西川和久の不定期コラム
ASRock「N3150B-ITX」
~BraswellなCeleronを搭載した約1万円のマザーボード
(2015/6/9 06:00)
Bay Trailの後継となるBraswellのCeleronを搭載したASRock製のマザーボードが、6月6日より発売開始となった。まだ発売していないものも含めて仕様の違いで7種類ある中、Mini-ITXフォームファクタでCeleron N3150を搭載した「N3150B-ITX」を入手したので、試用レポートをお届けしたい。
ファンレスでBraswellなMini-ITXマザー
冒頭に7種類と書いたが、6月6日実際に販売開始となったのは、Celeron N3150を搭載したmicroATXマザー「N3150M」とMini-ITXマザー「N3150B-ITX」、そしてCeleron N3050を搭載したMini-ITXマザー「N3050B-ITX」の3種類だけだ。Celeron N3050を搭載したmicroATXマザー「N3050M」は直前まで同日販売予定だったが、その後6月13日に延期となっている。最上位のPentium N3700を搭載したモデルは、microATX/Mini-ITXマザーともに6月下旬の雰囲気だ。
また、「N3150B-ITX」の“B”が無いモデルも存在し、主な違いは、Bモデルがディスプレイ出力としてミニD-Sub15ピン/HDMIの2系統しか備えないのに対し、無印はミニD-Sub15ピン/HDMI/DVI/DisplayPortと2つ増えた上位モデルとなる点。ただ今のところ販売は未定となっている。
今回入手したのは、Celeron N3150を搭載したMini-ITXマザー「N3150B-ITX」。主な仕様は以下の通り。
【表】ASRock「N3150B-ITX」の仕様 | |
---|---|
SoC | Celeron N3150(4コア4スレッド、クロック1.6GHz/2.08GHz、キャッシュ2MB、SDP 4W/TDP 6W)、ファンレス |
メモリ | DDR3/DDR3L 1600 SO-DIMM×2、最大16GB |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics、ミニD-Sub15ピン/HDMI |
インターフェイス | PS/2×2、SATA3×2、USB 3.0×4(内背面x2)、USB 2.0×6(内背面x2)、Gigabit Ethernet、パラレルポート×1、シリアルポート×1、TPMモジュールヘッダー×1、シリアルポートヘッダー×1、音声入出力(7.1ch/ELNAコンデンサ) |
拡張バス | PCI Express 2.0 x1×1 |
サイズ | Mini-ITX |
店頭価格 | 10,400円(税別)@ツクモパソコン本店 |
SoCはBraswellなCeleron N3150。4コア4スレッド、クロックは1.6GHzから最大2.08GHz。キャッシュは2MBでSDP 4W/TDP 6W。位置付け的にはSurface 3に搭載されているCherry Trailの少し上で、デスクトップ・ノートPC向けとなる。プロセスルールは14nm。写真からも分かるようにファンレスだ。
メモリはDDR3/DDR3L 1600 SO-DIMM×2、最大16GB。今回microATXマザー「N3150M」にしなかったのは、手持ちで余っているメモリが2GB×2/DDR3-1600のSO-DIMMだったため。「N3150M」はSO-DIMMではなくDIMMとなる。
グラフィックスはSoC内蔵Intel HD Graphics。Braswell(Cherry Trailも)は第8世代になっており、EU数がCeleronは12、Pentiumは16と増え、H.265の4K/30fpsのデコード、H.264の4Kエンコード対応など、パワーアップしている。出力はミニD-Sub15ピンとHDMI。なおmicroATXのN3150MはさらにDVIもある。
インターフェイスは、PS/2×2、SATA 6Gbps×2、USB 3.0×4(内背面x2)、USB 2.0×6(内背面x2)、Gigabit Ethernet、パラレルポート×1、シリアルポート×1、TPMモジュールヘッダー×1、シリアルポートヘッダー×1、音声入出力。音声系のコンデンサにはELNAのオーディオグレードが使われている。
