との性能比較を公開できることを長い間待ち望んでいたが、今日公開できるようになったことをうれしく思っている。我々のOpteron 6174はWestmereコアのXeon X5680に比べて整数演算で若干上回り、浮動小数点演算でも上回っている。かつ価格は500ドル近く安価で、消費電力も50W近くも低い」と述べ、Opteron 6100がIntelが発表したばかりのWestmereコアのXeonに比べて性能が同等以上で、消費電力が低く、かつ価格も安いということを強調した。

 さらに「我々の4ソケット用の製品は競合の製品に比べて消費電力が低く、ワット性能で大きく上回っている。これは4ソケットサーバーに革命的な変化をもたらすものだ」(フリー氏)と述べ、価格性能比や消費電力性能比で競合製品を大きく上回っているとアピールした。

2ソケットにおける従来製品との性能比較2ソケットにおける従来製品およびIntel製品との性能比較。Opteron 6174とWestmereコアのXeon X5680の比較で、消費電力/価格とも低いのに性能は上回っている
4ソケットサーバーでの性能比較。消費電力および価格性能比でXeonを大きく上回っている4ソケットにおける消費電力性能比の比較

●HP、Dell、Acer、Crayなどから搭載サーバーが登場する予定

 AMDによれば、今回のOpteron 6100/4100に対応した製品はHP、Dell、Crayなどの既存のOEMベンダーに採用されるほか、新たにサーバービジネスに本格的に参入するAcerが採用する予定であることを明らかにした。さらに、それ以外にも25もの大手OEMメーカーで採用される予定だという。マザーボードに関しても複数のベンダーからリリースされる予定だ。

CPUソケットは変更されるものの、BIOSやドライバなどはそのまま利用可能OEMメーカーやソフトウェアパートナー。新たにサーバービジネスに本格的に参入するAcerの名前が目につく
Super Microの4P構成のSocket G34マザーボード「H8QG6-F」。ソケットあたり4チャネル/8スロットのメモリソケットがあることが確認できるSuper Microの2P構成のSocket G34マザーボード「H8DGG-QF」。ブレード用

(2010年 3月 29日)

[Reported by 笠原 一輝]