~無線LAN経由でTVが見られるワイヤレスTV付属ノートPC |
富士通の2011年夏モデルとして登場した「LIFEBOOK AH52/DA」は、15.6型ワイド液晶搭載のA4ノートPCである。LIFEBOOK AHシリーズは、LIFEBOOKシリーズの中でも主力となる製品で、3D立体視対応モデルやクアッドコアCPU搭載モデルなど、数多くのモデルが用意されている。
今回紹介するLIFEBOOK AH52/DA(以下AH52/DA)は、ワイヤレスTVユニットを採用したTVノートPCである。一般的なテレビノートPCは、TVチューナを本体に内蔵しているが、AH52/DAは本体にTVチューナを搭載せず、無線LAN経由でワイヤレスTVユニットと通信を行ない、番組を視聴できることが特徴だ。NECが以前から「ワイヤレスTVデジタル」を採用したノートPCを発売しているが、富士通のノートPCで、ワイヤレスTVユニットを採用した製品は、このAH52/DAが初となる。
●CPUとしてPentium B940を搭載AH52/DAのボディは、コンシューマ向けノートとしてはオーソドックスな、角がやや丸みを帯びたデザインであり、LIFEBOOK PHやMHなどと共通のデザインコンセプトとなっている。ボディカラーはシャイニーブラック、ルビーレッド、アーバンホワイトの3色が用意されている。ボディサイズは、384×266.3×28.8~37.5mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約2.8kgである。
CPUとして、Pentium B940(2GHz)というCPUを搭載している。Pentium B940はSandy Bridgeベースの新Pentiumで、本製品の発表時点では未発表だったCPUだ。位置づけとしてはCore i3の下、Celeronの上となる製品で、デュアルコアだが、Hyper-ThreadingテクノロジーやTurbo Boostはサポートしていない。また、L3キャッシュ容量も3MBから2MBに削減されているほか、内蔵グラフィックスコアが、Core iシリーズに搭載されているIntel HD Graphics 3000ではなく、Intel HD Grapghicsとなっている。
チップセットとしては、Intel HM65 Expressを搭載し、メモリは標準で4GB実装されている。メモリは最大8GBまで増設が可能だが、出荷時状態で2基のSO-DIMMスロットにそれぞれ2GB SO-DIMMが装着されているため、メモリを増設する場合は、標準で実装されているSO-DIMMを外す必要がある。HDDは2.5インチ640GBで、回転数は5,400rpmである。光学ドライブとしては、DVDスーパーマルチドライブが搭載されている。
基本性能は、ミドルレンジ下位といったところで、スタンダードノートとしては標準的といえる。
HDDベイのカバーを外せばHDDへのアクセスが可能なので、HDD換装も容易だ | 光学ドライブとして、トレイ式のDVDスーパーマルチドライブを搭載する |
●LEDバックライト採用の高輝度液晶を搭載
ディスプレイとして、15.6型ワイド液晶を採用。解像度は1,366×768ドットで、スーパーファイン液晶と呼ばれている光沢タイプの液晶パネルだ。バックライトにはLEDを採用しており、輝度が高く、発色も鮮やかだ。液晶ディスプレイ上部には、約30万画素のWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。
キーボードはテンキー付きで、キーの数は全部で108個ある。ボディが大きいため、キーピッチは約18.4mmと広く、キーストロークも約3mmと十分だ。キー配列も標準的であり、快適にタイピングできる。ポインティングデバイスとしては、パッドタイプのフラットポイントを搭載。フラットポイントの右上には、円形のスクロールパッドが用意されており、連続的なスクロール操作が可能だ。キーボードの上部には、サポートボタンとメニューボタンが用意されており、任意のアプリケーションを割り当てられる。
また、TV機能の操作などを行なう赤外線リモコンと有線タイプのレーザーマウスも付属している。
15.6型ワイド液晶を搭載。解像度は1,366×768ドットである。光沢タイプの液晶なので、発色は鮮やかだが、外光は映り込みやすい | キーボードは全108キーで、キーピッチは約18.4mm、キーストロークは約3mmである | ポインティングデバイスとして、パッドタイプのフラットポイントを搭載。右上にある円形のパッドはスクロール操作用のスクロールパッドだ |
キーボードの上部に、サポートボタンとメニューボタンが用意されている | サポートボタンとメニューボタンに、任意のアプリケーションを割り当てられる |
