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メリーランド大学、炭化木材を用いたリチウムイオン電池負極を開発

~大容量を実現しながら安全性/寿命が向上

 米メリーランド大学は3月31日(現地時間)、大容量/高安全性/長寿命な炭化木材およびリチウム金属で作られたリチウムイオン電池の負極を開発したと発表した。

 リチウムイオン電池は、リチウムイオンの正極と負極間の移動を利用した二次電池である。充電時はリチウムイオンが正極から負極に移動し、放電時はリチウムイオンが負極から正極に移動する。

 現在は一般的に、正極にはリチウム金属酸化物、負極には炭素系素材が用いられているが、大容量化のため(エネルギー密度を高めるため)には、リチウム金属を負極に用いることが望ましい。しかしこのような構造では、負極表面にリチウムの樹枝結晶が発生してしまい、性能低下したり、セパレータを貫通して内部短絡に繋がってしまうなど、安全性に課題があった。

 そこでメリーランド大学のZhang Ying博士は、木材が持つチャネル構造(直線の管がたくさん並んだ構造で、もともとは水や養分の輸送に利用)に着目し、バルクのリチウム金属の代わりに、炭化木材の中にリチウム金属を貯蔵した。木材の管は“ホテル”の役割を果たし、リチウム金属に多くの独立した“部屋”を提供する。それぞれの部屋に収容するリチウム金属は増減できるが、全体の構造が破壊されたりすることはない。

 バルクなリチウム金属負極を用いた電池は、リチウムイオンの出入り口が1つしかないため、リチウムイオンの流れを管理できず、充放電に耐えきれず破裂し爆発に至る。しかし炭化木材を用いたこの負極では、出入り口がたくさん用意されることになり、3mA/平方cmという高い電力密度に耐えられ。このため充放電の速度が速い場合でも安全に動作する。そして、寿命に影響を及ぼす枝状のリチウムの成長を抑制する効果も得られるという。

 また、木材であるため、再利用可能なバッテリ部材の開発も期待される。

 この研究は、3月20日のNational Academy of Sciencesで「High-capacity, low-tortuosity and channel-guided lithium metal anode」という論文名にて発表された。