ジャストシステム創業の浮川夫妻が新会社をスタート
~年内にも個人向けウェブアプリケーションを投入か

MetaMojiのロゴ

1月14日 開催



 ジャストシステムの創業者である浮川和宣氏、浮川初子氏が設立した株式会社MetaMoJi(メタモジ)が、事業を本格スタートするのにあわせ、1月14日、都内で記者会見を行なった。

浮川和宣氏

 同社はすでに2009年10月30日に設立されており、12月11日に事業開始をリリースしていた。MetaMoJiの代表取締役社長の浮川和宣氏は、「MetaMoJiは、技術を核としたビジネスインキュベーション」と位置づけ、コア技術の開発、ビジネスインキュベーション、投資管理/事業体開発、特許などの知財管理機能などを有したテクノロジーホールディングカンパニーを目指す一方、事業化の目処がついた技術やサービスについては、他社と協業しながら、複数の事業会社を組成し、5年後に1~2社のIPOを目指す。

 資本金は1,000万円。代表取締役社長には浮川和宣氏が、代表取締役専務には浮川初子氏が就任。従業員数は16人でスタートする。16人は全員がジャストシステムの出身者で、研究部門の出身者が大半だという。本社を東京都港区六本木に置き、そのほか、福岡にも研究、開発拠点を設置する。

 浮川和宣社長は、「好きな研究開発に取り組んでいきたいと思っていても、多くの人に資金を出してもらうと、わかってもらえない場合もある。MetaMoJiは上場はせずに、将来に渡ってプライベートカンパニーの立場を維持する」と、MetaMoJiの立場を示す一方、「具体的な売り上げ計画にはついては、まだ明確にできる段階にない。また、社員数に拡大についても同様。そして、具体的な成果についてもお話しできる段階にない。それにも関わらず、今回会見を開いたのは、これまでお世話になった方々に、スタートの段階から見ていただきたいとの思いによるもの」などとして、具体的な事業計画については触れなかった。

 現時点では、ジャストシステムから譲渡を受けた、XBRL(eXtensible Business Reporting Language)に関する技術および関連製品、オントロジーに関する研究開発と基本オントロジー辞書およびアプリケーション開発、大阪大学産業科学研究所溝口理一郎教授との共同研究である機能オントロジーに関する研究と機能オントロジー構築システムの開発、XMLサーバアプリケーション開発環境「PXL」の開発が具体的な事業といえるが、さらに、浮川和宣社長が持つ特許技術などを活用した製品、サービスの創出を目指すことになる。

 「MetaMoJiとしての最初の製品は、XBRLの新たなバージョンの提供になるだろう。また、年内に向けて、個人向けのウェブアプリケーションといえるものを提供したい。パッケージソフトやダウンロード型のアプリケーションをやる考えはない。PCに留まらず、さまざまなデバイスに対応する形で展開していきたい」とした。

 新会社は、ジャストシステムから53件の特許を取得。浮川社長が持つ24件の特許も活用する考え。「特許関連サイトでは、私個人が持つ特許に対して最上位の評価が出ている。これは全体のわずか1%の人だけが評価されているもの。10年前には、製品やサービスとして形にすることができない特許だったが、今の時代になって、それらの特許が意味を持ちはじめている。補完関係にある他社から、協業について声をかけてもらっている案件もある」という。

 また、収益については、「具体的な収益モデルが決まっているわけではないが、ソフトは無料で提供するものだという議論も社内で行なわれており、広告モデルのようなものも視野に入れている。研究成果をOEMの形で提供することは考えておらず、技術が『卵』か『ひよこ』の段階まで育て、それ以降は別の会社として、さらに育てる形にしていく。また、これまでにはない新たな収益モデルを提案することも必要ではないか」などとした。

会社の目標事業構想目指すアプリケーション

浮川初子氏

 一方、技術分野を担当する浮川初子専務は、MetaMoJiの技術方針として、「自社独自の高度な技術の研究開発」、「XMLなどのオープンな標準技術の採用」、「クラウドなど、最先端のコンピューティング環境上でのサービス提供」、「国内外の優秀なプレーヤーとのパートナリング」、「先進技術の特許、知財の積極的な活用」を掲げる。なかでも、XML技術を活用した広範な技術の研究開発に力を注ぐ姿勢を示した。

 「これまでのアプリケーション開発環境は、やりたいことを求める専門家の意見をIT技術者が聞き、それをプログラムする仕組みとなっている。結果として、IT技術者のノウハウを活用しなくてはならなかった。だが、MetaMoJiが目指すアプリケーション開発環境は、IT技術者に加え、専門家もアプリケーションが提供でき、一般ユーザーも部分的にアプリケーション開発に参加できるというもの。一般の人がもどかしさを感じていたものを解決し、ITでしたいことと、できることの垣根を取り払いたい」などと語った。

 浮川和宣社長も、これを補足するように、「プログラムを書くITエンジニア数は、国内で50万人程度であり、5,000万人が仕事に従事しているなかでは遙かに少ない。私は、プログラムが書けることの素晴らしさを身を持って体験しているが、多くの人がそれを理解しているわけではなく、また、アプリケーションとして実現してもらいたいとしても、それを頼める人が周りにおらず、実現してもらえない。より多くの人が、ITプロセスやアプリケーションを構築できる革新的技術を開発し、それを相互に利用できる知的サービスモデルの構築により、IT利用を大幅に拡大したい」と語る。

技術方針

 一方、浮川和宣社長は、「ジャストシステムを約30年前に創業し、長年に渡りコンピュータに携わりながら、日々、新たな可能性を考えてきた立場からすれば、ITの可能性はまだまだあると考えている。アイデアも湯水のように涌いてくる。10~20年後のIT利用者が、あの時に、あの技術や製品を開発してくれたからこそ、今これが実現できて助かっている、といわれるようなものを研究開発していきたい。そこにMetaMoJiの役割がある」などと語った。

 また、現在60歳となっている浮川社長は、「30代になるのにあわせて、ジャストシステムを創業した。60歳になって、これからできることは何かを考えた時、ジャストシステムとは違った切り口で、ゼロからといってもいいスタートを切り、新たなことをやろうと考えた。ITをもっとうまく活用して、世の中や人、モノをもっと知ることができるような世界を実現したい。70歳までは少なくともやっていく。夢を共有してくれる人がいれば、もっとやり続けたい」と述べた。

(2010年 1月 15日)

[Reported by 大河原 克行]