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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

IntelがAMDに対抗してPentium IIIを933MHzまでアップ


●AMDの計画に合わせてIntelもロードマップを変更

 2000年、米Intelと米AMDのクロック競争はさらに加速する。
 両社とも、デスクトップPCでは来年前半に800MHz以上、来年後半には900MHz台を経てオーバー1GHzに達する計画を立てていると言われる。
 Intelの当初の計画は、こんな派手なものではなかった。今年夏ごろまでIntelは顧客に、Pentium IIIのクロックは上限が800MHz程度と説明していたという。それが一転、オーバー900MHzのPentium IIIまで投入することになった理由は、ズバリAthlon対策だ。
 AMDは、COMDEX Fall直前の11月11日に米国で開催したアナリスト向けのミーティングで,Athlonの将来計画を大々的にぶちあげた。それによると、来年中盤にはAthlonで900MHz、来年中に1GHzを実現することになっている。Intelとしては、AMDがこれだけのロードマップを公開した以上、対抗せざるをえないということだろう。
 両社の新ロードマップをもう少し詳しくみてみよう。AMDはすでに0.18ミクロン版Athlon 750MHzを発表しているが、来年第1四半期には800MHzを投入する。これは、AMDの当初の予定を1四半期づつ前倒しにしたものだ。
 それに対して、Intelも予定を繰り上げ、Pentium III 750MHzと800MHzを第1四半期中に発表すると、OEMに説明したと言う。つまり、Athlonのクロックにぴたりと合わせてきたというわけだ。また、Intelはこの時点からPentium IIIのパッケージを急速に、Slot 1用SECC2カートリッジからSocket 370用FC-PGAパッケージに切り替えるつもりらしい。このFC-PGA化計画も、これまでよりスピードアップしたようだ。FC-PGAの方が製造コストが低くなり、また、PCメーカーにとっては筺体設計の自由度が増える。Intelにしてみれば、利幅が増えることになり、よりアグレッシブな価格競争ができるようになる。


●Intelは933MHzまでクロックを引き上げる

 これに対して、AMDもAthlonをPGAパッケージ化する。同社は、来年中盤に、PGA版の新しいAthlon「Thunderbird(サンダーバード)」と「Spitfire(スピットファイア)」を投入すると発表した。どちらも、現在のAthlonが外付けにしている2次キャッシュSRAMをMPUコアにオンダイ(On-Die)で統合して、PGAパッケージ化を可能にする。AMDではSocket Aという新規格に対応したPGAを投入する。Athlonの場合は、CPUコア自体が大きいので、かなりダイサイズ(半導体本体の面積)が大きくなる可能性はあるが、それでも、これによって、SRAMチップと基板、カートリッジのコストが削減できる。
 AMDは、アルミ配線の0.18ミクロン製造プロセスでは900MHzまで実現できるとしている。そのため、Thunderbirdでは800MHz以上、900MHzクラスまでの製品が登場すると見込まれている。
 これに対して、Intelもクロックを引き上げる。すでに説明した通り、Intelは当初のクロックを抑えた製品計画を取りやめ、来年中盤には866MHz、来年後半には933MHzのPentium IIIを投入すると言われている。これも、Athlonのロードマップとほぼぴたりと並んでいる。
 また、AMDは来年後半には銅配線0.18ミクロンプロセスのAthlon「Mustang(ムスタング)」を投入、1GHzを目指す。これに対しては、Intelはオーバー1GHzを予定しているWillametteを第4四半期頃に投入すると言われている。Willametteは、昨年から1GHzクラスを予定していたので、この部分に関しては計画に変更はない。Willamette以降は、再びIntelがクロック競争でAMDを引き離すことができるかもしれない。


●モバイルでも来年後半は800MHzで競争か

 また、クロック競争はモバイルPCでも始まる。Intelは、来年1月に「SpeedStep(Geyserville:ガイザービル)」技術を使って、AC電源時のクロックを650MHzにまで引き上げたモバイルPentium IIIを発表すると見られている。Intelは、その後もモバイルPentium IIIのクロックを引き上げ、最終的には来年の後半に800MHzに持っていくと言われている。OEMメーカーによると、Intelは800MHzまでを実現するための熱設計基準についてもう決めている様子だという。
 これに対し、AMDもSpeedStepに対抗する「Gemini(ジェミニ)」技術を来年前半に導入する。Geminiは、最初は0.18ミクロン版K6ファミリであるMobile K6-III+とMobile K6-2+に搭載されるため、クロックはIntelほど引き上げることができないだろう。しかし、AMDは来年後半にはモバイル向け機能を搭載したAthlon(Mustang)を来年後半に投入する予定でいる。OEMメーカーなどによると、このモバイル版Athlonのクロックは800MHz台になるとAMDは言っているという。AMDの計画通りにいけば、来年後半には、モバイルのハイエンドでも、AMDとIntelのクロック競争が始まることになる。
 モバイル版Athlon投入までは、AMDはK6ファミリでおもにコンシューマ向けの低価格ノートPCをターゲットにしていくと思われる。つまり、相手はモバイルCeleronになるわけだ。AMDは、0.18ミクロン化により、モバイル版K6のクロックを、来年の中盤までに600MHzまで持っていこうとしていると言われる。これは、IntelのモバイルCeleronのロードマップにぴたりとついている。


●933MHzは現実的なのか

 大幅にクロックをアップした2000年のIntelのロードマップ。どうやっていきなり933MHzを採れるようになったのだろう。MPUのクロックを向上させるには、通常、クリティカルパスを地道につぶす設計上の改良と、製造プロセスの改良の2つのアプローチがある。製造プロセスでは、同じ0.18ミクロンでも、何度も改良を加え、シュリンクしたり抵抗を減らしたりしてゆく。こうした改良で、より高いクロックの品も採れるようになるという目算がついたという要素がまずあるだろう。
 また、MPUの高クロック品というのは、そもそも1枚のウエーハから切り出されたダイ(チップ)のうち、高いクロックの動作テストをパスしたものが選別されただけだ。そして、高クロックのテストをパスするチップは数が限られる。そのため、どれだけ高いクロックまでを製品化するかは、生産量とのかねあいになる。
 つまり、866MHzのテストにパスしたダイは866MHz品としてより分けられ、866MHzのテストには落ちたけれど800MHzのテストにパスしたダイは800MHz品としてより分けられる。そして、通常このクロックごとの製品のミックスは、ピラミッド型になる。例えば、866MHzで動くチップが20%、800MHz以上で動くチップが50%、750MHz以上のチップが75%、700MHz以上のチップが90%といった具合になるわけだ。そして、MPUメーカーはやろうと思えば、この中からさらに高クロック品を選別することもできる場合がある。つまり、933MHz品を10%選別することもできるわけだ。
 Intelは、これまで、むやみに高クロック品を製品化してこなかったと言われる。それは、Intelの場合、AMDなど互換CPUメーカーと較べて、大量に出荷しなければならないからだ。だから、より高クロック品を選別できる場合でも、しない場合があったという。それに対して、互換MPUメーカーは、ぎりぎりまで高クロック品を選別する傾向があると言われていた。
 Intelは、はたして無理矢理933MHzを選別しようとしているのか、それとも潤沢に供給できるのか。これは、933MHzが実際に出てくる時までわからない。しかし、どちらにせよ確かなことはひとつある。それは、Intelがx86最高クロックの座を守ることに執念を燃やしているということだ。Intelのすごみはここにある。


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('99年12月8日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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