山田祥平のRe:config.sys

はめ殺しバッテリのトレンド

 各種デバイスのバッテリが内蔵になり取り外しができないのが当たり前のようになりつつある。スマートフォンはもちろん、PCでも、その傾向が強くなってきた。このトレンドは、このまま定着してしまうことになるのだろうか。

軽薄短小のしわよせ

 ドコモから発売されているソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia Z」は、2,330mAhのバッテリを搭載していているが、その取り外しはできない。もし、日常的な使用でバッテリの劣化を感じるようになったら有償での交換となる。調べてみるとバッテリの交換代金は9,345円となっている。預かり修理の扱いとなるようだ。

 これが「iPhone」であれば6,800円、「iPad」は8,800円となる。ちなみにアップルの場合は保証期間中にバッテリ性能が当初の50%以下に落ちた場合は無償交換となるようだ。

 これらのバッテリ保守に関わる費用は、例えば、今どき珍しくバッテリが交換できるパナソニックの「ELUGA X」の電池パック「P29」の価格が2,940円ということを考えると、かなり割高だ。

 端末を預け、一般人には不可能な作業でバッテリを交換する工賃を換算すれば、金額的には仕方がないのかもしれない。それよりも、数日〜1週間の期間を要し、いったん初期化するといった手間も考慮しなければならないのが面倒だ。

 これらのデバイスのバッテリの多くは、リチウムポリマーだが、一般的には300〜500回の充電で寿命を迎えると言われている。つまり毎日、1年も使っていれば、当初のバッテリ稼働時間が、かなり短くなってしまうということだ。

 バッテリを内蔵してしまい、簡単には取り外せないようにするのは、やはりデバイス本体の薄型軽量化のためが大きい。1gでも軽く、1mmでも薄いデバイスを実現するには、取り外しの機構を持たせない方が有利だ。

 だが、購入当初は丸1日余裕で使えたスマートフォンが、1年後には半日しか使えないというようになると、やはりバッテリは交換する必要がある。もともと丸2日保つスペックなら、半分になっても1日保つのでガマンもできるが、半日ではつらい。それに、新品時でも丸2日バッテリが保つようなスマートフォンも見当たらない。ただでさえ、丸1日保たないバッテリに、みんな困っているのだ。

スマートフォンのバッテリ劣化は避けられない

 スマートフォンなら、モバイルバッテリで補うという手がある。でも、モバイルバッテリは、本体内蔵のバッテリを充電するのでエネルギーロスが大きい。その容量の半分ほどしか使えないと思っておいたほうがいい。それに、スマートフォンとモバイルバッテリをケーブルで繋ぎ、ブラブラさせながら使うというのは、なんともスマートではない。

 だが、スマートフォンはシャットダウンと再起動に時間がかかるので、その必要がないモバイルバッテリの方が予備バッテリを携行して交換するよりもいいというユーザーも少なくないようだ。それに予備のバッテリを単独で充電する方法がない場合には、汎用的な充電方法が使えるモバイルバッテリの方が有利だという考え方もある。

 さまざまな生活の知恵で、バッテリ運用時間を確保し、毎日使っているうちに、2年ほどの時間が経過し、短くなってしまったバッテリ稼働時間に、バッテリの交換修理か、スマートフォン本体の買い換えを検討することになるわけだ。2年もあれば、スマートフォンは劇的に進化しているだろう。2世代は進んだ魅力的な製品を手に入れることができるはずだ。それでいい、というのも一理ある。

 その一方で、ノートPCはどうか。ノートPCもまた、Ultrabookのような薄型軽量の製品が増えてきたことで、バッテリが交換できない製品が多くなっている。事情はスマートフォンと同様で、当初は8時間保ったバッテリが4時間しか保たなくなる。話半分として2時間だ。これではモバイルPCとしてつらい。

 今、手元で日常的に使っているパナソニックの「Let'snote SX1」では、2本の軽量バッテリを用意し、片方を常用し、長時間のバッテリ運用が必要な場合に備えて、もう1本を待機させている。Let'snoteには「PC情報ビューワー」というユーティリティが添付されていて、これを使うことで、バッテリの積算充電回数を知ることができる。

 このPCは、使い始めたのが2012年2月で、この原稿を書いている今日まで、1年とちょっとの使用期間だ。持ち出さないときにも、電源を入れっぱなしで満充電を保ちながら自宅に待機させてきた。また、最近は、予備バッテリさえ切れたスマートフォンのピンチのときにLet'snoteで充電することもある。環境にもバッテリにも、あまりよくなさそうな運用だ。2本のバッテリは、特に区別もしていないが、予備を使うことはあまりなく、使った場合には一時的に入れ替わるが、結局、空になったバッテリを充電するために元に戻すので、どちらか片方だけを酷使していることになる。

