★ ゲームソフトインプレッション ★
重厚なストーリーを楽しむドラマチックRPG
西風の狂詩曲(ラプソディ)
- ジャンル:ロールプレイングゲーム
- 発売元:日本ファルコム
- 価格:未定
- 対応OS:Windows 95/98
- 発売日:10月8日
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【ゲームの内容】
韓国のソフトハウスSoftmaxの超大作ロールプレイングゲームを、日本ファルコムが日本語に移植。1年間をかけて日本市場向けに徹底的にカスタマイズされた。
【動作環境】
- CPU:Pentium 100MHz以上(Pentium 166MHz以上推奨)
- RAM:16MB以上(32MB以上推奨)
- HDD:180MB(最大500MB)
- 解像度:640×480、HighColor表示可能
- サウンド:DirectSoundに対応したPCM音源
- CD-ROMドライブ:4倍速以上のCD-ROMドライブ
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■日本ファルコムのホームページ
http://www.falcom.com/
■「西風の狂詩曲(ラプソディ)」の製品情報
http://www.falcom.com/zephyr/index.html
■韓国Softmaxの「西風の狂詩曲(ラプソディ)」の製品情報(和文)
http://www.softmax.co.kr/Japanese/game/Zephyr/Zephyr%20Home.htm
韓国で大ヒットしたRPGを日本語版に完全移植
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写真左が物語の主人公、シラノ・バーンスタイン。写真右がシラノの婚約者、メルセデス・ボルジア |
日本ファルコムといえば、筆者を含むおじさんゲーマーたちにとって、特に思い出深いソフトハウスだ。謎を秘めたストーリーとドラマチックな展開で、多くのファンを魅了した「Y's(イース)」シリーズ。豊富な魔法と追加シナリオ集で、とことん遊べた「ソーサリアン」シリーズ。魅力的なキャラクターが何人も登場する「英雄伝説」シリーズも、忘れることができない作品のひとつ。いずれも美しいグラフィックと感動的なBGM、そして抜群の操作性を備え、その後登場したあまたのRPGに影響を与えてきた。
いわゆる「和製RPG」の基礎を築いたのがこれらの作品であり、日本ファルコムが成してきた功績は大きい。もちろん、その後も多くの名作ゲームが日本ファルコムの手によって作られ、若い世代にも同社の熱烈なファンは多いはずだ。
そしてこの秋、日本ファルコムが韓国のソフトハウスSoftmaxと提携して移植した初の作品、「西風の狂詩曲」がリリースされる。韓国で8万本を越える売り上げを記録した人気RPGをベースに、日本ファルコムのスタッフがほぼ1年を費やして、ビジュアル、バランス、システム、操作系に徹底的な改良を加えたという。
さて、その仕上がりはどうだろうか?
「モンテ=クリスト伯」をモチーフにした重厚で骨太なストーリー
「西風の狂詩曲」のストーリーは、こんな感じだ。
のちに“創世戦争”と呼ばれる悲劇的な戦争の終結から50年。かつて強大な勢力を誇っていたゲイシル帝国は小国に分裂し、権力闘争が続く封建時代へと逆行してしまう。世はまさに暗黒の時代にあった。
そんな中、旧帝都ゲイシル市の領主の息子シラノ・バーンスタインは、新興宗教「帝国主神教」の枢機卿チェザレ・ボルジアの娘、メルセデスと婚約を決めた。しかし、誰もが祝福してくれるはずだった結婚式の当日、シラノは突然悪魔崇拝の罪で逮捕されてしまう。旧帝国領支配の野望に燃えるチェザレによって濡れ衣を着せられたシラノは、“1度入ったら2度と生きては出られない”インフェルノ監獄へ、有無をいわさず投獄されてしまった。
地熱と硫黄に焼かれて、苦しい獄中生活を強いられるシラノ。ある日彼は、ふとしたことから「創世戦争」を生き残った悪魔デイモスに出会い、過去の戦争と、それに至った経緯を知らされる。帝国主神教が異端として禁じるものこそが、まさに真実だったのだ。そして幽閉生活13年目を迎えたある日。帝国革命軍の襲撃によってインフェルノ監獄から解放されたシラノは、自分を陥れた者たちに復讐を果たすべく、長い旅の第一歩を踏み出した。
……と、ここまで書けばカンのいい人なら気がつくはずだ。そう、このゲームはアレクサンドル・デュマ作「モンテ=クリスト伯(日本では黒岩涙香の巌窟王)」をモチーフにしている。主人公シラノはエドモン・ダンテス、メルセデスはそのままメルセデス、インフェルノ監獄がシャトー・ディフというわけだ。
ただし、借りたのはあくまでも背景設定の一部で、その後の展開や登場人物は独自のシナリオで構成されている。神話やファンタジー、SF的なペーソスも盛り込まれ、ゲームとしても楽しめるストーリーだと思う。
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相思相愛の2人は、結婚式を目前にしていたが…… |
メルセデスの父、そして「帝国主神教」の教主チェザレ・ボルジアの奸計によって、シラノは異端者の烙印を押されてしまう |
雪降る街角で晒しものにされるシラノ |
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シラノはデイモスと名乗る異形の悪魔から「創世戦争」の真実を知らされる |
13年の幽閉生活の後、シラノは革命軍に救出される |
変わり果てた姿のシラノは、チェザレ・ボルジアに復讐を誓う |
