山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ

Windows 7 PC、その節電とバックアップ



 コンピュータを守るというのは、コンピュータシステムに格納されたデータを守るということだ。器としてのコンピュータはいくらでも代替ができるが、その内容としてのデータにはかけがえのないものも多い。だが、内容を守るためにも、器への被害を最小限に抑える必要はある。

●PCの省電力化で節電する

 大震災で被害に遭われた方々には心からお見舞い申し上げる。震災後、約10日間が過ぎたわけだが、この原稿を書いている今現在も、余震は続き、揺れるたびにヒヤッとさせられる。

 電力需要を抑制するために節電が求められているが、こうして作業しているPCは電源設定を「省電力」にした。スキルの高いユーザーの中には、BIOS設定でクロックを下げてさらなる節電をしている方もいるそうだが、インスタントには電源オプションを変更するだけでもかなりの貢献ができる。「省電力」は、可能な限りコンピューターのパフォーマンスを低下させ、電力の消費を抑えるモードだが、処理内容に伴って瞬間的にプロセッサの使用率が上がるので特に不便は感じない。

 Windows 7の場合、デスクトップPCでは、タスクバーの通知領域に電源のシステムアイコンが表示されない。だが、コントロールパネルの「電源オプション」を開けば、各種設定を変更することができる。

 ちなみに「省電力」設定で、PCがどのような状況になるかは詳細設定で確認できる。ここで注目しておきたいのは、次の3項目だ。

・ディスプレイの電源を切る(5分)
・コンピュータをスリープ状態にする(15分)
・ハードディスクの電源を切る(20分)

 「省電力」設定では、それぞれの要素に対して()内の時間が設定される。これは、PCの使い方に応じてもっと短くするなり、多少長めにするなりして、省電力しながらも、使い勝手を大きく損なわないようにしておきたい。

電源オプションで、プランを「省電力」に設定
省電力プランでは5分でディスプレイが切れ、15分でスリープに入る
HDDの電源を切るまでの時間は短い方が安心かもしれない

●システムから切り離されたバックアップを持とう

 PCの設定を変更し、省電力に努める一方で、万が一の場合に備えてバックアップもきちんとしておこう。PCそのものはどうにでもなるだろうけれど、データだけはかけがえがないからだ。手元の環境では、複数台のノートPCはWindows 7の同期ファイルの機能を使ってデータファイルを同期させているので、二重、三重にバックアップしたのと同じ効果が得られている。現役で日常的に使っているどのノートPCを持ち出しても大丈夫というのは安心だ。

 ただ、1TB近い容量に膨れあがった写真のデータについては、ノートPCのストレージに格納しておくことができない。これについては、大きな変更がある度に、大容量HDDのベアドライブにバックアップをとっているのだが、今回は、そのバックアップを最新の状態にして、ドライブごと非常用のリュックサックに入れておくことにした。

 バックアップには特別なユーティリティを使っていない。Windows 7には、「robocopy」という便利なコマンドラインツールが備わっている。それを使って、以前のバックアップと現在のデータを別のHDDにミラーするだけだ。具体的には、

robocopy d:\users\syohei\pictures f:\Users\syohei\pictures /mir
pause

という2行のテキストを書き、.bat の拡張子をつけてバッチファイルとして保存、それを実行する。この場合、Dドライブのピクチャフォルダと Fドライブが同期し、同じ内容になる。最後の /mirはミラーリングを指示している。2行目のpauseは文字通り一時停止だ。Windows 7のコマンドプロンプトはバッチファイルの実行が終わると、ウィンドウが閉じてしまうので、何かトラブルがあっても気がつかない場合がある。そこで、作業後に、いったんpauseすることで、ウィンドウが閉じてしまうのを抑制しているわけだ。

 robocopy には、さまざまなオプションがあり、コマンドプロンプトで、

C:\Users\syohei>robocopy /?

とすると、ヘルプが表示される。GUIのユーティリティより使いやすい面もあるので、覚えておくと便利だ。また、マイクロソフトでは、同等の機能を持つ GUI版robocopyともいえる、「RichCopy」というユーティリティを公開している。無保証だがこれを使うのも1つの手だ。スケジュールを組んでのバックアップは、常に、ドライブを稼働可能な状態にしておく必要があるが、万が一という場合には、システムから切り離されたバックアップも有用だ。だからこそ、こういうカタチのバックアップもしておくにこしたことはない。

RichCopyユーティリティを使えばGUIでRobocopy相当のことができる。マルチスレッド対応で処理も高速だ

●連載休載のお知らせ

 というわけで、29回続いたこの連載も、Windows 7のRTMから約1年半、Service Pack 1も公開されたタイミングということで、いったんお休みさせていただくことになった。また、状況を見ながら、新しいテーマで連載を再開させていただきたい。

 震災の影響で、最後の仕上げともいうべきInternet Explorer 9の日本語版公開が延期されることになってしまったが、これについては、世の中が少し落ち着いたところで公開されるのを心待ちにしたい。

 ご愛読ありがとうございました。今の自分にできることで、それぞれが精一杯がんばって、日本を再起動しましょう。