 ちなみに、Let'snoteには「エコノミーモード」と呼ばれるバッテリ運用方法が用意され、バッテリ充電量を約80%に制限することで、通常の1.5倍のバッテリ耐久年数を実現することができるようになっているが、個人的には使っていない。なお、同社では、バッテリ容量が初期の50%まで劣化した時をバッテリ劣化寿命と定義している。

 手元のSX1は、PC情報ビューワーで確認すると、片方のバッテリの積算充電回数は約60回、もう片方が約7回となっていた。ユーティリティが示すバッテリヘルスは、前者が97%、後者は100%だ。これは、新品時に対してのバッテリの劣化具合を示す値だ。片方を酷使していることがわかるが、とりあえず、どちらもまだまだ大丈夫そうだという判断ができる。

 毎日バッテリを使い切って空っぽからフル充電を繰り返すようであれば、1年ちょっとの使用期間でも、バッテリはもっと劣化するのだろうが、このユーティリティの表示を信じるとすれば、劣化はそんなに心配しなくてもいいのかもしれない。今の使い方なら、バッテリのヘルス状態が70%を下回るのは、当分先のことになりそうだ。

過去のバッテリ実績で自分の利用スタイルを知る

 1年ちょっと使ったLet'snoteのバッテリ状態で判断する限り、例えバッテリがはめ殺しであっても、あまり心配する必要はないのかもしれないなとも感じる。それに、昨今のPCは十二分にバッテリが保つので、出先でバッテリを使い切るようなことはほとんどなくなった。外出し、1〜2個の用事を済ませて戻ってくるといった1日なら、バッテリ容量の半分以上が残ったままとなっていることがほとんどだ。例え飛行機で太平洋を横断するような場合も、ずっとノートPCを使っているわけでもなく、最近は電源コンセントのある機体に乗る機会も多いので、困ることは少なくなった。ノートPCの場合、他の機種を持ち出す日も多いので、1台のノートPCだけのバッテリを酷使するというような状況ではないのだろう。もちろん、あくまでもこれは手元の環境でのケーススタディだ。

 でも、スマートフォンはPCと違う。毎日必ず持ち出すのはもちろん、ほとんどすべての時間をバッテリで運用し、さらには、ほとんどの毎日、バッテリがすっからかん近くになるまで使い切る。

 ぼくが使っているスマートフォンは、たまたまバッテリが交換できるし、予備バッテリ専用の充電器も市販されていたので重宝している。やっぱりバッテリは交換できる方が安心だ。長時間電源の確保ができない環境にいなければならない場合も、バッテリが切れたら予備のバッテリと交換することができる。その上で、バッテリ単体を充電できる装備があれば理想的だ。そういう意味では、「Let'snote AX2」は、運用しながらでも、セカンドバッテリがバックアップしてメインバッテリの交換ができ、バッテリ単体充電器も用意されている点で最強の環境だ。

 でも、昨今のスマートフォンやPCでは、その安心が得られなくなりつつあるのだとすれば、望みたいのは急速充電だ。ほんの少しのスキマ時間にAC電源を供給することで、ひとまず安心できるだけの容量を、一気に充電してしまうことができれば、予備バッテリの代わりにACアダプタを持ち歩くことで、なんとか不便をカバーできるかもしれない。また、置くだけ充電のような仕組みで、カフェやオフィスの会議室のようなところで、隙あらば充電ができるというようになってほしい。

 例えば、NTTドコモのサイトに記載されている説明では、同社における急速充電対応とは、「本体の電池パックが低電圧状態から60分で1,200mAh以上の電池容量を充電でき、かつ、従来品の「ACアダプタ 03」と比較して125%以上の充電高速化が満たせること」を意味するという。対応端末であるXperia Zのバッテリ容量は、冒頭に書いたように2,330mAhなので、1時間で約50%まで回復することになる。

 一方、NECのUltrabook、「LaVie Z」は、1時間でバッテリ残量ゼロから約80%まで充電ができる急速対応だ。この急速度はNTTドコモの定義する急速充電よりも使いやすそうだ。

 LaVie Zのカタログ上のバッテリ駆動時間は8.1時間だが、これも話半分として4時間を想定すると、80%なら3.2時間。1%のバッテリで約2.4分間使える。80%まで、仮にリニアに充電ができるとすると充電は1分当たり1.4%だ。10分間充電すれば、14%を確保、ほぼ30分間の利用ができる。これは、結構安心できる値だ。出かける前の準備をしている間や、トイレなどに立つ数分間に充電すれば、けっこうな容量をゲットでき、結果として長時間のバッテリ運用ができるし、すっからかんになるまでバッテリを使い切ることも少なくなり、劣化の抑制にもつながるはずだ。

 というわけで、バッテリはめ殺しのPCは、運用の工夫でなんとか本体のライフサイクルを内蔵されたバッテリだけでまかなえそうだが、スマートフォンはまだ、そういうわけにはいきそうにない。これから先、考えていかなければならない重要なテーマになりそうだ。

(山田 祥平)