元麻布春男の週刊PCホットライン

秋のIDFで期待されるSandy Bridge



 来週、9月13日からサンフランシスコで秋のIntel Developer Forum(IDF)が開催となる。新しい製品の発表に乏しく、やや期待はずれであった春のリベンジを期待したいところだが、どうやらその期待が大きく裏切られることはないと思われる。

 今回のIDFでメインテーマとなるのは、間違いなく次世代のプロセッサとなるSandy Bridgeだ。このところIntelは、秋のIDFで概要発表とデモ、翌年1月のCESで製品発表というスケジュールになっている。毎年、新しいプロセス技術と新しいマイクロアーキテクチャを交互にリリースするTick-Tockモデルでは、何かアクシデントでもない限り、年間ベースで固定したスケジュールになるのは半ば必然。すでに動作するだけのデモなら昨年秋に公開しているから、今回はより突っ込んだ話が聞けるだろう。

 とはいえ、Sandy Bridgeに関してアーキテクチャ的な詳細、実行パイプの数や256bit拡張命令セットであるAVXなどについては、昨年(2009年)秋のIDFであらかた公開されている。今回は、さらに細かな部分の情報公開も行なわれるだろうが、より身近な情報として、製品に関わる情報の公開が期待される。それは製品ラインナップやパッケージに関わる情報であり、結局はSandy Bridgeで何ができるようになるのか、という情報だ。

 現在、Intelのデスクトッププロセッサは、上からGulftown(6コア、32nm)、Lynnfield(4コア、45nm)、Clarkdale(2コア、32nm/45nm)となっている。同様に、モバイル向けプロセッサも最上位の4コアのみが45nmプロセスのClarksfieldとなっている。これら45nmプロセスプロセッサのSandy Bridge(32nm)による置き換えは、最優先されるだろう。具体的な製品ラインナップ(動作クロックと価格)の発表は1月のCESを待つ必要があるだろうが、どのくらいのセグメントをどのタイミングで置き換えるつもりなのか、といったロードマップは示されるのではないかと期待される。

5月に開催されたInvestor Meetingで公開されたSandy Bridgeの概要

 図は今年の5月に開催されたInvestor MeetingでDavid(Dadi) Perlmutter主席副社長が公開したSandy Bridgeの概要だ。ここでは、既存のアーキテクチャに基づく改良として、Turbo BoostとHyper-Threadingの改良、パワーマネージメントの改善、メディアおよび3Dグラフィックス機能の大幅な向上が挙げられ、新しいマイクロアーキテクチャに基づく革新として、共有キャッシュを採用した統合グラフィックス、AVX拡張命令による浮動小数点演算アプリケーション性能の強化、IPCの引き上げ、といった点が挙げられている。これらに関して、さらに具体的な情報が、ひょっとすると数字を伴って公開されるのではないかと思う。

 Sandy Bridgeになって、何ができるようになるのか。特に、今までできなかったことで、できるようになることが何なのかは予想しにくいところだが、すでに公開されているアジェンダを見ていると、Building Blu-ray 3D Systemsというセッションが見つかった。どうやらSandy Bridgeでは、バッテリ駆動のノートPCにおいても、Blu-ray 3Dの再生ができるようだ。これまでIntelの内蔵グラフィックスでは、偏光フィルムを使ったフレームインターリーブによる3D立体視は可能だったが、より画質の安定したフレームシーケンシャル方式での再生には外付けのGPUが必要だった。しかし、外付けGPUを使うと、バッテリ駆動時間が著しく短くなるという問題があり、フレームシーケンシャル方式による再生と、バッテリ駆動を両立させることは困難だった。これがSandy Bridgeで変わることになるのか、ちょっと期待している。

 パッケージに関連して注目されるのは、Sandy Bridgeの外部インターフェイスだ。現行のLynnfieldやClarkdaleは、外部インターコネクトにDMIを用いている。片方向10GbpsのDMIは、とりあえずUSB 3.0やSATA 6.0Gbpsにも対応可能だが、同時アクセスなどを考えると、そろそろ次を考えなければならないタイミングだ。しかし、先日のFTCとの和解文書等を見る限り、外部に仕様を公開しないポリシーのDMIを続けていくのは難しいのではないかとも思われる。Intel独自のDMIから汎用オープン規格のPCI Expressへの移行があるのか、その場合パッケージが変わるのは不可避となる点に注目したい。

 このUSB 3.0とSATA 6.0Gbpsへの対応は、Sandy Bridgeに対応したチップセットで気になる部分だ。下馬評ではSATA 6.0Gbpsは内蔵、USB 3.0は外付けで対応という予想だが、何を内蔵して、何を外付けにするかという問題は、プロセッサとチップセットがサポートするPCI Expressのレーン数の配分等にもかかわってくる。率直に言って、現在のプラットフォーム(Lynnfield/ClarkdaleおよびチップセットのIbex Peak)では、すべてを外付けするには帯域やレーン数が必ずしも十分ではない。内蔵、外付け含めて、どう外部I/Oを配分してくるのかも気になるところだ。

 このSATA 6.0Gbpsのサポートは、プロセッサやチップセットだけでなく、Intel SSDの仕様にもかかわってくる。NANDフラッシュの生産においてIntelのパートナーであるMicron(Crucial)が、すでに6Gbpsに対応したSSDを製品化しているのに対し、Intel SSDがSATA 3.0Gbpsなのは、チップセットによる標準サポートがないからだとも言われている。SSDは今すぐSATA 6.0Gbpsの恩恵を受けられる数少ないデバイスであるだけに、噂される容量倍増化計画の真偽とともに、Intelの発表が待たれる。

 どうもSandy Bridgeでは外付けになりそうなUSB 3.0だが、光インターフェイス「Light Peak」との兼ね合いも気になるところだ。今年の6月時点において、Light Peakはまだコネクタが最終決定しておらず、USB 2.0上位互換のコネクタによるデモだった。ところが、このコネクタではUSB 3.0との共存ができないため、USB 2.0上位互換を続ける(USB 3.0と競合する可能性が生じる)のか、全く別のコネクタを採用する(USB 3.0と併存する)のか、IDFで新しい情報を得たいいところだ。

 USB 3.0が外付けになると予想される理由の1つは、NECエレクトロニクス(現ルネサス)がホストコントローラチップの増産(4月以降)を決めたこと。普通、Intelがチップセットに標準内蔵すれば、量産規模を縮小するのが普通だ。標準内蔵が遠いからこそ、そしてひょっとするとIntelのマザーボードに採用されるから、増産を決めたのではないかと考えられる。現時点で、USB-IFの認証がとれているUSB 3.0ホストコントローラはルネサス製のみ。Intelが認証のとれていないホストコントローラを採用するとは到底考えられない。

 それでも、さすがにその次の世代ではUSB 3.0の標準内蔵化が期待されるところだ。それともUSB 3.0は外付けのままで、Light Peakを標準内蔵するようなサプライズがあるのか、今回のIDFで明らかにされるかどうかは別として興味深い。

 今回のIDFではこのほかにも、Intel Wireless Displayのアップデートや、サーバー向けでは10Gbps Ethernetのオンボード化など、さまざまな話題が登場すると予想される。そうした話題をお伝えできたらと思っている。