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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Intelの発表後も残るIntel 820延期の疑問


●IntelとRambusが公式に820の遅れを説明

 はたしてIntel 820はいつでるのか。なぜ、前例のないドタキャンに踏み切ったのか。Intelが820の遅れを発表した今も、その答えはまだ鮮明ではない。

 米Intelや米Rambusのプレスリリースによると、今回の延期はDirect Rambus DRAM(RDRAM)回りのエラーのよるものだという。具体的には、「3つのRIMMスロットを備えたマザーボードで、3スロットそれぞれにRIMMを装填した場合に、エラーが起こる場合がある。また、3スロットのうちの2スロットにしかRIMMを装填しなかった場合(3スロット目はダミーを装填した場合)でも、最悪のケースではエラーとなる場合があることがわかった」(インテル日本法人)という。

 Intelによると、現在はこの問題の原因がチップセット、メモリ、マザーボードのいずれにあるのかを特定するために、プラットフォーム全体での評価を行なっている最中だという。Intel 820のリリースがいつになるかは、その原因が突き止められ、対策の方法が決まってからになるという。


●まだ残る疑問

 Intel 820+RDRAMシステムの多くは、3RIMMスロットを備えると見られている。そのため、この問題はある程度深刻だ。2RIMMしか装着しなかった場合でもエラーが起こりうるとなると、メモリ増設は1枚であっても危険性の高いものになってしまうからだ。しかも、Intel 820マシンを購入するハイエンドユーザーなら、メモリ増設を考える割合が高いと思われる。そうした危険を考え、最悪のケースを避けるために出荷を延期したとするなら、これは一応納得できる説明だ。しかし、疑問はまだ残っている。

 そもそも、現在のIntel 820のバージョンであるB1ステップのサンプル品で、3RIMMを挿した場合などにエラーが起きるというのは、じつは前から業界では知られていたことであり、ぎりぎりになって判明したものではない。じつのところ、B1ステップが製品として果たして出せる品質なのかを疑問視する声もあった。それなら、なぜもう少し前に延期にしなかったのか。

 また、Intelには、とりあえず発表をしておいて、製品の実際の出荷を遅らせるという選択肢もあった。実際に、Intel 810の時は発表から、搭載製品が実際に出荷されるまでタイムラグがあった。特に、今回の場合はPCメーカーのほとんどは、実際のIntel 820製品は10月末の0.18ミクロン版Pentium III(Coppermine)登場以降に出す予定でいた。つまり、1ヶ月の間があったわけだ。

 それに、チップセットの初期のステップには、多少の問題やスペックと実際の製品が異なるケースは、これまでもあったと指摘する声もある。それでも、今回までは直前で発表を取りやめることはなかった。また、メモリの相性問題では、66MHz SDRAM移行の時の方が深刻だったという関係者もいる。


●Coppermineに間に合わない?

 こうした疑問が残る以上、今回のIntel 820延期の裏には、エラッタの修正だけでなく、もっと根本的な見直しがあるのでは、という見方はなかなか消えないだろう。とくに、今回のようにIntelの面子をつぶすことになるような決定は、同社のトップクラスの幹部でないと下せない。トップが過激な決定に出るには、何か意図がある可能性はある。実際に複数の情報筋から、Intel 820をIntelが見直す可能性があるという情報が入っている。

 また、うがった見方としては、台湾の地震でチップセット市場でのライバルになるVIA Technologiesからの製品供給が滞ると見て、延期を決定したのではという意見もあるが、これは何とも言えない。今回は、地震の影響で台湾ベンダーがIntel 820どころではない状況で、そのため業界の裏で流れる情報が少なくなっているようだ。

 ともかく、当面の焦点は10月末のCoppermineのリリースに、Intel 820が間に合うかどうかになった。しかし、問題を修正して間に合わせられる可能性は低いと思われる。というのは、もし10月末までになんとかなりそうなら、今回は製品の発表だけしておいて、製品出荷だけを遅らせるという穏当な手段を選ぶはずだからだ。それをしなかったということは、間に合わない可能性が高いことになる。

 また、問題がチップセット側のインターフェイスにあった場合は、Intelは設計を修正してマスクを変更、それを製造ラインに突っ込んで、出てきたウエーハから採ったチップで再び検証、それでOKが出たら、そのマスクを量産ラインに突っ込むというサイクルを経なければならない。半導体製品のコワサは、このタイムラグで、ちょっとした修正で、すぐに2ヶ月程度はかかってしまう。そう考えると、チップセットに手を入れなければならない場合、すでに修正したマスクがラインに載っていなければ、Coppermineには間に合いそうもない。

 では、もしCoppermineにIntel 820が間に合わない場合、Intelはどうするのだろう。グラフィックス統合のIntel 810eに733MHzのCoppermineを挿すように指導するのか? VIAにみすみす大口顧客を取られるのを見過ごすのか? それともウルトラ級の技を何か繰り出すのか? 転んでもタダでは起きないIntelが、どう仕切直すのか見物だ。

□Intelのプレスリリース(英文)
http://www.intel.com/pressroom/archive/releases/dp092799.htm
□Intelのプレスリリース(和訳)
http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press99/990928a.htm
□Rambusのプレスリリース
http://www.rambus.com/general/press_realeases/pr_092799.html


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('99年9月28日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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