山田祥平のRe:config.sys
Xperiaとえくすぺりあ
(2013/3/22 00:00)
この春のスマートフォンで高い人気を誇るのがソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia Z」(SO-02E)だという。たまたま、グローバル版とドコモ版の両方を試す機会が得られたので、今回は、その差異について見ていくことにしよう。
幕の内アプリの緩和
日本に限ったことではないが、携帯電話製品の多くはSIMロックを施した上で、通信事業者のブランドで最終製品がエンドユーザーに発売されている。Xperiaも例外ではなく、ソニーモバイルが開発した製品ではあるが、同社はエンドユーザーに製品を売るわけではなく、NTTドコモが自社製品として最終製品をユーザーに販売する。
そして、通信事業者、すなわちキャリアは、自らのサービスを最大限にユーザーに享受してもらえるように、さまざまなアプリをインストールし、サービスを常駐させた状態に製品を仕上げて最終製品とする。それに対してグローバル版は、どのキャリアで使うかはユーザー自身の選択に任せ、基本的にSIMロックフリーの状態で出荷される。
たとえば、ドコモ版のXperia Zには、ドコモのキャリアメールクライアントとして、SPモードメールがプリインストールされている。また、ドコモのSIMを装着して最初に起動したときに、各種専用アプリのインストール等を促すガイダンスなどが表示されるようになっている。
アプリとしては、dマーケット、ドコモバックアップアプリ、iコンシェルコンテンツ、ICタグ・バーコードリーダー、しゃべってコンシェル、メディアプレーヤー、データ量確認アプリ、おかませロックアプリ、スケジュール&メモ、Contents Headline、iチャネル、名刺作成アプリ、ドコモ音声入力、フォトコレクション、ドコモ文字編集、しゃべって検索、声の宅配便、タイマー、診断ツールアプリ、ドコモ位置情報、地図アプリ、カテゴリナビがある。当然、これらのアプリはグローバル版には存在しない。
以前と変わってきたなと思ったのは、これらのアプリをインストールして設定し、使い始めることをスキップできるようになっている点だ。正確にはインストールはされていて、しかも、出荷直後の状態でほとんどのアプリにアップデートがかかるのだが、自発的に起動しない限りは、怪しい動きをすることはない。ただし、dマーケットだけは、アップデートチェックをするためにどうしても動いてしまうようだが、これも、定期アップデート確認をオフにしておけば問題なさそうだ。さらに、いくつかのウィジェットがホーム画面に設定済みで、それらも常駐状態でバッテリを消費しているようなので、必要がなければ削除してしまえばいい。
また、この製品には優先アプリという考え方があって、
- ホーム画面
- ロック画面
- 電話帳
- メディアプレーヤー
の4つについて、ドコモ版を使うか、Xperia版を使うかを決めることができる。この仕様はなかなか考えられていると思った。
モバイルネットワークの柔軟性
ハードウェア的な外見は限りなく同じものだ。うれしいことにストラップホールもついている。ドコモ版の充電用クレードルは、グローバル版でも使えた。
内部的に違っていたのは、ドコモ版がBluetoothテザリングをサポートしていないことと、さらに、あいかわらず、ドコモMVNOのSIMを装着してテザリングしようとすると、APNをバックグラウンドで切り替えようとして接続に失敗してエラーになってしまうところだ。なお、SIMロックの解除がされていないため、ドコモ以外のSIMを装着した際の挙動については言及できない。
また、細かいことだが、グローバル版ではモバイルネットワークのネットワークモードが、
- WCDMAのみ
- GSMのみ
- GSM/WCDMA(自動)
- LTE/WCDMA/GSM(自動)
と4種類の選択肢が用意されているのに対して、ドコモ版では、
- LTE/WCDMA
- GSMのみ
- LTE/WCDMA/GSM
