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数千ノードのメッシュネットワークを構築できる「Bluetooth mesh」
~大規模デバイスネットワークの基礎を目指す
2017年9月8日 14:50
Bluetooth Special Interest Group (Bluetooth SIG)は8日、Bluetoothでメッシュネットワークを構築できる「Bluetooth mesh」についての記者会見を開催した。
Bluetooth meshは、7月に発表された新たなBluetoothの機能。
会見にはBluetooth SIG マーケティング バイスプレジデントのケン・コルドラップ氏、株式会社WHERE 代表取締役の丸田一氏、東芝デバイス&ストレージ株式会社 ミックスドシグナルIC事業部 ミックスドシグナルIC応用技術部 ワイヤレス応用技術担当 参事の足立克己氏らが登壇した。
コルドラップ氏は、まずBluetoothには、一般によく知られている「Bluetooth接続」と言える、1:1(1対1)で継続的な接続を行なうためのBasic Rate(BR)/Enhanced Data Rate(EDR)があると紹介。
これはオーディオストリーミングをターゲットにしたもので、2016年で年間6.47億台のデバイスが出荷されたという。
2022年には10億台に市場が拡大すると語り、今後Bluetoothワイヤレスオーディオでは、Bluetooth Low Energyへの対応、音質の向上、オーディオのマルチキャスト/ブロードキャスト対応が計画されているとした。
つづくBluetooth Low Energy (以下LE)は、短距離の1:1接続を低消費電力で実現するもので、コネクテッドデバイス市場向けであると説明。
Bluetoothの中でも市場拡大が著しく、2016年で年間4.96億台、2022年には15億台まで拡大するとの見込みを示し、新たに策定されたBluetooth 5では、通信距離を4倍、通信速度が2倍に拡張されているとした。
LEでは1:m(1対多)のブロードキャストもサポートされている。いわゆるビーコンのことで、陳列商品の情報を表示したり、遺失物の捜索、施設内のナビゲーションなど、局所的な情報共有のためのものとなっている。
Bluetoothビーコン市場は2022年までに年間7.5億台に成長すると述べ、Bluetooth 5ではビーコン向けの新機能としてメッセージ容量を8倍に拡大し、通信距離を4倍に伸ばし、Hubの数を低減できるとした。
同氏は、今回のメインテーマとなるBluetooth meshは、前述のLEの接続形態の3つ目にあたるものだと説明。
メッシュはm:m(多対多)のネットワークで、Bluetooth meshでは大規模なデバイスネットワークを構築できるとした。
ビルオートメーションといった家庭やオフィスのスマート化の実現や、工場で無線センサーネットワークを構築すれば、いつメンテナンスを行なえば良いのかを把握したり、スケジュール外のダウンタイムの削減などに繋がるとした。資産追跡の面でも有用で、医療機関であれば機材移動が頻繁に行なわれるため、機材の管理や効率性の向上を実現できるという。
meshネットワークは市場の将来性も大きく、スマートビルディング市場に限っても、2022年には年間11億台になるとした。
メッシュネットワークを構築できる無線通信規格は多数存在するが、コルドラップ氏はBluetooth meshの優位性として、高い相互運用性を挙げた。
Bluetoothの成功は相互運用性にあったと述べ、すでに多数のベンダーで相互運用を実現していることをアピールし、Bluetooth meshでも同様であると語った。無線通信からアプリ層まですべてを定義しフルスタックソリューションとすることで、高い相互運用性を実現するという。
同氏は、相互運用性に関連し、Bluetooth meshはBluetooth LE 4.0以上であれば動作できる点を挙げ、既存のスマートフォンなどのデバイスが簡単に組み込めると述べた。
また産業グレードのソリューションとして提供される点も優位性の1つとして挙げ、単一障害点を持たない自己回復ネットワークであるという信頼性、数千単位のノードでも産業グレードの性能を発揮できるという拡張性、既知の攻撃や、ユーザーが廃棄した機器を攻撃者が悪用する「Trash Can Attack(ゴミ箱攻撃)」などへの対策など、セキュリティの高さによって、産業シーンで求められる要件を満たしているとした。
また付加価値として、資産追跡やナビゲーションといった追加サービスのサポートや、市場投入までの時間を短縮できる成熟したエコシステム、コンシューマにおける高いブランド認知度といった点をアピールした。
WHEREの丸田氏は、同社のメッシュ型ビーコン「EXBeacon」と、導入事例などを紹介。Bleutooth meshが、通信規格のベースになると予想していると語った。
東芝デバイス&ストレージの足立氏は、Bleutooth LEで低消費電流/電力が達成され、IoTセンサーや制御といったこれまで使えなかった範囲に適用できるようになったと述べ、その先として1:1からmeshへとトポロジーの拡張が行なわれており、また新たな用途や分野が広がっているとした。
しかし、Bluetoothとしてのロバスト性、低消費電力、低コストというポイントは変わっていないと述べ、企業に対して、Bluetooth SIGのメンバー企業となり、IoTセンサー/コントロールを共に日本発で推進していきたいと呼びかけた。