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東工大、IoT向けCPUアーキテクチャ「SubRISC+」。エネルギー効率3.8倍

SubRISC+のチップレイアウト、およびプロトタイプのLSI

 東京工業大学 工学院 情報通信系の原祐子准教授らは19日、小型/省電力なCPUアーキテクチャ「SubRISC+」を設計したと発表した。

 小型エッジ端末に必要な計算を実用的な時間で処理するための機能に限定し、小型化と省電力化を両立させた。65nm CMOSプロセスを用いてLSIを製造しても1×1mmの小型を実現し、77μWという低消費電力を達成。異常検出やデータ探索などの実用的なアプリケーションをリアルタイム処理できるとしている。

 IoTの展開ではエッジコンピューティングが必要不可欠だが、既存のCPUは消費電力の観点から展開は難しい。これは、多様化するアプリケーションに応えるために、命令数が必要以上に存在するためであるとしており、たとえば32bitの組み込み向けで、きわめて小規模なものでさえ、約50種類の命令を取り扱う(Cortex-M0は60種類、RISC-V Micro-riscyは47種類)。そのため回路面積と消費電力が増大する。

既存プロセッサとの比較

 SubRISC+では、データからの異常検出やデータ探索をする軽量アルゴリズムをリアルタイムに処理し、警告などのかぎられたデータのみ送信する用途を想定。命令数を4つに限定することで小型/低消費電力化を図った。一方でチューリング完全であり、これらの用途以外の汎用プログラムも処理できるとしている。

SubRISC+のアーキテクチャ

 ソフトウェア例として、加速度データからてんかんの発作をリアルタイムに検出可能な軽量アルゴリズムを実装し、実用性を検証したところ、動作周波数50MHzを想定したシミュレーションで、データのサンプリング速度より高速に異常検出でき、かつ電力は131.1μWであったという。

軽量アルゴリズム

 Armの商用向けCPUのCortex-M0で同じ処理を行なった場合と比べて、1.4倍高速で、なおかつ電力効率は2.7倍、エネルギー効率は3.8倍であったとする。

 実際にアーキテクチャを65nmプロセスを用いて実装したところ、LSIの総サイズは1×1mmと小型であり、5MHz(ヘルスケアの異常検出ではリアルタイム処理を十分確保できる周波数)で駆動させた場合の消費電力はわずか77μWであった。これは、LR44ボタン電池で約100日連続稼働できる試算で、電力効率はきわめて高いという。

 今後はプロトタイプのサンプル配布や展示会の出展を検討しているほか、SubRISC+の拡張で、より幅広い応用展開を可能にするチップの試作と実用化を目指すとしている。