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元麻布春男の週刊PCホットライン

HDDバックアップソフトを利用したOSクリーンインストール



■頻繁に発生するOSクリーンインストール

 筆者は職業柄、頻繁にOSのインストールを行なう。たとえば、グラフィックカードの評価を行なう場合、グラフィックカードを変更するたびに、他のグラフィックカード用のディスプレイドライバが一切組み込まれていない状態(VGAの状態)から、評価対象のグラフィックカードのディスプレイドライバのみをインストールして、ベンチマークテストを実行する必要がある。これは特に、同じグラフィックチップを用いた異なる複数のグラフィックカードの評価を行なう場合に必須だ。

 以前は、こうした作業はすべて律儀にOSをゼロからインストールしていた。今でも、少しでも挙動が不信な場合はOSのクリーンインストールを行なうが、ちょっとだけ手抜き(?)をさせてもらうことが増えている。グラフィックカードの場合なら、VGAでWindows 98をセットアップし、その状態をファイルとして丸ごとバックアップし、カードを変更するたびごとにバックアップしておいたVGA環境をレストアするのである。これなら、OSをクリーンインストールするより、手早くクリーンインストール状態を復元可能だ。

 この手は、マザーボードやBIOSが変わると効かない(Windows 98なら、再びデバイスの検出が行なわれ動作するようになるものの、その状態がOSをクリーンインストールした状態と100%同じという確信が持てない)が、サウンドカードやネットワークカードなど、大半の周辺機器やソフトウェアを評価する際に使えるため重宝している。また、先週取り上げたARMADA M700のように、メーカーから貸出しされたシステムの評価を行なう場合、返却時に手元に届いた状態を復元しなければならないため、同じような処理を行なう。

 こうした処理を気軽に行なえるようになったのは、適したバックアップソフトウェアが登場したからである。この種のソフトとして筆者の手元には、米PowerQuestの「Drive Image」(国内ではネットジャパンが販売)とアーク情報システムズの「HD革命BackUp」の2種類がある(他にSymantecにも同様なソフトウェアがあるようだが、筆者が購入を考えた時点で8GBを超える大容量ハードディスクに対応していなかった)。いずれも、ハードディスクの内容を、ブートイメージも含めて、丸ごと1つのファイル(バックアップファイル)に記録するものだ。

 これらのアプリケーションは、本来は常用するシステムのバックアップを目的としたソフトウェアだと思うのだが、筆者はもっぱら実験マシンのバックアップに使っている。筆者の実用マシンである仕事マシンは、OS、インストール済みのアプリケーション、自分が書いた原稿を含む各種のデータ等の総容量が5GB程度あり、ハードディスクにバックアップしていたのでは、さすがにもったいない。本来のバックアップには、テープバックアップを使っている。したがって、Drive ImageやHD革命BackUpといったソフトウェアについて、筆者の使い方はちょっと不規則なものかもしれない。


■DOSベースの「Drive Image」:法的に問題のあるライセンス

DOSベースのDrive Imageだが、ユーザーインターフェイスはWindowsを模しており、使い勝手は悪くない。イメージファイル(バックアップファイル)にコメントが加えられるのはとっても便利

 さて、筆者が最初に購入したのは、Drive Imageだ。Windows 9x上からプログラムを起動することが可能ではあるものの、基本的にはDOSのプログラムであり、それゆえの長所と短所を持つ。DOSプログラムであるための長所は、プログラムの運用がフロッピーベースで可能な点だ。いまさらDOSプログラムをフロッピーベースで、と思うかも知れないが、バックアッププログラムのようにハードディスクからの起動がアテにできない状況でも利用できなければならないアプリケーションでは、強みになりうる。

 また、DOSだからといって、NTFSなど本来DOSが扱えないファイルシステムにアクセスできないわけではない。むしろ、ハードウェアに直接アクセス可能なシングルタスクのDOSであるがゆえに、かえって異なるファイルシステムへのアクセスができる、ということもありえる。ちゃんとした?Windowsベースのアプリケーションでは、直接ハードウェアへアクセスできないし、そのOSのファイルシステムに束縛されることがあるかもしれない。

 DOSプログラムである最大の難点は、扱いにくさだ。ユーザーインターフェイスは、DOSベースとはいえGUI風になっており、特に使いにくいとも思わない。問題は、DOSで標準的に扱えない(言いかえればBIOSでハンドルされない)ストレージをバックアップする際に、どうやってリアルモードドライバを組み込むか、ということだ。最新版ではIomegaやSyquestのリムーバブルドライブ用のドライバがサポートされるようになっている(ただし筆者はいずれも所有しないため実際に試したわけではない)が、CD-R/RW、MO、ネットワークドライブといった「ストレージ」にバックアップファイルを作成するには、DOSの知識が不可欠となる。

 すなわち、CONFIG.SYSでドライバを組込み、なおかつその状態でアプリケーションが必要とするコンベンショナルメモリを確保する、という古くからのユーザーにはお馴染みの問題だ。とはいえ、Drive Imageが本質的にDOSアプリケーションである以上、こうした点を踏まえて使うべきものとも言える。月並みな言い方をすれば、パワーユーザー向き、というところかもしれない。

