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利益はトントン。明朗会計なバッファローのHDD復旧事業
2017年6月2日 13:50
株式会社バッファローは、2017年5月1日から、HDDやSSD、USBメモリ、SDカードなどのデータ復旧事業を開始。そのサービス拠点である東京・新川のバッファロー東京支店内に新設した「データ復旧センター」を公開した。
同社は、持ち株会社であるメルコホールディングスが、データ復旧事業のアドバンスデザインを子会社化したことで同事業に参入。
「外付けHDD国内ナンバーワンシェアを持つバッファローが、HDDの製造、販売だけでなく、データ復旧から消去、故障機器の廃棄までのすべてをメルコグループ内で完結できる体制を整えた。安心して製品を利用してもらうとともに、HDDの『ゆりかごから墓場まで』を担う総合的なサービスを展開できる」(メルコホールディングス 斉木邦明専務取締役)としている。
データ復旧センターは、東京・新川、名古屋・大須、大阪・新大阪の3カ所に開設。製品の状態と復旧の可能性を、その場ですぐに無料診断し、対象製品と障害レベルに応じた一律固定料金を設定。費用見積りの事前提示を行なうのが特徴だ。
データ部の破損が酷かったり、重複障害により、復旧が困難で、高度な設備と技術が必要な重度レベルの障害は別途見積りを行なう。また、自然故障のほか、誤って消去してしまったデータの復旧にも対応する。
当面はバッファロー製品を対象にサービスを実施し、過去に発売した製品すべてに対応する。軽度論理障害によるデータ損失については、製品保証期間内であれば、登録ユーザーには無償で対応する。論理障害の軽度と中度、物理障害の軽度はデータ復旧センターで対応。重度が高いデータ復旧作業は、神奈川県川崎のアドバンスデザインにおいて作業を行なうことになる。復旧作業は1~3営業日で行うことができるという。
将来的には、他社製品も含めて、すべてのストレージ製品に対してサービスを展開する予定だという。
また、壊れたHDDの廃棄サービスも開始。クラウドを活用した故障予測サービスを2017年度中に開始する予定だ。
3カ所のすべてのデータ復旧センターには、サービスマンが常駐。受付時間は、平日の9時30分~17時まで。今後、各地に拠点を展開する計画も明らかにした。
斉木邦明専務取締役は、「バッファローは、Windows 98のときに国内トップシェアを獲得したが、それから約20年間、トップメーカーでありながら、データ復旧からは目を背け放置してきた。この間、業界の成長が著しく、データ復旧まで手が回らず、ユーザーの責任のもとにバックアップを取ってほしいと言い続けてきた。これは、経営理念の1つである顧客志向を忘れていたことでもあり、反省点である。
新たに提供するデータ復旧ビジネスは、付加価値としてユーザーに喜んでもらうものであり、利益はトントンで良い。HDDのトータルビジネスで利益が出れば良いと考えている。これによって、バッファローのHDD事業を拡大したい」などと述べた。
また、バッファロー データストレージソリューション事業部長の和田学取締役は、「大切なのはHDDではなく、中のデータである。我々が事業を開始したPCの黎明期は、文書や表計算のデータであったが、今では写真や音楽などのすべてのデータがデジタル化されており、かつてのフィルムやカセットテープの代わりとなっている。情報がかけがえのない情報に変わってきているのは明らかだ。
また、HDDの大容量化が進む一方、3TBのHDDを一杯にするのは難しく、HDDを買い換えたり、買い増したりするタイミングが減り、壊れてしまうケースが増えている。調査によると、4年を超えるとHDDの正常稼働率が大きく下がり、6年目には、50%しか生き残らないという結果が出ている。壊れないストレージデバイスはない。データはメモリであり、思い出である。データを失って、悲しむ人を1人でも減らしたいと考えている」とした。
一方で、データ復旧依頼件数は増加しているが、そのうちの約2割のユーザーがデータ復旧ができていない。さらにデータ復旧サービスを知らずにデータを捨ててしまっている人たちは、依頼件数の2~3倍もいることを示しながら、「データ復旧を依頼する際のユーザーの不安は、価格が不均一であることや、プライバシーに関する不安があること、そして、復旧が成功するのか不安という3つ。バッファローでは、データ復旧事業で22年間の実績を持ち、草分け的存在であるアドバンスデザインを買収することで、ユーザーが安心して利用できるサービスを提供することができる」とした。
論理障害の軽度の場合、1ドライブのデータ復旧価格は3万円。データ容量は関係ない。
2017年5月からサービスを開始しており、これまでに数百件の受付があり、データ復旧が完了した件数は70~80件に達している。受付のうち、約3割が直接データ復旧センターに壊れたHDDを持ち込んでおり、とくに法人ユーザーがスピードと安心感の観点から持ち込んでいるという。
また、「これまでは価格が高いといった不安があり、成約率が低かったが、バッファローのデータ復旧サービスは価格が明確であるといったことから、成約率は約6割に達している。これは従来サービスの倍以上になっている」(斉木邦明専務取締役)とした。
またバッファローでは、今後業界団体などに働きかけを行ない、技術やサービスを標準化する考えも示した。
一方、アドバンスデザイン 本田正会長は、同社がデータ復旧作業に取り組んできた歴史に触れ、「かつて無線のアンテナの設計、製造、販売を行なう会社を経営していた。この世界は実験をして、改良を加えるというものであったが、その後、コンピュータによってシミュレーションしてアンテナを開発できるようになった。これを日本で使用したのは私が最初であった。
だが、その際に、PCに蓄積していた3年分のデータをすべて失ってしまった。これをなんとしてでも取り戻したいと思い調べたところ、米国で28社、欧州で1社のデータ復旧会社があることがわかり、直接訪問した。その結果、データ復旧において、本当に高い技術を持った会社は1割しかないということがわかり、そのうちの1社であるデータリカバリーラボ(後のアクションフロント。その後Seagateに買収され、シーゲイトリカバリーサービスに変更)の技術を活用し、日本でサービスを開始した。
当初はかなり高価であり、それを恐る恐る見積書として出してみたが、それでも『ありがとう』と言われた。私は医者みたいなビジネスができることに感謝した。長年に渡って意識してきたことは、人よりも良い技術を持たないと人の役に立たないということ。良い技術があれば、それを取り込んで1つでも多く直していくように努力してきた」と述べた。
また、「コンピュータは生活になくてはならないものになってきている。個人の場合には、10年間、蓄積した写真が無くなってしまうことが起こったり、法人の場合には、フォルダーが1つ無くなっても、会社が存続に関わることもある。ストレージは買えば元に戻るが、データは元には戻らない。それを直せることが、このビジネスの良いところである」とした。
さらに、「バッファローは、優秀なエンジニアを登用して、本気でデータ復旧サービスビジネスを始める。データを守り続けることで、バッファローのストレージ製品とともに信頼を得ることができると信じている。アドバンスデザインは、熟練の、古参の、口うるさい立場でデータ復旧を手助けしたい。難しいものにもチャレンジしていく立場は変わらない」と述べた。
なお、斉木邦明専務取締役は、HDD利用の約半分がテレビの録画で使用されている点に触れ、「コピーワンスの契約の関係上、これはデータ復旧の対象にはならない。こうした規約があるのは、日本だけであり、この見直しも働きかけたい」などとした。
以下、公開された東京・新川の「データ復旧センター」の様子を紹介する。