西川和久の不定期コラム

日本HP「h9-1190jp」
~Sandy Bridge-EとGeForce GTX 580を搭載した爆速PC



 日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は2月2日、Sandy Bridge-Eを搭載したハイエンドデスクトップ「HP Pavilion Desktop PC h9 “Phoenix”」シリーズのモデル「h9-1190jp」を発表した。13日に受注開始されたばかりの製品だが、一足早く試用レポートをお届けする。


●Sandy Bridge-E搭載

 去年(2011年)の7月に前モデルに相当する、Core i7-990X Extreme Editionを搭載したパワフルなミニタワーPC「h8-1090jp」を紹介した。ただこのPCはプロセッサ自体は速いものの、Sandy Bridgeより1世代古いアーキテクチャだったのが惜しかった。しかし今回ご紹介するのは、最新のSandy Bridge-Eを搭載した新モデルだ。BTOでいろいろな組合せが可能であるが、手元に届いたマシンの仕様は以下の通り。

【表1】HP「h9-1190jp」の仕様
CPUCore i7-3930K
(6コア/12スレッド、3.2GHz/TB 3.8GHz、
キャッシュ12MB、TDP 130W)
チップセットIntel X79 Expressチップセット
メモリ16GB(PC3-12800 DDR3 SDRAM)/
4スロット空き0/最大32GB(クアッドチャネル)
SSD256GB(6Gbps、MTFDDAK256MAM)
HDD1TB×2(6Gbps、7,200rpm、キャッシュ32MB)
光学ドライブBDドライブ
OSWindows 7 Home Premium SP1(64bit)
グラフィックスNVIDIA GeForce GTX 580/1.5GB、
DVI-I出力×2、mini HDMI×1
ネットワークGigabit Ethernet
拡張スロットPCI Express x16×2、PCI Express x1×2、
PCI Express x1 Mini Cardスロット
その他USB 2.0×8(前面4/背面4)、USB 3.0×4(前面2/背面2)、
15in1メディアスロット、S/PDIF(光)出力(背面)、音声入出力
サイズ/重量175×415×412mm(幅×奥行き×高さ)/約11.8kg
価格139,650円~

 プロセッサはSandy Bridge-Eの Core i7-3930K。6コア、12スレッド、クロック3.2GHzでTurboBoost時3.8GHzまで上昇する。もちろんSandy Bridgeと同様、TurboBoostのバージョンは2.0となる。キャッシュは12MB、TDPはさすがに高めで130W。CPUクーラーには水冷式が使われている。また型番の最後に「K」が付いていることから分かるように、クロック倍率は固定されておらず、BIOSの機能などを使って倍率を変更できるオーバークロック対応だ。大手メーカー製のPCで「K」型番のプロセッサを搭載するのは珍しい。

 試しに「h9-1190jp」のBIOSを見ると、電源の項目にオーバークロックがあり、オーバークロック:有効、Prosessor Voltage Override:デフォルト値、1~6 Core Ratio Limit:38/38/37/36/35/35となっていた。

 チップセットはSandy Bridge-Eと対となるIntel X79 Express。メモリはクアッドチャネルに対応し、4GB×4/DDR3-1600の計16GB搭載済だ。前モデルは、トリプルチャネルのDDR3-1066だっただけに、メモリ性能の向上が期待できる。OSは64bit版のWindows 7 Home Premium(SP1)。

 ストレージは256GBのSSDと1TBのHDDが2台。BTOではRAID構成にも対応できるようだが、今回は全て単独での使用だ。光学ドライブはBDドライブを搭載している。

 グラフィックスは、NVIDIA GeForce GTX 580/1.5GBを採用。CUDAコアを512基搭載し、FermiフルスペックのGPUだ。プロセッサにGPUを内蔵していないため外部GPUが必要となる。とは言え、仮にIntel HD Graphics 3000を内蔵したとしてこのクラスのプロセッサではパワー不足。結局、強力な外部GPUを使うことになる。

 出力はDVI-I出力×2、mini HDMI×1。mini HDMIからHDMI、DVI-IからミニD-Sub15ピンへの変換コネクタも付属する。なおBTOでは、NVIDIA GeForce GTX 550Ti/1GB、AMD Radeon HD 6850/1GBの選択も可能だ。

 そのほかのインターフェイスは、Gigabit Ethernet、USB 2.0×8(前面4/背面4)、USB 3.0×4(前面2/背面2)、15in1メディアスロット、ヘッドフォン出力(天面)、マイク入力(天面)、S/PDIF(光)出力(背面)、各種オーディオポート(背面)。前モデルにあったIEEE 1394とeSATA×2が無くなっている。用途にもよるだろうが、USB 3.0ポートが4つあるため、この2つの有無はあまり気にならないと思われる。

 サイズは175×415×412mm(幅×奥行き×高さ)/約11.8kg。価格は、Core i7-3930K(3.20GHz)、メモリ8GB、HDD 1TB、GeForce GTX 550 Ti、DVDスーパーマルチドライブ、Windows 7 Home Premiumの構成で139,650円。なお、今回の構成は256GBのSSDが採用されているが、このBTOオプションは2月末より発売される予定のため、価格は未定だ。

外観。ブラックとグレーを基調としたデザインで飽きが来ないフロント。パネルを下げると15in1メディアスロット、USB 2.0×4が現れるフロント/上部。この手前にiPhoneなど小型端末を置ける。USB 3.0×2と音声入出力がある
マザーボード側のコネクタは、USB 3.0×2、USB 2.0×4、Gigabit Ethernet、S/PDIF(光)、音声入出力と結構シンプル内部。CPUの冷却は水冷式。赤いパイプがなかなか雰囲気を出しているCPU近辺左側。クアッドチャネル中2つのメモリスロットがある
内部/CPU近辺右側。CPUの奥に2つのメモリスロット。CPUの周囲にファンが2基GPUを外したところ。左側がGPUによって占有され、実質空きは右側の2レーンのみ電源ユニットは600Wのものが使われていた
付属のUSB式キーボード&マウス。キートップの“B”の部分がBeats Audioの赤になっている。mini HDMIからHDMI、DVI-IからVGAへの変換コネクタも付属GeForce GTX 580は2レーンを占有する。結構大きいユニットだ赤く光るイルミネーション。前モデルはフロント上の部分だけだったが、この「h9-1190jp」は、ご覧のように3カ所が光る。特に右側面の透明パネルの部分は迫力がある

 筐体はブラックとグレーを中心としたシンプルなデザイン。自宅でも事務所でもマッチする。フロント上部には逆向きにUSB 3.0×2と音声入出力を配置。天板が少し凹んでおり、ここにiPhoneなどを置ける様になっている。サイズは175×415×412mm(同)と、一般的なミニタワーPCと同じ。机の下だけでなく、上に置いても然程邪魔にならない。

 フロントはパネルが閉まった状態だと何もインターフェイスが見えず、パネルを開けると(実際はパネルを下げる)、15in1メディアスロット、USB 2.0×4が現れる。

 リアには、USB 3.0×2、USB 2.0×4、Ethernet、S/PDIF(光)出力、各種オーディオIN/OUTが備わっている。サイドパネルはネジ1本で簡単に外すことが可能だ。3.5インチドライブベイは、写真からも分かるように、ドライブユニットを縦置きにして計3台搭載できる。

 プロセッサは先に書いたように水冷式クーラーを採用。小さいファンと、大きいファンがその周囲にある。クアッドチャネルのメモリスロットはCPUの左側に2スロット、右側に2スロット配置されていた。

 PCI Express x16×2、PCI Express x1×2ある拡張スロットは、GeForce GTX 580が2レーン占有するため事実上、各1スロットの空き。電源は600Wのものが使われていた。CPUとGPU、そしてHDDなどの消費電力を考えると、このケースに収まる範囲で拡張する分には大丈夫だろう。PCI Express x1 Mini Card スロットは、オプションのWi-Fiモジュール用となる。

 前モデルの「h8-1090jp」では、電源ONにするとフロント中央辺りが赤く光るイルミネーションだったが、この「h9-1190jp」は、同じ位置に加え、フロントの下、そして右サイドの透明なパネルから内部が見えるようになっている。全て赤となかなかパワフルなイメージだ。

 ノイズに関しては静音ではないももの、机の上に置き、すぐそばで作業をしても気にならないレベル。熱に関してもリアのファンから若干生暖かい空気を感じるが、熱いというほどでもない。

 さて、実は本体と共に3Dに対応した同社の「2311gt 23インチワイド3Dモニタ」も同時に送られて来たので軽く触れたい。仕様は以下の通り。

【表2】HP「2311gt 23インチワイド3Dモニタ」の仕様
表示サイズ23型ワイド
パネルタイプTFT LCD アクティブマトリックス(非光沢)
画素ピッチ0.265mm
解像度(最大)2D:1,920×1,080(60Hz)、3D:1,920×540(60Hz)
アスペクト比16:9
表示色(最大)約1677万色
コントラスト比1,000:1(最大300万:1)
色度域NTSC比 72%
視野角(水平/垂直)170度(水平)/ 160度(垂直)
応答速度5ms
輝度(明るさ)200~250cd/平方m(2D) / 100 cd/平方m (3D)
入力 ミニD-Sub15ピン、DVI-D、HDMI入力
付属品 3Dメガネ×2、電源ケーブル、ACアダプタ、
DVI-Dケーブル、HDMIケーブル、ケーブルマネジメントクリップ、
ソフトウェア・ドキュメントCD
サイズ/重量558×159×417mm(同)/3.7kg
HP Directplus標準価格 24,990円

 23型の非光沢パネルを採用し、解像度はフルHDの1,920×1,080ドット。視野角は水平170度/垂直160度。入力は、VGA×1、DVI-D×1、HDMI×1と、パネルが非光沢以外は標準的な構成だ。また電源は内蔵せず、ACアダプタ方式となっている。

 色は非光沢の割りに若干派手気味、メリハリがありコントラストも高い。動画も写真も楽しめ、発色も正確。IPSパネルでは無いため、視野角は狭いものの映りについては特に気になる部分は無かった。

 面白いのは「偏光方式3D映像技術」によって3Dにも対応していることだろう。右目・左目にそれぞれ横1行ずつに分割した画像を作り、液晶画面上の偏光フィルムを通じて3D専用グラスで見ると3Dに見える仕掛けだ。PowerDVDなど専用ソフトと専用グラス×2が付属する。また3D表示時でも明るさが約100cd/平方mあり、比較的明るい部屋でも鑑賞可能とされている。もともと3D対応のコンテンツはもちろん、2Dの映像、写真、ゲームなども付属のソフトを使って楽しめる(ただし例外もあり)。

 付属のアプリケーションCDからPowerDVDを再インストールすると、「3D」のアイコンが表示され、2DのDVDビデオもそれっぽく見えた。手持ちで3D対応のコンテンツを持ってないためこれ以上のチェックは出来なかったが、好みの分かれる部分だと思われる。

 なお、GeForceが対応している「3D Vision」と、このディスプレイの3D機能は無関係。3D Visionがアクティブシャッター方式を採用しているためだ。初め筆者がハマった部分で、NVIDIAコントロールパネルから3D VisionをONにしようとしたが、対応するデバイスがなく設定できなかった。同社のWebの説明を見て分かった次第だ。

フロント。非光沢パネルなので映り込みが無いリア。電源入力、HDMI、DVI-D、ミニD-Sub15ピンOSDボタン、-/+ボタン、OKボタン、パワーボタン。ボタンは下側にある
右サイド。パネルの部分は結構薄い。最大角度の+25度。左側も含め側面には何もない付属品。3Dメガネ×2、電源ケーブル、ACアダプタ、DVI-Dケーブル、HDMIケーブル、ソフトウェア・ドキュメントCDOSDは同社エントリークラスと同程度の項目がある
付属のインストールCD。このPowerDVDをインストールすると3D表示が可能になるPowerDVD/3Dディスプレイの設定。3Dシーン深度、ソース形式、ディスプレイなどを設定するPowerDVDに3Dアイコンが現れる。「h9-1190jp」にプリインストールされたPowerDVDには、この3Dアイコンは無かった

●3.2GHz/6コアとGTX 580で爆速マシン

 OSは64bit版Windows 7 Home Premium SP1。メモリが16GBもあるためまずメモリ不足になることは無い。プライマリハードディスクは256GBのSSD。6GbpsのMicron「MTFDDAK256MAM」を搭載。D:ドライブに10GBほどリカバリー領域があるものの、実質ユーザーが使えるのはC:ドライブ約227GBの1パーティション。初期起動時空き178GBとなる。2nd/3rdドライブは1TB HDD。こちらは日立「HDS721010CLA632」(6Gbps,7200rpm,32MB)だ。どちらもデータ用となっている。空き931GB。BDドライブは「BD-RE BH38L」だ。