の3種類の選択肢となっていて、現実問題としてLTEをオフにすることができない。ドコモは、手数料を支払えば、SIMロックを解除するサービスを提供しているが、LTE未サポートの国にでかけて現地のSIMを使う場合にも、LTEの電波をずっと探し続けなければならないというのは、バッテリ消費の点でも望ましくない。
これらの相違は日本国内でドコモのサービスを使っている限りは、何の問題もないのだが、一歩、国外に出るといったときに、いろいろと困ることが出てくるかもしれない。
このほか、おサイフケータイことFeliCaへの対応、ワンセグのサポートもドコモ版ならではだ。また、通知バーを引き下げたときに、各種設定のオンオフができるクイック設定のボタンが用意されているのだが、ドコモ版は2行で各ボタンに文字ラベルで説明があるが、グローバル版は1行で項目も限られアイコンだけの表示となっている。これはドコモ版の方がわかりやすい。
さらに、下から上へのスライドインでは、しゃべってコンシェルとGoogle Nowのどちらかを選択できる。これもドコモ版ならではだ。
いずれにしても、いろんな意味で、いわゆるガラスマ状態からは脱却しているという印象を受けた。人によっては致命的だとする相違点かもしれない可能性はあるが、細かい点を除けば、グローバル版とドコモ版で、極端な違いがないのは嬉しい。いわゆるXperiaが提案するスマホ体験が、ほぼ損なわれずにエンドユーザーにわたっているという点で好感が持てる。
内蔵されたバッテリ
最近のスマホは、本体の薄型化、そして防滴防塵のために、すべての端子にパッキンつきのカバーがついている製品が多い。Xperia Zも同様で、Micro USB端子を使って充電するためにも、このパッキンのカバーを開く必要がある。開閉の繰り返しテストをクリアしているとはいえ、カバーの付け根やパッキンがどのくらい持つのかちょっと不安になる。
また、バッテリが交換できないというのも最新スマホのトレンドだ。Xperiaのバッテリは、結構長持ちする方だとも思うが、やはり、1年も使えば劣化していくだろう。いくらスマホの進化が激しいとはいえ、それなりに高価なデバイスだ。2年は使わないかもしれないが、1年は間違いなく使い続けるだろう。
簡単にバッテリが交換できれば予備を購入して持ち歩くこともできるし、劣化したバッテリを新品に置き換えるのも簡単だ。出先でバッテリ切れを起こしたときの保険に、別途モバイルバッテリを持つというのは、あまり考えたくない。最近は、もう1台薄くて小さいスマホをバッテリ代わりに持って、バッテリ切れになったらSIMを入れ替えればいいんじゃないかとも思うようになっている。どうせ、データは同期するのだし端末が変わってもあまり困ることはないだろう。それに、どうせ自宅に戻れば、切れたバッテリと、リリーフしたバッテリの2個を充電しなければならないのだから、スマホそのものが充電器代わりになる方がいいという考えだ。
146g、約5型という本体は、がんばれば片手で操作できるが、右手操作の場合、親指が左側の戻るボタンにようやく届くくらいのサイズ感だ。常用している「GALAXY S III」よりも、7g重いが、スクリーンサイズは大きい。ただ、GALAXYシリーズはスクリーン下部のボタンがスクリーン外に装備されているので、縦方向に表示できる量は解像度が低くて4.8インチのGALAXYの方が多い。こうしたことは、実際に手にとって確かめてみないとわからないことばかりなので、スマートフォン選びは難しい。
店頭での展示実機には、TwitterやFacebookの自分のアカウントを設定するわけにもいかず、メールやカレンダーがどんな風に見えるのかを確かめることもできない。だから、いつも自分が使っているアプリが、新しい端末ではどのような表示になり、どのような使い勝手になるのか比較するのが難しい。こうしたことにも対応してもらえるのが、ショールーム的存在であるスマートフォンラウンジなどの存在だ。せっかくのスマートフォン、やはり、スマートにお気に入りの端末を選びたいものだ。
【編集部注】ドコモ版は開発機による検証。