プロカメラマン山田久美夫の

「オリンパス CAMEDIA C-21」
ファーストインプレッション


CAMEDIA C-21  オリンパスから214万画素CCD搭載の単焦点モデル「C-21」が発表された。
 本機のベースは、今年3月末のCeBITで参考出品された無名の単焦点モデルだ。会場に出展されたものに比べると、背面の操作部が、シーソー式スイッチから4ボタン式に変更されており、細部もリファインされている。夏のボーナス商戦ギリギリのこの時期まで出遅れた理由も、細部の改良に時間を費やしたからだろう。

 CCDは総画素数214万画素の1/2インチ補色系タイプを採用。総画素数から見て、上級機のC-2000ZOOMとは異なる仕様のCCDを搭載しているようだ。

 レンズは、7mmF2.4と単焦点タイプのなかでは明るい部類で「エプソン CP-800」と並ぶ大口径レンズだ。


●携帯に便利なクラス最小最軽量ボディー

 200万画素クラスで世界最小最軽量とうたうだけあって、サイズはコンパクト。重さも意外なほど軽量で、これなら常時持ち歩いても気にならない。200万画素機もここまで来れば、完全に常用機だ。その意味で同じ200万画素機でも、3倍ズーム機の「C-2000ZOOM」と異なった方向性を指向したモデルだ。

 手にしてみると超小型モデルにありがちな、撮影時の持ちにくさを感じない点に好感が持てる。前面に小さなグリップがあるため、意外なほど安定したホールドができた。

 デザインは全体に角張ったイメージで、大ヒット作「C-900ZOOM」の曲面系とは180度異なる。曲面デザインの場合、機能以上にボディサイズが大きくなる傾向があるため、角形デザインでコンパクトさをアピールしたかったのだろう。

 外装はアルミ素材を採用しているが、手にしてみると軽さや表面の仕上げのせいか、妙にプラスチック感がする。質感は悪くないが、カタログの商品写真から感じられる“高級コンパクトカメラ”のイメージとは、やや異なる印象だ。

 また、今回使用したβ版モデルでは、メインスイッチ兼用になっているレンズバリア部分の動きがかなり渋い点も気になった。

DSC-X100とほぼ同じサイズ
DSC-F55Kや、FinePix2700と比べるとやや小さめ


●専用リチウム電池+白色LED液晶の省エネ設計

 このサイズを実現するため、電源は単三型2本。しかし、アルカリ電池は使用できず、専用のリチウム電池(充電不可、1,100円)か、単三型ニッケル水素電池という仕様となっている。

 今回はリチウム電池を使って撮影してみたが、その持ちは十分。メーカーではニッケル水素電池の約2倍持つと言っているが、今回使用した感じでは液晶モニターを多用し、100枚以上撮影してもバッテリー表示はフルの状態で、かなりの枚数を撮影できそうな感じだ。これで1,100円ならばコストパフォーマンスもまずまずだが、問題はどこでも入手できるわけではないという点だ。

 本機の仕様上アルカリ電池が使えないため、外出先ではニッケル水素電池か、リチウム電池しか選択肢がないことになる。特にニッケル水素電池の充電が困難な旅先では、リチウム電池を利用するしかない。オリンパスにとって、このリチウム電池の採用は苦肉の策といえそうだ。

屋外(雨天)

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●起動2秒、記録待ち2秒未満の軽快さ

 起動時間は約2秒。記録待ちも約2秒以下と、撮影感覚はかなり軽快。オートフォーカスの測距速度も必要十分なレベルであり、ストロボの充電時間も最長で6秒程度と実用レベルだ。

 また撮影後に撮影した画像を、自動的に約1秒程度液晶上に表示してくれる「クイックビュー」機能もなかなか便利。これは他機種でも採用されている機能だが、オリンパスの場合、標準設定では液晶モニターがOFFになっている。光学ファインダーで撮影後、画像を確認する為にいちいち再生モードで表示するしかなかったことを考えると、便利になっている。

 液晶モニターは、電池寿命を考慮して、白色LEDをバックライトとして採用した省エネタイプの低温ポリシリコンTFT液晶を採用。これは電池の持ちにかなり貢献していると思われる。LEDバックライトと聞くと、液晶の視認性がやや心配だが、屋外での使用でも従来の“普及型”液晶モニターよりむしろ見やすい感じだった。

