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英マンチェスター大、脳を模した世界最大の“ニューロモーフィック”スパコンを稼働開始

SpiNNakerマシン

 英マンチェスター大学は11月2日(現地時間)、世界最大規模となる、脳の構造を模した“ニューロモーフィック”スーパーコンピュータのマシンの稼働開始を発表した。

 「ニューロモーフィック」とは、動物の脳の働きを模したものを指す。ニューロン(神経細胞)は神経系を構成する細胞で、生物の脳を構成する基本要素となる。

 このニューロンは、おもに純粋な電気化学的エネルギーである「スパイク」を放出することによって情報を伝達しており、ニューロモーフィックコンピューティングは、電子回路を含む大規模なコンピュータシステムで、スパイクによる情報伝達を機械内で模倣するという仕組み。

 今回マンチェスター大で稼働したスパコンは、「Spiking Neural Network Architecture (SpiNNaker)」と称する独自プロセッサを100万基搭載。同プロセッサは、1基あたり1億個のトランジスタを備え、秒間2億回の処理が可能となっている。

 同大学によれば、地球上でもっとも大規模にニューロンをリアルタイムにモデル化できるマシンであるという。

 構築開始は2006年で、資金として1,500万ポンド(約22億円)を調達。構想から20年が経過した2018年11月にようやく稼働開始に至るという、大規模なプロジェクトとなる。

 SpiNNakerでは、標準のネットワークを介して、A点からB点へ大量の情報を送信する従来のコンピュータと異なり、脳の大規模な並列通信アーキテクチャを模倣し、数千の小さな情報を、数千の異なる目的地に同時に送信するという。

 ネズミの脳のニューロン数は約1億個で、人間の脳は1,000億個ものニューロンを備える。人の脳の約1,000億個のニューロンは、約1,000兆個のシナプスを介して高度かつ相互に接続されているため、極めて複雑な構造となっている。

 同プロジェクトでは最終的に、人の脳の1%の規模に相当するニューロン(10億個)をリアルタイムでモデル化することを目指している。

 すでに同大学では、感覚からの情報を受け取って処理する、脳皮質部分の8万ニューロンのシミュレートなど、分離された脳ネットワークの範囲内で、高レベルなリアルタイム処理のシミュレーションにSpiNNakerを活用しているという。