ジャンフランコ・ランチCEO兼社長 |
台湾Acer Inc.(以下Acer)のCEO兼社長である、ジャンフランコ・ランチ氏が初来日し、会見を行なった。
ランチ氏は、'55年にイタリアで生まれ、Texas Instruments(TI)に長く務めた。'97年にAcer Italyに転じ、欧州市場で好調な業績を上げて、2005年にAcer本社の社長に就任した。
ランチ氏は、AcerがDellを抜いて世界シェアで2位になったことから語り始め、特に、ノートPCの比率が高く、スマートフォンにも参入するなど、Acerがモバイルの会社であることを、繰り返し強調した。
市場別で見ると、EMEA(欧州、中東、アフリカ)の比率が高いことが注目される。この市場では、PC全体でもノートPC単体でもナンバーワンだ。地域別の出荷比率では2009年第3四半期でEMEAの比率が58%に達しており、2位のアメリカ全体の2倍以上となっている。
意外なことにアジアではPC全体で4位、ノートPCで3位に留まっている。また、最大の市場である米国でも全体/ノートとも3位に留まっている。ランチ氏は米国市場について「HPのような強力なローカルプレーヤーがいるため」と語った。世界シェア1位のHPを米国ローカル扱いするところに、上り坂である企業の勢いと、EMEA市場への自信を感じた。
国別シェアも公開され、イタリアではノートPCの47.9%、PC全体でも42.3%という圧倒的なシェアを確保している。BRIC市場でも好調で、ほぼ3位以内を確保しているが、中国ではノートが5位、全体が6位と苦戦している。
ランチ氏は、Acerの現状に話を戻した。従業員数は7,000人と比較的少なめだ。70カ国で9万件の販売店を確保しているという。2008年は、800万台のデスクトップPC、2,000万台のノートPC、500万台のネットブックなどを出荷したという。
また、製品ジャンルとしては、モバイルとコンシューマが基軸になっており、企業向けは中小企業向け(スモールビジネス)までとなっている。この部分について、質疑応答では「今後コンシューマ市場が成長し、エンタープライズ市場の比率は下がると見ている。エンタープライズ市場に参入する意志はない。コンシューマと教育市場に注力していく」と語った。また、デスクトップPCについては「デスクトップPCがなくなるという人もいるが、なくなることはない」と語った。
また、モバイルについては、常時接続できることの重要さを強調した。とくにバッテリ寿命は10時間~12時間が必要になるだろうと語った。また、CULV(エイサーではLight Noteと呼ぶ)などのシン&ライトPCの分野に注目しているという。現在、スマートフォンなどを中心に、デザインの重要性は高まっており、技術力だけではなくデザイン力が必須となるだろうと語った。
エイサーの特徴であるブランド戦略については、トレンディで先端的なPackard BellとGateway、価格訴求でバリューなeMachines、コンテンポラリーなAcerという使い分けが市場を拡大するとした。なお、Packerd Bellは欧州がターゲットとなっている。
Acerはブランド訴求のため、フェラーリF1やMoto GPでのV.ロッシへのスポンサード活動をおこなっている。先日発表された、オリンピックモデルも公開された。
バッテリ寿命、軽量、デザインが重要 | モバイル端末の製品区分 | オリンピックモデル |
フェラーリへのスポンサード活動 | 質疑応答に答えるランチ氏 |
会場では何台かのスマートフォンも展示された。スマートフォン市場におけるAcerの強みについては「端末メーカーは音声端末から入っているので、データの扱いの重要性がおろそかになっている。AcerはPC市場から転じたため、データの活用という面で利点がある」と述べた。とくにスマートフォンやWebデバイスでは、ユーザーインターフェイスが重要であるという。また、マルチタッチ、クラウドとの同期なども、注目される要素だと語った。日本市場については、キャリアが中心で、SIMフリー端末がほとんど流通していないことから、発売の有無や時期については未定とした。
質疑応答では、GoogleのChrome OSについて、「OSは開発も困難だが、維持していくことはさらに難しい。Googleがそれをやり遂げれば意味のあることだろう。現時点ではラボで研究している段階であり、採用するともしないとこ言えない」と述べた。
日本国内市場については、「2011年にトップ5に入る」という従来の目標を繰り返したが、「2012年には、少なくともモバイルに関しては、ナンバー3に入っているのではないか」と語った。
国内市場から見えるAcerは、ネットブックと低価格デスクトップPCのメーカーというイメージが強かったのだが、今回の会見により、思っていた地上にノートPCとスマートフォンを合わせたモバイル市場に力を入れていることが分かった。また、地域別ではEMIA市場での強さが印象的だ。今後、北京にスマートフォン開発の拠点を設けるなどアジア市場にも力を入れていくと語っており、日本市場でもノートPCを中心に、より強力な製品展開が図られると思われる。
(2009年 11月 26日)
[Reported by 伊達 浩二]