赤外線リモコンが付属しており、離れた場所からテレビ機能などの操作が可能 | USB対応のレーザーマウスが付属している |
●3波対応ワイヤレスTVユニットが付属
AH52/DAの最大の特徴が、富士通のノートPCとして初めてワイヤレスTVユニットを採用したことである。ワイヤレスTVユニットは、その名の通り、PC本体と無線で接続されるTVチューナユニットである。通常のTVチューナ搭載ノートPCは、アンテナケーブルを本体に接続する必要があるため、気軽に家の中で持ち運んでTV番組を視聴することはできないが、ワイヤレスTVユニットを採用したAH52/DAなら、アンテナケーブルをPC本体に接続する必要がなく、ワイヤレスTVユニットの電波が届く範囲なら、どこからでもTV番組を楽しめることが利点だ。
NECのノートPCに付属する「ワイヤレスTVデジタル」は、ユニットにLAN端子が用意されており、インターネットへのアクセスもワイヤレスTVユニット経由で行なえるが、AH52/DAのワイヤレスTVユニットにはLAN端子はなく、TV放送専用となり、インターネットには、他のアクセスポイントを利用して接続することになる。
AH52/DAに付属するワイヤレスTVユニットは、miniB-CASカードを採用しており、本体のサイズもコンパクトだ。縦置きも横置きも可能で、壁掛け用のネジ穴が用意されているので壁掛けにも対応する。また、NECのノートPC付属のワイヤレスTVユニットと同じく、地上/BS/110度CSデジタル放送に対応しているが、アンテナ端子が1つだけになっているのも便利だ(NECのノートPC付属のワイヤレスTVユニットでは、地上デジタル放送用アンテナ端子とBS/110度CSデジタル放送用アンテナ端子が別々になっており、アンテナケーブルを2本繋ぐ必要があった)。
TV放送の視聴・録画には、ピクセラ製アプリ「DigitalTVbox」を利用する。ワイヤレスTVユニット経由での画質は良好で、ワイヤレスTVユニットを2Fに置いて、1FにノートPC本体を持って行っても、映像がコマ落ちするようなことはなく、安定した受信が行なえた。チャンネル切替のタイムラグは数秒あり、最近のデジタルTVに比べるとやや遅いが、アプリの操作はわかりやすく、機能的にも十分だ。また、富士通のサポートページからアップデートプログラムをダウンロードすることで、本体のHDDに録画した番組を外出先などで楽しむオフラインモードもサポートされる。
ワイヤレスTVユニットを利用しながら、インターネットに接続するには、ワイヤレスTVユニットと無線LANアクセスポイントに同時に接続する必要がある | テレビ録画・視聴用ソフトとして「DigitalTVbox」を採用。地上波/BS/110度CSデジタルの3波に対応。リモコンでの操作も可能だ |
●USB 3.0ポートを2基搭載し、HDMIにも対応
インターフェイスとしては、USB 3.0×2とUSB 2.0×3、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、有線LANなどを備えている。USB 2.0ポートのうち1つは、電源オフの状態でもUSB経由での給電が可能な「電源オフUSB充電機能」に対応している。電源オフUSB充電機能は、他社でもサポートしている機種が増えているが、他社の電源オフUSB充電機能は、ACアダプタ接続時しか利用できないものが多いのに対し、AH52/DAでは、ユーティリティで設定することで、ACアダプタを接続していない状態でも電源オフUSB充電機能を有効にできる。もちろん、その場合、バッテリの電力を消費することになるが、いざというときには役に立ちそうだ。
メモリカードスロットとしては、SDメモリーカードスロットを搭載。無線LAN機能はIEEE 802.11b/g/n準拠であり、本体前面にはワイヤレススイッチが用意されており、ワンタッチで無線LAN機能をON/OFFできるので便利だ。
標準バッテリは、10.8V/2,000mAhの3セル仕様で、容量的にはあまり大きくない。公称バッテリ駆動時間は約1.8時間とされているが、実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、1時間28分の駆動が可能であった(電源設定は「バランス」に設定、バックライト輝度は中)。駆動時間は長くないが、本製品はモバイル向けの製品ではないので、特に問題はないだろう。なお、オプションとして約3倍の容量を持つ大容量バッテリが用意されており、大容量バッテリ装着時の公称バッテリ駆動時間は約5.5時間となる。ACアダプタは、このクラスの製品としてはコンパクトである。また、ワイヤレスTVユニットもACアダプタで動作するが、こちらも本体用と同じACアダプタが使われている。