白色LEDを使用したバックライトが採用されている

 本機は機能面でもかなり充実している。なかでも便利だったのが、ISO感度の設定機能。通常はAUTOになっており、暗いシーンでは手ブレを最小限に抑えるため、自動的にゲインアップによる感度アップを行なう。もちろん暗いシーンではノイズ成分は増えるが、ブレて使えないよりは遙かに便利だ。また、最初からISO感度を200や400に固定する機能もある。

 このほか、本機ではストロボモードやホワイトバランス設定なども一通り行なえるが、一度メインスイッチをOFFにしてしまうと、ほとんどすべてが初期設定値に戻ってしまう。確かに、この方式は初心者には安全であり失敗も少ないが、ベテランがサブカメラとして使いたい場合には、はなはだ不便な機能だ。

 また、これらの設定は、ボディ背面の液晶表示と十字キーなどで行なうが、比較的使用頻度の高いマクロ撮影機能やストロボモード切替機能まで、このメニュー内で設定する仕様になっている点は実に面倒であり、理解に苦しむ部分だ。

 背面のスイッチ類はかなり小さく細く、指の小さな筆者でさえかなり押しにくい。これは誤操作を考慮してのデザインだと思うが、スペースには多少の余裕があるのだから、もう少しボタンを大きくして、より使いやすい操作性を実現して欲しい。さらに、角形のシャッターボタンも押しにくくデザイン優先の感じで、個人的にはあまり好ましく感じられなかった。

 オリンパスの場合、欧米など海外市場で高いシェアを誇るメーカーであり、日本人に比べ大きな体格の人が多いこと考えると、操作性にはもう少しきちんとした配慮をするべきだろう。

マクロ

ストロボ撮影

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●シャープで見栄え優先の絵作り

 今回使用したモデルはβ版ながらも、画質はなかなか良好。とくに解像度に関しては、200万画素クラスでもトップレベルの切れ味のよさを実現している。

 とくに印象的だったのが全体の色調だ。色の感じはC-2000ZOOMに比べると、かなり色味が強く乗った感じであり、比較的コテコテした色調だ。特に、赤やグリーンの再現性は実に個性的だ。逆に、肌色系は比較的ネムくて冴えない感じの仕上がりだ。

 全体にややアンバランスで、個人的にはあまり好みではない。だが、本機のターゲットであるユーザー層にとっては、このような印象的な色調は、むしろ好まれる方向性なのかもしれない。製品版ではよりリファインされることが予想されるので、最終的な絵作りは、製品版を見てみないと判断が付かないところでもある。

 なお、本機の記録媒体は今回もスマートメディア。同梱されているのは8MBカードだが、今回から非圧縮での記録モードが追加されたこともあって、このモードではたった1枚しか記録できない。もちろん、非圧縮モードを選んで撮影するユーザーなら32MBカードなどを利用するだろうが、できれば16MBカードを標準添付して欲しい。さらに、最近のCFカード系の大容量化と、経験上感じるデータが飛びやすいスマートメディアの欠点を考えると、オリンパスもCFカードなどの採用を本気で検討する時期にさしかかっているのではないだろうか?

屋外(雨天)

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●よくまとまった“常用”200万画素モデル

 単焦点タイプの200万画素級モデルはいまや各社で揃い、かなりの激戦区となっている。その中でも本機は、単焦点タイプならではの小型軽量さを前面に打ち出した、魅力的なモデルとして注目される。

 価格も89,000円と比較的手頃なレベルで、実販価格では7万円を切る可能性もあり、お買い得感もある。特に、初めてデジタルカメラを買ってみようという人にとっては、そのサイズや軽快感、コンパクトカメラ的なデザインや質感などが好まれそうだ。

 ただ、機能や操作性の面では、まだまだ改良の余地があり、ベテランがサブ機的な使い方をすると多少不満が出る可能性もある。このような用途で使うユーザーは一度店頭でじっくり触ってみることをお薦めしたい。

 いずれにしても、200万画素級単焦点タイプとしての完成度では、現行機の中でもトップレベルに位置するモデルであることは確実だ。特にこのクラスのモデルを気軽に常用したい人にとって、本機は十分検討に値するだけの実力を備えたモデルだ。

屋内

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□オリンパスのホームページ
http://www.olympus.co.jp/
□製品情報
http://www.olympus.co.jp/LineUp/Digicamera/C21/c21.html
□関連記事
【6月28日】オリンパス、200万画素クラス最小の「CAMEDIA C-21」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990628/olympus.htm

■注意■

('98年6月29日)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp