Hothotレビュー

ユニットコム「LesanceNB S3112/T」

~“ピンク版MacBook Air”のような11.6型モバイルノート

LesanceNB S3112/T
発売中

価格:49,980円

 株式会社ユニットコムは、11.6型で重量1.25kgのモバイルノート「LesanceNB S3112/T」を発売した。価格は49,980円。今回、実機を使用する機会を得たので、使い勝手および性能などについてレポートする。

MacBook Airと瓜二つの筐体デザイン

 本機を見て誰もがまず発する言葉は「MacBook Airそっくり」ではないだろうか。梨地仕上げのアルミニウムボディ、後部から前面にかけて薄くなっていくくさび形フォルム、底面の円形の大きな足、広めに取られたタッチパッドとパームレスト、アイソレーションでスタイリッシュなキーボード、クリック一体型のタッチパッドなど、まさにMacBook Airと瓜二つのデザインである。

 とは言え、細かいところでは結構違いがある。キーボード上部にはWindows機らしく、電源/バッテリ/無線LANの動作インジケータがあるほか、同じ11.6型としてはMacBook AirにはないSDカードスロットを備えている。ディスプレイインターフェイスも、Thunderboltの代わりにMini HDMIが備わっており、さらにはカバーが開閉するGigabit Ethernetポートがあるあたりは、機能面でかなりの差別化がされていると言えよう。底面にも小さいリセット用の穴が用意されている。

 一見同じようなくさび形をしているものの、S3112/Tの前方はぽっちゃりしたデザインとなっている。前面にかけて底面がしぼんでいるため、側面からパッと見た感じはMacBook Airと同等の薄さに見えるが、実際並べてみるとS3112/Tの方が厚みがあることがわかる。また、MacBook Airはアルミニウムらしいシルバー色だが、S3112/Tは「ローズゴールド」と呼ばれるピンク系の塗装となっている。このあたりもかなりの差がある点だ。

 49,980円からと安価ではあるものの、金属っぽさもあって、モバイルノートとしての質感としては良い部類に入る。製品情報によれば「女性向けのデザイン」とされているが、確かにこの色とデザインであれば、女性受けはするかもしれない。天板も余計なロゴなどが一切入っていないため、好みのシールを貼ったりデコレーションを施したりするのもアリだろう。

 重量は公称値で1.25kgと、MacBook Airの1.08kgからは170g重い計算となる。実際編集部の中で複数の人に持ってもらったが、MacBook Airの重量感に慣れたせいか「重い」と言う人が多かった。しかしながら11.6型クラスのPCは1.4kg台も多いため、平均よりは軽い部類に入るのではないかと思う。

LesanceNB S3112/T
右側面
左側面
ローズゴールドであっさりした天板
液晶上部にWebカメラを搭載
SDカードスロットを搭載
薄型筐体ながらGigabit Ethernetの搭載は評価できる
MacBook Air 11インチを載せたところ。S3112/Tの方がやや奥行きがある
側面の比較。厚み的にもS3112/Tの方があることがわかる
くさび形のフォルムは共通
開いた雰囲気も似ている
キーボード回りの雰囲気もそっくりだ
天板の比較
重量は実測で1,261gと、公称値をやや上回る

CPUはデュアルコア、ストレージはHDDを採用

 S3112/Tに搭載されるCPUはCore i3-3217U。1.8GHz駆動のデュアルコアで、Intel HD Graphics 4000を内蔵している。このCPUはUltrabookなどでも多く採用されており、低消費電力の面では定評がある。実際、本機でバッテリ満充電時の消費電力を計測したところ(液晶輝度50%)、アイドル時は14W、Prime95実行時でも24W程度だった。

 本体サイズは約302×200×18.5mm(幅×奥行き×高さ)と、Ultrabookの要求を満たしているためUltrabookと謳っても良いように思えるが、本機はSSDではなくHDDを採用し、さらにキャッシュ用などのSSDも皆無のため、OSなどの操作におけるレスポンス面でUltrabookに適合できず、そのため謳われていない。今後はBTOにおけるSSDへ換装でUltrabookに準拠する可能性は残されているわけだ。

 薄型化のために、本機のHDDは7mm厚のHGST製「HTS545050A7E380」を採用している。容量は500GB、回転数は5,400rpm、バッファ容量は8MBである。HDDの採用でUltrabookに準拠していないとは言え、Windows 8の軽快さやCore i3のCPUパワーの後押しもあって、実際に使っていてストレスになることはなかった。また、この価格で500GBの大容量は、初心者などには心強い装備と言えるだろう。

