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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Pentium III 800MHzはAMDへの宣戦布告


●Pentium III 800MHzを緊急発表

 Intelが一気に反撃に出た。まず、Pentium IIIの750MHzと800MHzのスケジュールを、急きょ繰り上げて発表した。さらに、ロードマップ全体を前へずらして、2000年後半にはPentium IIIで1GHzまでクロックを引き上げるつもりのようだ。これはもちろん、AMDがAthlon 750MHzを発表し、2000年に1GHzまで引き上げるロードマップを発表したことに対応した動きだ。言ってみれば、IntelのAMDに対する宣戦布告。もうこれ以上、Athlonにクロックで優位に立たれることを許さないという決意を示したのだ。

 Intelは、従来1GHz以上は次世代MPU「Willamette(ウイラメット)」の領域で、Pentium IIIでのクロックの上限は800MHz台までというスタンスを取っていた。しかし、OEMメーカーによると、Intelは'99年11月のCOMDEX Fall前後に、Pentium IIIのクロックを933MHzまで引き上げることを説明したという。しかも、1ヶ月後にはそのロードマップをさらに1GHzへずらすというアグレッシブな攻勢に出たわけだ。

 PC業界関係者によると、今回発表されたPentium III 750/800MHzは、そもそも今秋の時点では、750MHzが2000年第1四半期、800MHzが第2四半期に発表が予定されていたという。これは、明らかに、AMDがAthlon 750MHzを2000年第1四半期に、800MHzを第2四半期に予定していたことに対抗したものだ。

 ところが、AMDは750MHzの予定を繰り上げて11月末に発表、さらに800MHzも第1四半期へ前倒ししてしまった。このままでは、IntelはAMDにクロックで越された状態になってしまう。そこで、Intelは、一気に抜き返そうと800MHzまでの発表に踏み切ったようだ。この発表は、クリスマスの直前、つまり、米国企業が年末の休暇に入る直前というぎりぎりのタイミングであることや、発表の2週間前まではウワサにすらなっていなかったことから、かなり間際になって決定されたことがわかる。それだけ、Intelは危機感を募らせたのだ。


●AthlonがIntelの隙を突く

 Intelが、危機感を感じるのはもっともだ。それは、同社が'99年夏以降、つまずきを繰り返し、その隙をついたAMDに追われていたからだ。

 まず、Intelは、夏の始めに「0.18μm版Pentium III(Coppermine:カッパーマイン)」で高クロック品が採れないというトラブルに見舞われた。そのため、当初9月前半だったCoppermineの発表を、10月末までずらさなければならなくなった。つまり、Pentium IIIの高クロック化で、一時的にせよつまずいてしまったのだ。

 そして、Intelにとって間の悪いことに、その隙をついてAMDが8月にAthlonを発表してしまった。Athlonの発表時の最高クロックは、Intelより高い650MHz。この650MHz版は、すぐに大量に出荷できるというわけではなかったが、Intelより高いクロックというのは衝撃が大きかった。x86最高クロックの冠を、ついに奪われてしまったからだ。

 このAMDのAthlon発表に対して、Intelは表舞台では有効に反撃することができなかった。もし、Coppermineが順調に仕上がっていれば、Coppermineの667MHzを前倒しで発表して対抗することもできただろう。しかし、Intelはそれどころではない状態だった。

 Coppermineは遅れ、その次にはIntel 820チップセットがドタキャンと、次々に、PCメーカーの製品計画を狂わすようなIntelの失態が続いたからだ。この時期のIntelは、自社の製品計画の軌道を戻すことに手一杯で、AMDへの製品での対抗策は後回しになっていたフシがある。


●AMDの2000年ロードマップに対抗

 ずれたIntelの歯車が戻り始めるのは、10月末のCoppermine発表からで、Intelはここで733MHzを前倒しで発表することで、x86最高クロックの冠を奪回する。さらに、11月のCOMDEXでは820も発表して、なんとか夏以来ぐらついていた態勢を立て直した。しかし、COMDEX前後で、Intelはもっとアグレッシブに攻めなければならないと判断したようだ。

 というのは、AMDがCOMDEX直前に行ったアナリストミーティングで、Athlonの大胆なロードマップを発表、2次キャッシュ統合やソケット化、モバイルへの展開などを具体的に語り始めたからだ。AMDのこのロードマップには、ハードルがいくつもあるので、全てが順調に行くとはかぎらない。しかし、現実にその第1手である750MHzは登場、ふたたびPentium IIIはx86最高クロックの座を奪われつつあるわけで、Intelは対応せざるをえなかった。


●両社の戦いはますますエスカレート

 おそらく、Intelは、今後も可能な限りAMDより先に高クロックの製品を発表する可能性が高い。Intelは、これまで、むやみに高クロック品を製品化してこなかった。1四半期に1グレードづつといった、決まったペースでクロックの上限を引き上げてきた。これにはマーケティング的な理由と技術的な理由があったと考えられる。

 まず、可能な限り高クロック品を一気に出してしまうより、順番にクロックを上げて価格をスライドさせた方が、価格をコントロールして利益を上げやすい。それから、Intelはぎりぎりの高クロックを製品化しないで、高クロック品がある程度確実な量が採れるメドが立ってから、余裕を持って発表を行ってきた。これは、量を確保するためで、MPU発表と同時にPCメーカーから搭載機種が一斉に発表されるIntelにとっては必要な措置だったと思われる。

 しかし、Intelは今後は、これまでのこうした方針をやめた。今後は、AMDが対抗してくる限り、採れる限り高クロックの品を製品発表してくるだろう。つまり、ぎりぎりまで高クロック品を出すという方針に転換するわけだ。そのため、今後のIntelの最高クロック品は、従来の最高クロック品と較べると、採れる量が少なくなる可能性がある。

 だが、AMDもこれで黙っているとは思えない。AMDがAthlonの800MHzを前倒しして発表すれば、またクロックではIntelと並ぶ。両社がロードマップ通りに行けば、このし烈なレースは、1GHzを超えるまで続く。


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('99年12月21日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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