 そのほか、ネットワークは「Realtek PCIe GBE Famil Controller」など、特に特殊なデバイスは見当たらなかった。

起動時のデスクトップ。左に若干ショートカットが並ぶものの非常にシンプルなデスクトップ。12スレッド表示しているタスクマネージャは圧巻デバイスドライバ/主要なデバイス。プライマリハードディスクは256GBのSSDで6GbpsのMicron「MTFDDAK256MAM」。2nd/3rdドライブは1TB HDD。日立「HDS721010CLA632」(6Gbps,7,200rpm,32MB)HDDのパーティション。SSDは実質C:ドライブのみの1パーティション。約227GBが割当てられている

 プリインストールされているアプリケーションは、同社製として、「HP Magic Canvas」及び関連するモジュール、「HP Update」、「HP Support Assistant」、「HP Setup Manager」などお馴染みのツール系。他社製としては「CyberLink Media Suite Premium」、「CyberLink PowerDVD 10」、「Windows Live Essentials 2011」、「Norton Internet Security」、「VIP Access」など。そして拘り系のノートPCでよく見かける「Beats Audio」も入っている。

 「HP Magic Canvas」は、フルスクリーンのインターフェイスで、時計、レシピ、RSSフィード、ビデオなど、日常のガジェットが簡単に扱えるアプリケーションだ。但し画面解像度を16:9にする必要がある。

 いずれにしてもこのクラスのPCを購入するユーザーは、何か主とする目的があると思われるため、過度なプリインストールは不要だろう。

Beats AudioHP Magic CanvasCyberLink PowerDVD 10

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、そして参考までに3DMark 06/11の結果を見たい。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 7.8。プロセッサ 7.8、メモリ 7.9、グラフィックス 7.9、ゲーム用グラフィックス 7.9、プライマリハードディスク 7.9。前モデルに相当する「h8-1090jp」(Intel Core i7-990X Extreme Edition+NVIDIA GeForce GTX 460/2GB)は、プロセッサ 7.8、メモリ 7.8、グラフィックス 7.4、ゲーム用グラフィックス 7.4、プライマリハードディスク 7.9。これでも速いと思っていたが、「h9-1190jp」は、プロセッサだけ-0.1のほぼ満点7.9をたたき出す。

 CrystalMarkは、ALU 73872、FPU 65299、MEM 88384、HDD 39378、GDI 18176、D2D 22059、OGL 45231。「h8-1090jp」は、ALU 65715、FPU 60804、MEM 53347、HDD 36333、GDI 16717、D2D 14638、OGL 39626。Windows エクスペリエンス インデックス同様、全ての項目で上を行く。特にMEMの88384はこれまで見たことも無い値だ。クアッドチャネルのメモリが効いているのだろう。

 3DMark 06は26325 3DMarks、3DMark 11はP6409 3DMarks。ベンチマークテスト中の画面は、かなりスムーズに動き、まるで映画のワンシーンのようだ。テストと言うことを忘れ映像に没頭する程のものだった。

エクスペリエンス インデックスは総合 7.8。プロセッサ 7.8、メモリ 7.9、グラフィックス 7.9、ゲーム用グラフィックス 7.9、プライマリハードディスク 7.9CrystalMarkの結果。ALU 73872、FPU 65299、MEM 88384、HDD 39378、GDI 18176、D2D 22059、OGL 452313DMARK 06:26325 3DMarks、3DMARK 11:P6409 3DMarks

 以上のようにHP「h9-1190jp」は、Sandy Bridge-EのIntel Core i7-3930Kと、CUDAコアを512基搭載し、FermiフルスペックなGeForce GTX 580を搭載。ベンチマークテストからも分かるように、爆速に仕上がっている魅力的なマシンだ。水冷式なので音も比較的静か。バリバリの3Dゲームはもちろん、動画編集・エンコード用としてもそのパワーは有効だ。加えて“MADE IN TOKYO”なので安心感もある。

 予算のことはあまり考えず、最高・最速のミニタワーPCを求めているユーザーにお勧めしたい1台と言えよう。