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DVD-ROM+CD-RWドライブの可能性



■ 東芝がDVD-ROM + CD-RWドライブを発表

SD-R1002
東芝「SD-R1002」
 Toshiba America Electronic Components(TAEC)は、DVD-ROMを読み出せるCD-RWドライブ(あるいはCD-RWの書き込みが可能なDVD-ROMドライブ)であるSD-R1002を7月30日に発表した(国内発表は8月2日)。

 SD-R1002は、CD-RおよびCD-RWへの書き込み速度は4倍速、CD-ROMの読み出し速度は24倍速、DVD-ROMの読み出しは4倍速のATAPIドライブ。現在サンプル出荷中で、9月から量産、10月にはキットとして入手可能になる見込みだ。キットの実売価格は400ドルを切ると予想されている。また新聞報道によると、リコーも同等の機能を持ったドライブのサンプル出荷を8月から開始するようだ。

 読み出し専用のメディアとしては現在最も注目を集めているDVD-ROMと、書き換え可能なメディアとして最も人気のあるCD-R/RWの合体は、言われれば「なぜ今までなかったの?」と思うような組合せに違いない。だが、メーカーにとってDVD-ROMとCD-R/RWの結婚は、ひょっとすると「禁じ手」だったのかもしれない。次世代の記憶メディアとして期待をかける、DVDクラスの書き換え可能メディアへの移行が遅れる可能性があるからだ。

 とはいえ、移行がスムーズにいかない理由の1つが、DVD-RAM、DVD-RW、DVD+RWなど、様々な仕様を乱立させてしまったメーカー側にあることもまた事実。メディアの価格が高いこと、DVD-RAMの読み出しが可能なインストールベースが小さいこと(DVD-RAM互換のDVD-ROMドライブの普及率が低いこと)、一般のビジネス用途には、必ずしも数GBクラスの書き換え可能メディアが必要とされていない、といったことも考えれば、DVD-ROMとCD-R/RWの結婚は、現実的な解には違いない。

■ FDDインターフェイス廃止の機運

 筆者が、このタイミングでDVD-ROMとCD-R/RWの合体機が発表されたことに注意をひかれたのは、この発表の数日前、PC2001 System Design Guideの最初のドラフトであるVer 0.3がリリースされたからだ。レガシー追放を加速させるSystem Design Guideの今回の目玉?は、FDDインターフェイスの追放にある。PCのFDDインターフェイスは、ISAバスあるいはLPCインターフェイスに接続されたスーパーI/Oチップ(正確に言えば、内蔵されているNEC μPD765相当のコントローラ)により実現されている。

 今回FDDインターフェイスが標的になった理由は、おそらくこのFDインタフェイスが、事実上唯一ISAのDMAコントローラを必要とするインターフェイスであるからだろう。他にDMAコントローラを利用するデバイスとしては、SoundBlaster互換のサウンドがあるが、こちらの方はDOSベースアプリケーションの減少(ゲームのWindows環境への移行)により、DMAを使ったレガシーインターフェイスの必要性が薄れている。サウンドデバイスは、自らがバスマスタになるPCIデバイスが主流になりつつあり、アクセスするAPI/DDIもWin32とWDMになろうとしているのである。すでにPC99で、サウンドデバイスは一切のISAリソースを使わないことが定められている。

 サウンドに比べてFDDインターフェイスが難しいのは、言うまでもなくFDがシステムの起動を行なうブートデバイスであるからだ。しかし、CD-ROMからの直接起動が可能なシステムが増えるにつれ、ブートデバイスとしてのFDの必要性は徐々に薄れはじめている。Appleが一足先にiMacでFDディスクを廃止したにもかかわらず、ユーザーからの反発はそれほど大きくなかったこともあり、PCでもFDをそろそろ止めよう、という機運が高まったのだろう。

■ CD-RWの可能性

 システムの起動はCD-ROMで行なえるとしても、PCにユーザーが利用可能な書き換えメディアが全くなしで済むかといえば、なかなかそう簡単にはいかない。ネットワークの普及により、データを持ち運ぶメディアへの要求は減少しているとはいえ、ちょっとしたデータを友人に受け渡す際など、FDを使う機会が全くなくなったわけではない。周辺機器によっては、デバイスドライバの配布に今でもFDを使っている。

 既存のFDに代わるものとして、最も自然な後継者は、FDに対し上位互換性を持つデバイスだ。現在SuperDiskが市販されているほか、HiFDが製品化発表レベル(1度米国で発売されたが、ヘッドクラッシュのトラブルにより回収され、現時点では再販売の予定等は不明)、UHCが技術発表レベルにある。これらのデバイスには、FD互換という利点があるものの、既存のFDDに比べ価格が高い、次世代のリムーバブルメディアとしては容量が小さい(SuperDiskが120MB、HiFDでも200MB)という欠点がある。

 もう1つのオプションとして考えられているのが、CD-R/RWドライブだ(特に米国ではCD-RWに対する期待感が強い)。これまでのドライブは、DVD-ROMとの互換性が欠けていたが、今回発表されたドライブはこの問題を克服した。FDディスクとCD-ROM/DVD-ROMドライブを1台で置き換えるデバイスとして、非常に有力なデバイスだ。確かに現時点でデバイスの価格は安くないが、量産により安価になることは期待できる。比較する金額が、DVD-ROMとFDDを足した金額であること、FD互換デバイスより容量が大きいことを考えれば、それほど悪くないかもしれない。

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【8月3日】東芝、DVDが読み取り可能なCD-R/RWドライブ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990803/toshiba.htm

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[Text by 元麻布春男]


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