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第24回 : モバイルの一環としてのデジタルカメラの動向



 この連載、ノートPCも、PDAも、携帯電話も、そして場合によってはデジタルカメラやMP3プレーヤまでも視野に入れながら、持ち歩くデジタルモノならなんでも好きなことをやるものにしましょう。なんて話を担当者としながらはじめたのだけど、デジタルカメラやMP3プレーヤー(実際にはMP3とは限らないから別の統一の名前が必要だと思う。WORLD PC EXPOではソリッドオーディオプレーヤーと呼んでいたベンダーもあった)については、他のコラムでも取り上げられるので、これまで取り上げる機会がなかった。今回はモバイルなデジタルカメラについて書いてみよう。


■ 性能ばかりがスペックでもない

 PCの周辺機器としてデジタルカメラを捉えてしまうと、どうしても数字のスペックにこだわりがちだ。もちろん、少し前までは画素数が圧倒的に足りなかったから、高画素の製品をひたすら追うのも正解だった。
 でもカメラが好きでたくさん持っている人ならわかると思うけど、用途によってベストなタイプが違うのは自明のこと。画素数も200万画素なら300dpiで2Lサイズ(4×6インチ)に相当するか、少し下回る程度。サービス版へのプリントともなれば、画素数的な問題は全くなく130万画素でもいいくらいだ。焦点は画素数から画像の品質やカメラとして使いやすさに移ってきていると思う。

 それでも画素数が多いことに越したことはないのだけど、個人的に持ち歩く道具としては200万画素で十分。作品を取るデジタルカメラとしては、実売で54万円程度のニコンD1などがあるけれど、レンズの交換ができない小さな小さなCCDを使うパーソナル向けデジタルカメラを使う僕は、もっと違うところを見ていたいと思うのだ。

 そんな僕が選んできたデジタルカメラの基準は、とにかくコンパクトで、ある程度の質感があることの2点だ。初めてデジタルカメラなるものを所有したのは、リコーのDC-1(アクセサリキット込みで20万円もした)。そしてその後は、PowerShot Aシリーズの歴代各モデルだった。

 デジタルカメラの利点はいろいろあるけれど、その中のひとつに、常に携帯して好きな時に好きな映像を収められる。ということがあると思う。ランニングコストを意識する必要がないからだ。でも、そんな使い方をするためには、いつでも鞄に忍ばせておけるようなコンパクトさが大切。そして何より使っていて恥ずかしくないような、道具としての質感(これは完全に自己満足だけど)が重要だと思う。
 DC-1に関して言えば、110カメラを思い出すスタイルが少し恥ずかしかったけど、PowerShot Aシリーズはその点合格。ただしこのシリーズ。操作性が悪く、何をやるにもワンテンポ遅れる感じで、かなり使い込んで慣れた後でも、やっぱり使うのが面倒。そんな欠点とともに、画素数も一歩流行から後れていたため、誰にでもオススメできる万能製品とは言い難かった。
 でも新製品のPowerShot S1は、操作性も操作レスポンスも改善され、少し薄くなって画素数も200万越。ああ、これでやっと……という気持ちでストレス無く持ち歩くことができている。いや、広角側の画角が35ミリになって寂しい……とか、少しだけ液晶が小さくなったんだなぁ……とか、よ~く見れば前モデルよりも劣っている部分もあるのだけど、そんなことが気にならないほど快適になった。これまでがストレスありすぎたのかもしれないが。

 断っておくけれど、別にキヤノンのデジタルカメラを贔屓するつもりはない。僕はEOSユーザーだから、多少キヤノンに強く期待する部分はあるけれど、どうも高価で大きく高画素というデジタルカメラが好みだとは思えないだけなのだ。そんな意味では、150万画素だけれども富士写真フィルムのFinePix 1700Zも食指を伸ばしたくなる製品だ。値段やスペック、質感のバランスは、なかなかのものだと思う。