難易度はほどほど。凝った演出とシナリオで楽しむ
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会話や立て札から重要な情報を得る |
ときにはこのような選択を求められるときもある |
画面のデザインは、「Y's」や「英雄伝説」に似ている。平面的なマップを俯瞰するタイプで、スーパーファミコン時代の「ファイナルファンタジー」にも近い。そういう意味ではちょっと懐かしくも感じるが、マップ全体が見やすく、またキーボード(カーソルキー)を使った操作にもよくマッチしている。NPCとの会話も吹き出し式で、要所要所にキャラクターのアップが画面にオーバーラップする仕組み。シナリオは1本道で(本質的な部分での)、決められたイベントを順にクリアしていかなければならない。「このゲームならでは」という意外性はなく、システムというよりは、やはり仕掛けやバランス、ストーリーで楽しむゲームだと思う。
しかし、そのぶん演出は素晴らしい。光と影を上手に使ったグラフィックはキラキラと美しく、プレイの途中に挟まれたムービーシーンはなかなかのもの。過去(回想シーン)と現在がクロスオーバーしながら遊ばせる手法も、シナリオの厚みを増している。イベントをクリアするために解かねばならない謎も、ほどよい難易度に感じた。セリフの言い回しやシーンの一部に、やや冗長(ありていにいえば演出過剰)に感じたところがないわけではないが、そのぶん感情移入しやすく、主人公のシラノになりきって遊べるところがいい。
バリエーション豊富な武器と魔法
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タクティカルコンバットを採用した、ターン制の戦闘シーン |
そして戦闘シーンの盛り上がりも、このゲームの素晴らしい点だ。敵と遭遇すると、そのままの状態でスクウェアを使ったタクティカル・コンバットに突入する。戦闘は緩やかなリアルタイム制で、敏捷性に優れたユニットから順に移動・攻撃を行ない、どちらかが全滅か撤退するまで繰り返される仕組みだ。武器は、剣のように隣接した敵のみを攻撃できるもの、槍のように数スクウェアの範囲で戦えるもの、銃のように遠距離で攻撃できるものがあり、どれを装備するかによって戦い方は変わる。また射線上に味方のユニットが入ってしまうと銃や槍は使えなくなってしまうので、どのユニットをどう配置しながら戦うかも、戦術上とても重要だ。パーティ編成やフォーメーションも自由で、戦い方のバリエーションは無数に考えられる。プレーヤーの好みが如実に現れるところでもあり、「誰に何を持たせるか」、「どんなフォーメーションを使うか」を思案するのもまた楽しい。
魔法も様々で、キャストするキャラクターを中心に広がる爆発型、特定の方向に伸びる火炎放射型と、いろいろなタイプが用意されている。強さや属性も豊富で、どの場面でどの魔法を使うか的確な判断が求められる。敵が複数の場合、うまく誘導して一直線上に並べ、一気に片づけるといった戦術も可能だ。
秋の夜長をドラマチックに過ごしたいあなたに
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武器として銃が登場するというのも、このゲームの特徴だ |
もともと人気があった作品を十分練りなおしただけあって、戦闘を含めたゲームバランスはとてもいい。ほどよく悩み、ほどよく戦い、ほどよくレベルアップしながら、どんどん先に進むことができる。シナリオも奥が深く、アッと驚く仕掛けも満載だ。ゲームというよりも、むしろ、質のいいアニメを観ているかのような感覚すら覚える。テンポよく進むため、一度始めるとなかなか止めることができない。今回日本語版に移植するために描き起こされたグラフィックや、日本ファルコムの作品らしいBGMもよかった。秋の夜長をドラマチックに過ごしたい……というなら、「西風のラプソディ」はお奨めの1本だ。
敢えて残念だった点を挙げるなら、キャラクターのネーミングがいまひとつオリジナリティに欠けているように感じた点だろうか。主人公の婚約者メルセデスは「そのまま」だし、シラノやボルジア、チェザレ(シーザー)も、人名としてはストレート過ぎる。奇抜な名前にする必要はないが、もうひとひねりあってもよかったかもしれない。そうすれば、より独自色の強い作品に仕上げることができたと思う。
我々はゲームといえばまず国内、そしてアメリカのタイトルに注目してしまいがちだが、『西風のラプソディ』によって、韓国にも素晴らしい作品があることを知った。この作品がきっかけとなって、韓国、そしてアジア諸国から質のいいゲームが移植されることを期待したい。
(C)1998 Softmax Co.,Ltd. / 1999 Nihon Falcom Corporation
【筆者紹介】
- 名前:駒沢丈治(こまざわじょうじ)
- プロフィール:
プロフィール:パソコンからGAMEBOY、将棋、テーブルトークRPGまで、あらゆるゲームを愛する中年ゲーマー。「西風の狂詩曲」はBGMがとてもいい。CDが発売されたら、たぶん買ってしまうだろうな。ああ、ファルコムってファルコムって、いつもこう!!
【レビューハード環境】
- 使用ハード:自作PC/AT互換機(K6-2/400、RAM 128MB、HDD 6.4GB、24倍速CD-ROM、Diamond Viper V550、ENSONIQ PCI Audio)
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ウォッチ編集部内PC Watch担当
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