拡張バスは、PCI Express 2.0 x1×1。microATXマザー「N3150M」は、PCI Express 2.0x16と同x1×2。拡張性は無いに等しいものの、このクラスのPCに何かボードを追加することはないので気にならない部分だ。
価格はツクモパソコン本店で税別10,400円。ショップによって多少価格が違っている。ケース、メモリ、ストレージで手持ちがあれば、プロセッサとマザーで約1万円は気軽に試すことができる範囲。ついつい手が出てしまう。
注意点としては、対応OSが64bit版Windowsのみ(Windows 10 64bit/8.1 64bit/7 64bit)となっていること。メモリを4GB以上搭載できるので、32bit版と言う選択肢は無いと思われるが念のため。
Mini-ITXでフットプリントは小さく、プロセッサも搭載済みなので扱いが楽。ベンチマークテストなどはバラックの状態で電源とSSD、USB経由でDVDドライブを接続して試用していた。基本的にメモリ2枚を挿し、電源コネクタを接続、左下SATAコネクタの左側にある電源ピン2本をショートすれば起動する。
手持ちで用意したパーツは、電源Seventeam ST-220FAB/24(Flex-ATX 200W)、SSDはIntel SSDSA2MH080G1GC、2GB/DDR3-1600 SO-DIMM×2。電源とSSDは少しレアな感じだが(笑)、ケースの都合と、SSDはテストで使って本格的に運用し出すと新しいのに付け替える……を繰り返し、結果一番古いのが残ると言った感じだ。旧型とは言え、HDDやeMMCよりは速いので良しとしたい。
BIOSの画面を掲載したので参考にして欲しい。Advanced/CPU Configuration/Power Gearで、Eco Mode/Normal Mode/Sport Modeを選べるが、試したところ性能にあまり差は無かった。
ケースは、懐かしのベアボーン、Windy Pandoraのもの。調べると何と14年前のPCだった。Mini-ITXで手持ちはこれだけで、特に壊れることもなく、捨てる理由もなく、電源ユニットだけ入れ替えて使っているが、作りも良くお気に入りの箱だったりする。
確かに5年前のCore i3ノートより速い!
このASRock「N3150B-ITX」を購入した理由は、もともとWindows 10 Insider Preview Build 10130をVMとEee PC901-Xで動かしていたが、RTMも近くなり、そろそろ最新の環境で試したかったから。
テスト環境として、2万円程度で購入できる8型タブレットやスティックPCでも良かったものの、メモリは4GB以上が欲しかったこともあり、悩んでいるところに、この製品の出荷開始予定のニュースが目に留まった。手持ちで余りパーツは先に書いた通り。約1万円で最新のテスト環境ができるなら安いものだ。
また笠原一輝氏の記事にあった「しかも、5年前のハイエンドPCであるThinkPad T410sにかなり迫る総合性能になっており……」も気になっていた。Surface 3自体はCherry Trailだが、Braswellもほぼ同じプロセッサなので、その真意を確かめることができる。
とは言え、未完成のWindows 10 Insider Previewで、各種ベンチマークテストを動かすのも何なので、一旦、Windows 8.1 Updateをインストールした。
手順は書くまでも無いと思うが、初期起動後、付属のASRock motherboard support CDから、ドライバなどをインストールする。この時、ユーティリティも含め一括インストール可能だが、Google ChromeやNorton Internet Securityなど余分なものも入ってしまうので、ドライバのみとし、後でASRock Live update & Appなど必要なものだけ追加するのが無難だ。
一式インストールが終わると、デスクトップに「ASRock Live update & App shop」、「ASRock Restart to UEFI」、「Google Chrome」、「マニュアル(PDF)」、「Intel HD Graphics コントロールパネル」、「Norton Internet Security」へのショートカットが追加される。
コントロールパネル/システムを見ると、メモリを4GB搭載しているものの、GPUとメモリ共有のため、実質3.49GBになっているのが分かる。デバイスマネージャーは特殊なデバイスは無く、Gigabit EthernetとAudioはRealtek製だ。
ASRock Live update & Appは、アプリ/BIOSとDrivers/設定と3つのパネルがある。週末の段階で、ドライバのアップデートがいくつかあった。ASRock Restart to UEFIは、次のリブート時にBIOSのメニューを表示する予約だ。起動時[DEL]キーを押せば同画面が表示できるものの、タイミングを逃すとOSが起動してしまうので、あれば便利な仕掛けだろう。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、3DMark。そしてCrystalMarkのスコアも掲載した(4コア4スレッドで条件的には問題ない)。
ただし、PCMark 8 バージョン2はストレージ込みの総合パフォーマンスなので、古いSSDを搭載している関係上不利になっている。最近のSSDならもう少しスコアが上がると思われる。
winsat formalの結果は、総合 4.8。プロセッサ 6.5、メモリ 5.9、グラフィックス 5.2、ゲーム用グラフィックス 4.8、プライマリハードディスク 7.45。PCMark 8 バージョン2のHomeは1468。3DMarkは、Ice Storm 23730、Cloud Gate 2357、Fire Strike 274。CrystalMarkは、ALU 27304、FPU 23672、MEM 26836、HDD 24740、GDI 5124、D2D 3771、OGL 3885。参考までにGoogle Octane 2.0は4,024だった。
winsat formalのメモリに関しては、OSが64bit版でメモリが4GB未満の時には5.9とするルールがあり、5.9となっているものの値は10943.10734だった。
PCMark 8 バージョン2は、システムとの相性なのか、右側のグラフがクロック一定で温度も取れていない。
クロックは、タスクマネージャー/パフォーマンスで確認すると、電源プランが省エネで0.6GHz前後で固定、バランスで0.6GHz前後から最大の2.08GHz、高性能で1.6GHzから最大の2.08GHzへ推移していた。温度はBIOSを見る限り50度までは上がらないようだ。ベンチマークテスト中にヒートシンクに触れても(少し熱めの)暖かい程度だった。
3DMarkに関しては、テスト中に映像を見ていたが、結果から分かるようにIce Stormだけが実用範囲。後の2つはコマ落ちし過ぎでコマ送りだった。Intel HD Graphics Gen8と言えどもバリバリの3Dゲームは向いていないのが見て取れる。
さて「5年前のハイエンドPCであるThinkPad T410sにかなり迫る」の件、ちょうど該当する「ThinkPad X201i」(Core i3 M330/8GB/SSDも同じIntel SSDSA2MH080G1GC)があるので、winsat formalを実行するとプロセッサ6.3(6.5)、メモリ 6.3(5.9)、グラフィックス 4.7(5.2)、ゲーム用グラフィックス 3.9(4.8)、プライマリハードディスク 7.3(7.45)であった。カッコ内はCeleron N3150。
メモリに関してはThinkPadが5908.78195。約半分の値で6.3なので、Celeron N3150は、確実にこれを上回ると思われる。つまりThinkPad完敗だ(笑)。このクラスでこれだけの性能が出ると、Core i3/5/7は、正直、それなりのハイエンド用途でない限り使う必要が無いのではと思うほど。凄い時代になったものだ。
これらのテスト後、ケースに入れ、Windows 10 Insider Preview Build 10130をインストールしたが、Windows 8.1 Updateと同じ手順で問題無く動作している。
性能は上記した通り、Office、動画再生も含むネット、主にJPEGでたまにRAW現像と言った、広く一般的な用途であれば十分なパワーを持っている。逆にCore i3/5/7は(各種プロフェッショナルやゲーム用途と言うのは分かっているが、それ以外のケースで)誰が使うのかと思うほどだ。
最新アーキテクチャを体感できる上に価格も税込で約1万円と手軽。出力がミニD-Sub15ピンとHDMIなのは若干残念だがファンレスで扱いやすい。電源付きのケース、メモリ、SSDが手元に余っている、もしくは数世代前のデスクトップPCを使っているユーザーにお勧めしたい逸品と言えよう。