バッテリは、10.8V/2000mAhの3セル仕様であり、本体のサイズの割には容量は小さい | CDケース(左)とバッテリのサイズ比較 |
ACアダプタのサイズは、このクラスとしてはコンパクトだ | CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 | ワイヤレスTVユニットのACアダプタもノートPC本体用のACアダプタと同じである |
●Core i5に比べれば性能は低いが、実用上は十分
参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」で、比較用にソニー「VAIO S(SA)」、NEC「LaVie S LS550/ES」、富士通「LIFEBOOK SH76/C」、レノボ「ThinkPad T410s」の値も掲載した。
LIFEBOOK AH52/DA | VAIO S(SA) (SPEEDモード) | VAIO S(SA) (STAMINAモード) | LaVie S LS550/ES | LIFEBOOK SH76/C | ThinkPad T410s | |
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CPU | Pentium B940 (2GHz) | Core i5-2540M (2.6GHz) | Core i5-2540M (2.6GHz) | Core i5-2410M (2.3GHz) | Core i5-2520M (2.5GHz) | Core i5-430M (2.26GHz) |
ビデオチップ | CPU内蔵コア | Radeon HD 6630M | CPU内蔵コア | CPU内蔵コア | CPU内蔵コア | CPU内蔵コア |
PCMark05 | ||||||
PCMarks | 5165 | N/A | N/A | N/A | 7584 | 5677 |
CPU Score | 5043 | 9594 | 9608 | 7709 | 9211 | 7375 |
Memory Score | 6734 | 10256 | 10255 | 8588 | 9846 | 6184 |
Graphics Score | 3001 | 7608 | 5122 | 4580 | 5288 | 2610 |
HDD Score | 5614 | 34742 | 33909 | 5616 | 5676 | 4291 |
PCMark Vantage 64bit | ||||||
PCMark Score | 4618 | 10239 | 10019 | 5736 | 7188 | 未計測 |
Memories Score | 3043 | 6173 | 5483 | 4088 | 4263 | 未計測 |
TV and Movie Score | 3071 | 4767 | 4937 | 4271 | 4594 | 未計測 |
Gaming Score | 3261 | 10370 | 8027 | 4409 | 4864 | 未計測 |
Music Score | 5006 | 12876 | 12996 | 6394 | 6784 | 未計測 |
Communications Score | 4493 | 12045 | 12289 | 6305 | 9615 | 未計測 |
Productivity Score | 3250 | 8201 | 8134 | 3117 | 5241 | 未計測 |
HDD Score | 3523 | 17903 | 17649 | 3669 | 3593 | 未計測 |
PCMark Vantage 32bit | ||||||
PCMark Score | 4235 | 9921 | 9341 | 5317 | 6864 | 未計測 |
Memories Score | 2903 | 5943 | 5227 | 3902 | 4081 | 未計測 |
TV and Movie Score | 3066 | 4746 | 4900 | 4297 | 4509 | 未計測 |
Gaming Score | 2687 | 8602 | 7382 | 4121 | 4078 | 未計測 |
Music Score | 4513 | 12005 | 12193 | 5884 | 6308 | 未計測 |
Communications Score | 4202 | 11255 | 11212 | 6218 | 8840 | 未計測 |
Productivity Score | 3488 | 7797 | 7609 | 2901 | 4807 | 未計測 |
HDD Score | 3523 | 17788 | 17780 | 3662 | 3658 | 未計測 |
3DMark03 | ||||||
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks) | 7673 | 20441 | 11117 | 9325 | 11005 | 4101 |
CPU Score | 1120 | 2573 | 1725 | 1533 | 1402 | 1068 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||||
HIGH | 2640 | 7715 | 4009 | 3586 | 3850 | 2458 |
LOW | 4062 | 10519 | 5766 | 5273 | 5568 | 3808 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | ||||||
DP | 99.97 | 99.97 | 99.97 | 100 | 100 | 96.63 |
HP | 100 | 99.97 | 100 | 100 | 100 | 99.97 |
SP/LP | 99.97 | 100 | 99.97 | 99.97 | 99.97 | 100 |
LLP | 99.97 | 99.97 | 99.97 | 100 | 99.97 | 99.97 |
DP(CPU負荷) | 46 | 12 | 12 | 14 | 13 | 21 |
HP(CPU負荷) | 24 | 5 | 6 | 8 | 6 | 12 |
SP/LP(CPU負荷) | 19 | 3 | 4 | 5 | 4 | 7 |
LLP(CPU負荷) | 14 | 3 | 3 | 4 | 3 | 6 |
CrystalDiskMark 2.2 | ||||||
シーケンシャルリード | 64.18MB/s | 673.2MB/s | 665.5MB/s | 88.69MB/s | 71.50MB/s | 36.20MB/s |
シーケンシャルライト | 69.38MB/s | 652.6MB/s | 644.2MB/s | 89.30MB/s | 72.73MB/s | 40.05MB/s |
512Kランダムリード | 30.28MB/s | 431.1MB/s | 418.7MB/s | 35.77MB/s | 36.46MB/s | 23.30MB/s |
512Kランダムライト | 30.50MB/s | 636.1MB/s | 644.6MB/s | 55.99MB/s | 63.73MB/s | 24.25MB/s |
4Kランダムリード | 0.423MB/s | 13.95MB/s | 13.89MB/s | 0.456MB/s | 0.558MB/s | 0.426MB/s |
4Kランダムライト | 1.439MB/s | 31.67MB/s | 31.64MB/s | 0.847MB/s | 1.149MB/s | 0.961MB/s |
BBench | ||||||
Sバッテリ(標準バッテリ) | 1時間28分 | 4時間9分 | 5時間52分 | 2時間10分 | 5時間57分 | 4時間15分 |
Lバッテリ | 未計測 | 7時間38分 | 12時間4分 | なし | 未計測 | なし |
ThinkPad T410s以外の比較用の機種はすべてSandy Bridge世代のCore i5を搭載しており、4スレッドの同時実行が可能なので、PCMark05のCPU Scoreの値は見劣りするが、いわゆるCULVノートよりもパフォーマンスは上で、メモリも4GB搭載しているため、通常の使い方において、性能不足を感じる場面はそれほどないだろう。
●家の中の好きな場所で気軽にTVを見たいという人にお勧めAH52/DAは、富士通初のワイヤレスTV対応ノートPCであり、アンテナケーブルを本体に繋がずにTVを見られるのはやはり便利だ。CPUに廉価版のPentium B940を搭載することで、価格が抑えられていることも魅力で、執筆時点での実売価格は12万円強といったところだ。必要にして十分な性能を実現しており、国内メーカー製のTVノートPCとしては、コストパフォーマンスも高いといえる。モバイル用途やゲーム用途ではなく、ネットサーフィンや文書作成が中心で、アンテナケーブルに邪魔されずに家の中の好きな場所でTVを楽しみたいという人にお勧めの製品だ。
(2011年 6月 30日)
[Text by 石井 英男]