 メモリは4GBを搭載。ビデオメモリとしてメインメモリの一部が割り当てられているため、実際にWindows上で認識されたのは3.8GBであった。底面のシールでユーザーによる増設や修理などを禁止しているため、今回は内部を確認できなかったが、CPU-Zの情報によればTigo製のモジュールで、動作クロックは1,333MHz、1枚のみでシングルチャネル動作である。スロットも1つしかないので、これ以上増設できないわけだが、シングルチャネル動作はCPUとGPUの性能を活かしきれないため、残念な点である。

クセのあるキーボードとタッチパッド

 キーボードは日本語配列で、キーピッチは18mm(実測値)が確保されている。電源ボタンもキーとして右上に用意されているなど、これも一見MacBook Airそっくりなのだが、違いも見られる。

 NumLockやInsert、Deleteキーなどがファンクションキーの横に用意されているため、各ファンクションキーの間の間隔がやや詰まっている。主要キーは概ね17.5mmのピッチを確保しているが、「ね(、)」、「る(。)」、「め(・)」など一部記号は狭い。その代わり「ろ(\)」がやや広く、ちょっと不可解である。また、本来バックスペースの左側にあるはずの「\」が左Shiftキーの右に来ており、結構クセが強い。筆者は一般的に左Shiftキーの右側を叩いてしまうため、試用中\を間違えて入力してしまうシーンが結構あった。バックスペースに余裕があるので、次期モデルではこれを短縮して\マーク本来あるべきところに移動し、Shiftキーを拡大する改善を望みたい。

 タッチパッドは比較的大型で操作しやすい。しかしクリックはMacBook Airのように全体でクリックできるわけではなく、上から5分の1のスペースはクリックできず、そこから下だけクリックできるようになっている。クリックもやや重いのが気になった。ボタン自体は1つしかないが、Windowsで多用する右クリックは、下部の右側をクリックすることで動作する仕組みである(MicrosoftのTouch Mouseなどと同様、タッチ位置と共に認識する)。このあたりも慣れるまで少し時間がかかるかもしれない。

キーボードの配列
Shiftキーの右側に「\」があり、やや変わった配列
バックスペースは長く、「ろ」もやや大きめ

 タッチパッドは「BYD TouchPad」という、あまり見慣れないドライバがインストールされている。機能的には他社と同様、エッジでの継続移動、エッジ部スワイプでのスクロールやパームのチェック、2本指のピンチイン/アウトによる拡大縮小、回転、スクロールなどが行なえる。

 個人的に気になったのは、Windows 8の新しいUIにおける横スクロールだ。BYD TouchPadによる操作では、パッドの縦スクロール操作が、実際の新しいUIでの横スクロールとなる。Windows 8自体、縦スクロールしかできないホイールマウスでの操作の互換性に配慮し、縦スクロールで横スクロールを行なっているわけだが、同じ操作をタッチパッドで行なうかなり違和感がある。ThinkPadのTrackPointでは、センターボタンによるスクロールではきちんと左右のスクロールが一致するので、明らかにドライバの問題だろう。この点は強く改善を望みたい。

タッチパッドのサイズは横が約105mm、縦が約63.7mmと、これもMacBook Airと同じ程度
BYD TouchPadのドライバ。設定項目自体は他社とほぼ同等である

そのほかの使い勝手

 液晶は1,366×768ドットの11.6型で、光沢があるタイプ。このあたりはごく普通であるが、低価格なPCで見られがちな液晶の青っぽさや白飛び、黒浮きは抑えられており、同価格帯のPCとしては見やすい部類に入る。光沢仕上げのため映り込みがあるし、TNパネルのため視野角はそれほど広くないが、姿勢を変えただけで頻繁に液晶の角度を変えたくなるほどではなく、このあたりは実用十分だろう。

液晶の色味は比較的正しく、白飛びや黒つぶれも少ない印象
上からみたところ。色味の変化は少ない
左右の視野角は広めと言える
下からだとさすがに潰れるが、この角度で見ることも少ないだろう

 低負荷動作中の熱はさほど気にならないが、充電中で高負荷時はパームレストや底面ともにやや熱を持つ。本体左側面に見えるスリットは排気口ではなく吸気口で、排気口は液晶のヒンジ部に備わっている。高負荷時はそれなりに高速で回転するが、通常時は気になるような騒音は一切なかった。やや温度は上がってしまうが、金属のボディの全体を介して放熱するような静音志向設計と見られる。このクラスのPCは長時間負荷をかけるような使い方は想定していないため、まったく問題にならない。

 SSDではなくHDDのため、取り扱いには注意したいところだ。本製品は3種類のインジケータを備えるも、肝心なHDDアクセスのインジケータを備えていないため、動作しているか否かはHDDの音で判断することになってしまう。しかし本機は金属ボディの採用も手伝ってか、よほど静かな環境でない限りHDDの音も聞き取りにくい。もちろん動作音と静音性はトレードオフの関係なのだが、やはりHDDのアクセスインジケータが欲しかったところである。