■ 複合型デジタルカメラは市場を広げる

 上記は超個人的なデジタルカメラの選び方の話だけど、実際にデジタルカメラを買った友人に聞いてみると、あまりPCモノに詳しくない人は十中八九「面倒くさい」という意見を言う。特にPCカードが必ずあるノートPCを持っていない人にとって、シリアルポートを使った画像の転送は苦痛なのは容易に想像できる。その上、読み出しのソフトが貧弱だったり、「とぅえいん? なにそれ?」といった感じで、普段使っているソフトで画像を取り込む方法がわからなかったりと、なかなかデジタルカメラ使いこなしのハードルは高いのだ。

 ソフトの方は徐々に改良されつつあるし、デジタルカメラ活用モノのアプリケーションソフトも流行している。問題を解決できるのは時間の問題なのだけど、やはり画像データ転送の手間は解決できない。USBは確かに良い解決策だし、なにより高速。でもケーブルで繋がなければならないんですよ? 面倒じゃありませんか。それでなくてもパソコンにはたくさんのケーブルが繋がっている。USB機器が増えれば、だんだんケーブルの種類は少なくなるけれど、やっぱり裾野をもっと広げるためには、さらなる簡単なソリューションが必要だと思うのだ。

三洋デジカメ
【三洋電機、デジタルカメラ一体型PHS端末】
 そんなことは誰でも考えているのか、近ごろデジタルカメラも複合機の時代らしい。つい先日は三洋電機がデジタルカメラにPHSを組み込んだ試作機を発表している(三洋電機の発表ではデジタルカメラを一体化したPHSらしいけど、見た目はどう見てもデジタルカメラにPHSを組み込んだ感じ)。また、富士写真フイルムはインスタントカメラのチェキと同じフィルムに印刷可能なプリンタ内蔵のデジタルカメラ「プリンカム」を発表した。

 前者はどちらかというと業務用(たとえば不動産物件を撮影すると、その場で画像が事務所や顧客のところに届くなど)だろうし、後者は業務用にもおもしろいが個人で新しい楽しみ方ができる、パソコン抜きでも遊べる製品だと思う。もしかすると、この後も複合型のデジタルカメラはたくさん出てくるかも知れないが、いずれもPC抜きで使えるものになっていくはずだ。PCとデジタルカメラはセットで使わなくてもいい。そんな時代になってしまうかもしれない。

□「プリンカム」ニュースリリース
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj514.html


■ でもパソコン屋としては

 でもパソコン屋の僕としては、あまり複合型は好きになれないというのが正直な感想だ。複合型の機器はデジタルカメラ以外にもたくさんあるけれど、いずれも機能が固定されてしまうのがどうも気にくわない。複合された機能のうち、どれかひとつを変えようと思うと、全部を取り替えなければならないからだ。

 その解決策は、無線によるコミュニケーションによる手法を統一することだろう。そして無線で構築されたネットワークの中で、お互いの機器が複合機のように連携して使えれば、見た目は別々のモノでも一体型と変わらない使用感を得ることができる。
 たとえばPHSや携帯電話にデジタルカメラやPDAを内蔵させるのではなく、デジタルカメラやPDAを操作すると、ポケットや鞄に入っているPHSや携帯電話と無線で接続され、通信できればいい。小型プリンタを取り出してデジタルカメラからプリント指示をすれば、無線でプリンタから写真が出てくればいい。そんな無線のネットワークで結ばれる機器の仲間として、PCが参加すれば、パソコンとデジタルカメラももっと仲良くなることができるだろう。

 そんなわけで期待している技術が、月並みながらBlueTooth。パソコン用のIrDAの代替ソリューションとして知られるBlueToothだけど、デジタルカメラもPDAも、デジタルモノが一体型と同じように動くようになるためのキーテクノロジーとなるはずだ。違うメーカー間での相互接続や操作が、どこまで統一できるかといった問題はあるけれど、何年か後には機能を複合させる意味が無くなるような世界を構築してくれることを期待したいものだ。

[Text by 本田雅一]


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