 筆者は、実験マシンについては、2台目のハードディスクをバックアップファイル用に用意することにしているため、リアルモードドライバの問題と、ほとんど無縁でいられる。難点をあげれば、起動用(実行用でもある)のフロッピーディスクが、最新版ではついに3枚組みになってしまったことだが、「使える」ことに違いは無い(SuperDiskを使えば起動用フロッピーは1枚にできる)。最新版になって、処理速度が著しく向上したことも、「使える」印象を強くする。

 筆者にとってDrive Imageの真の問題は、技術的なものではなく、法的なものだ。筆者は同じ実験マシンで、システムの起動イメージのバックアップとレストアを行なうことしかしない。これは、Drive Imageのパッケージにある「シングルユーザーライセンス」を満たすものと考えているが、Drive Imageのインストール時に表示されるライセンスには、「システムに永続的に接続されたハードディスク」での使用がうたわれている。実験マシンのハードディスクなど、頻繁に交換するものであり、とても「永続的」とは言えない。本来、この種のソフトは、ハードディスクの故障に対応するという意味もあると思うのだが、永続的に接続していたハードディスクが壊れたら、バックアップファイルをリムーバブルメディアに残していても、新しいハードディスクに復元することは許されないのだろうか?


■Windows 9xベースの「HD革命BackUp」

WindowsベースのHD革命BackUpは、Windowsからアクセス可能なデバイスならすべて利用可能。ただし、バックアップファイルを分割する際の自由度はあまり高くない

 この、なんだか良く分からない(居心地の悪い)ライセンスが、筆者に他のソフトを試してみたい、と思わせる理由となった。それがHD革命BackUpである。Drive Imageと異なりHD革命BackUpは、Windows 9xアプリケーションであり、それゆえの長所と短所を持つ。言うまでも無く長所は使い勝手の良さだ。Drive Imageの項で触れた、ネットワークドライブやMO、CD-RWといったDOSベースでは利用しにくいストレージも、Windows 9xベースであればバックアップファイルを書き出すスペースとして、簡単に利用できる。PCでWindows 98が動いている限り、バックアップ・レストアは、ワンタッチに近い。

 Windows 9xベースであることの最大の短所は、Windows NTなど他のOSでは利用できないことだ。これはある意味、やむを得ないトレードオフであり、文句を言う筋合いではない。問題は、Windows 98が動かなくなった時だ。もちろんHD革命BackUpにも、レストア用フロッピーを作成する機能がある。だが、このレストア用フロッピーディスクでは、もはやWindows 98がシームレスにアクセスできたさまざまなデバイスへはアクセスできない。レストアフロッピーはDOSベースなのである。

 問題を複雑にするのは、このレストアフロッピーが1枚であることだ。日本語に対応したレストアプログラムがフロッピー1枚で完結しているというのは、単純に考えれば使い易い。Drive Imageでは同じことをするのにフロッピー3枚を要する(ただし、こちらはバックアップも可能なフルセットのプログラムであるため、同列に枚数を比較するのはフェアではない)。だが、1枚にギチギチに詰めこんだせいか、レストアフロッピーにはほとんど空きがない。リアルモードドライバを組みこむ余地がほとんどないのである(Drive Image同様、SuperDiskを使えば、とも思うが、HD革命BackUpのバックアップファイル分割機能が最低230MB MOの容量を前提としていることを思うと、SuperDiskとのマッチングは決して良くない)。

 それに、本プログラムの性格を考えれば、DOSのデバイスドライバと格闘するのは、決して望ましいとは言いがたい。やはりBIOSでサポートされたデバイス、特に2台目のハードディスクを用意する使い方が本命だろう。これだとミラーリングと大差ないように思うかもしれないが、2台のハードディスクに制約が少ない(バックアップファイルが書き込める容量さえあれば、2台目のドライブは何でもかまわない)ことなど、HD革命BackUpの方が自由度が高い。

 実験システムにハードディスクを2台接続している筆者の場合、上のような問題はない。ならば、Windows 9xに限定さえすれば、HD革命BackUpは理想的な実験マシン用バックアップソフトウェアかというと、残念ながらそうとも言いがたい。筆者にとってHD革命BackUpで最もフラストレーションが溜まるのは、バックアップファイルのファイル名に数字が使えないことだ。ファイル名が8.3形式に限定されるのは(フロッピーベースのレストアまで考えると)やむを得ない面があるが、数字が使えないのは非常に痛い。

 たとえば筆者はファイル名に、98-V3-NS.HDB(HDBはHD革命BackUpが用いる拡張子)の様な名前をつけたい。これは、Windows 98にVoodoo3を組み合わせているが、サウンドドライバは無し、という環境を意味する(サウンドカードの比較評価に使いそうな環境である)。ファイル名に数字が使えないとなると、かなり自由度が低くなってしまう。とはいえ、居心地の悪いライセンスよりは、こちらの方がマシか、というのが筆者の現状である。

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[Text by 元麻布春男]


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