 ACアダプタは19V/2.1A出力のタイプ。つまりは40Wなわけだが、低消費電力なプラットフォームであるため問題はないだろう。アダプタ自体の大きさはかなり小ぶりで持ち運びも楽々といったところだが、残念なことにACケーブルがいわゆる「ミッキータイプ」の3ピンで、太く重さがあり、かなりかさばる。持ち運びを前提とするならば、以前筆者が買い物山脈のコラムで紹介したダイヤテックの「直角ケーブル3号」を使うなど、ユーザー自身が工夫する必要がある。コストとの兼ね合いもあると思うが、このあたりは国内の大手PCメーカーを見習って頂きたいところである。

付属のACアダプタとケーブル
ACアダプタは比較的小型で、持ち運びに適している
ACケーブルはミッキータイプで太く、このあたりは持ち運びに配慮して欲しかった

 なおプリインストールアプリは、「KINGSOFT Office 2013」と「Norton Internet Security」のみで、比較的あっさりしている。このあたりは上級者好みである。

起動直後のデスクトップ
KINGSOFT Office 2013などがプリインストールされる

実用十分なパフォーマンス

 最後に性能について分析にしていこう。比較用として、3万円台のモバイルノート「ThinkPad X121e」、コンバーチブルUltrabook「XPS 12」、タブレット「ARROWS TAB Wi-Fi」の結果も掲載する。


LesanceNB S3112/TARROWS TAB Wi-Fi QH55/JThinkPad X121eXPS 12
CPUCore i3-3217UAtom Z2760E-450Core i5-3317U
メモリ4GB2GB8GB4GB
ストレージHDD 500GBeMMC 64GBHDD 320GBSSD 128GB
OSWindows 8Windows 8Windows 8 ProWindows 8
PCMark 7
Score1567142510834699
Lightweight154793911073060
Productivity10165866412183
Creative4419296819199102
Entertainment1307103410543359
Computation115443801226716097
System storage1374296813045146
ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3
Low4888142435276162
High323185823344182
Sisoftware Sandra
Dhrystone35GIPS9.14GIPS7.44GIPS47.67GIPS
Whetstone22.68GFLOPS5.8GFLOPS6.12GFLOPS30.33GFLOPS
Native Float shader28.71Mpixel/sec4.92Mpixel/sec5.87Mpixel/sec38.42Mpixel/sec
Emulated Double shader2.28Mpixel/sec0.66Mpixel/sec0.61Mpixel/sec3Mpixel/sec
Graphics Rendering Float125.71Mpixel/sec3.11Mpixel/sec6.9Mpixel/sec133.51Mpixel/sec
Graphics Rendering Double36Mpixel/sec0.33Mpixel/sec1.31Mpixel/sec38.74Mpixel/sec

 「PCMark 7」の総合スコアは1567と、XPS 12に結構な差を付けられている。いずれの項目もほぼ半分で、特に本機はHDD採用のため、SSDを採用したXPS 12と比較してSystem Stroageで大差を付けられている。そのほかのスコアに関してはCore i3にTurbo Boost機能が付いていないことに加えて、メモリがシングルチャネル動作である点もスコアに響いているようである。

 「ファイナルファンタジーXI オフィシャルベンチマーク3」の結果を見ても、High/Lowともにスコアの伸び悩んでいるのが分かる。Highはメモリのシングルチャネル動作によるGPUメモリバス幅の不足、LowではCPUクロックの差がスコアに現れていると思われる。

 プロセッサの性能をリアルに反映する「SiSoftware Sandra」では、ほぼ順当な結果が得られた。整数演算や浮動小数点演算性能の高さ、そしてGPUの性能は、AMD E-450やAtom Z2670とは一線を画す結果となっている。

 続いてBBenchによるバッテリ駆動時間のテストを行なった。Web巡回とキーストローク出力をオンにした状態で、残り4%で休止状態に入るまでの時間は約3.58時間だった。公称値には届かない結果で、同クラスのUltrabookと比較してもやや短めだが、価格や用途を考えれば十分と言える。

ローズゴールドをどう評価するか

 シングルチャネルのメモリやHDDの採用で、PCMark 7のスコアが奮わなかったりと、やや懸念点もあると思うが、実際の操作におけるストレスは皆無で、起動もBIOSがUEFIベースのため高速である。一般的な用途において不満を覚えることはまず無いだろう。

 価格も5万円を切っており、アルミボディの採用で質感もそこそこである。これが単に「MacBook Airっぽい」だけならば、男性ユーザーにもすんなり受け入れられると思うが、ローズゴールドというピンク系の色の採用は、やはり女性向けなイメージだ。実用的な性能やインターフェイスも女性受けしそうではある。ロゴが一切ない天板はデコレーションもしやすい。特に10代~30代前半の女性ライトユーザーには十分検討に値するだろう。

(劉 尭)