連載第3回 : メモリはこうやって値段が変わる! メモリ業界裏事情



■ 急激な値下がりをするSDRAMメモリ

秋葉原  ここ3カ月から4カ月の間にSDRAMメモリは半額以下になるという急激な値下がりをしています。買って半年も経たないメモリが1万円も安くなってしまうというのは、買った人には衝撃かもしれません。しかし128MBが1万円未満で購入できるとは怖い世の中になったものです。つい2~3年前には32MBぐらいが主流だった気がするのですが……。
 メモリの急激な値下がりは今回が初めてではなく、過去に何回かあります。また、値上がりしたこともあります。ここ数ヶ月でなぜこんなに急激に値段が下がっているのでしょうか? また、それを取り巻く裏事情は? メモリはどうやって価格が決まるか? 今回はメモリの裏業界を取り上げます。

 なお、メモリというとDIMMやSIMMのようなパソコンに内蔵する部品を想像しますが、これらは「メモリモジュール」であり複数個の「メモリチップ」が実装されたものを指し示しています。


■ メモリは換金性が高く、モジュールは作りやすい

 メモリは非常に換金性が高い商品です。パッと見では、単なる石の組み合わせですが、比較的簡単にお金に換えることができます。そのため相場があり、市場の状況に合わせて価格が毎日変動するのです。さらに、為替による影響も受けますし、その市場の複雑さは先物市場や株なんかより難しい相場ではないかと筆者は思います。

 メモリ業界にはメモリチップを製造しているメーカー(Micron/NEC/Hyundai等)と、チップを基板に実装し、メモリモジュールにするボードメーカー(メルコやアイ・オー・データ、KINGSTON等が代表的)の2種類に大別されます。このほかに、メモリチップを中心に売買/流通をするメモリブローカーも存在します。メモリモジュールというのは、新規格のころは作るのが難しいのですが、時間がたつとある程度の設備を用意すれば簡単に作ることができる商品です。もちろん品質の良いメモリモジュールは良い設備と質の高いチェックをしており、これらを実践している有名なボードメーカーが存在するわけですが、最近はこの垣根も低くなってきています。

 メモリは色々なチップメーカーやボードメーカー、そしてブローカー(流通業者)、メモリを搭載する大手PCメーカーなどが複雑に絡んだ市場です。それぞれの一挙一動が市場の価格に反映される場合がある市場なのです。その一部が秋葉原のマーケットであり、ショップでの店頭価格に反映されてくるのです。


■ メモリの価格が変わる理由「需要と供給」

 メモリの価格は需要と供給のバランスにより毎日のように変動していきます。世界的にパソコンの生産数/販売数が高まることにより、組み込まれるメモリも増え、値段は安定します。さらにパソコンに組み込まれる数が増えすぎると、需要に対して供給(メモリチップの生産量)が足りなくなります。メモリはパソコンを動かすにあたって絶対必要な部品ですし、メモリが手に入らなければメモリの数十倍近い価格で売れるパソコンの販売機会を逃してしまいます。そこで、パソコンメーカーはメモリの獲得合戦を行なうようになり、少し高い価格でもメモリを手に入れてパソコンを売ろうとします。このような状況の時に、メモリの価格が上がるのです。

 逆にパソコンの生産量と比例する需要に対してメモリチップの生産量が上回ると、メモリチップを生産しているメーカーや流通に在庫が余ります。メーカーは在庫があっても生産ラインを簡単に止めるわけにはいきません。工場には作業人員が居ますし、高い価格で購入したチップ製造機械も眠らせるわけにはいきません。
 そこで、より安い価格で販売を行ない、買い手を探します。値段が下がればパソコンを買う人も増え、需要が回復する。たとえそれが一時的な赤字になっても、製造を止めるほうがもっと多くの赤字を生むことになり、需要が回復すれば前述のように価格が上がるかも知れないのです。だから価格をどんどん下げて、数を売ろうとする。こうやって価格が下がっていくのです。メモリの市場はこの需要と供給のバランスのズレにより価格が変動していくのです。


■ 最近の値下がりはなぜ起きたか?

 ここ最近の急激な値下がりはなぜ起きたのでしょう? 前述のように需要と供給のバランスが崩れたことにより価格が下がったのですが、今回はこのバランスが大きく崩れました。世界的にメモリが供給過剰状態に陥ったのです。これはメモリ業界最大手の米Micronが増産したことと、台湾メーカーが品質の高い製品を一気に増産し始めたことに起因します。特に台湾メーカーの生産力と、その強力な値下げによる販売力に対して、世界的な値下がりが起きたわけです。

 増産をした理由は、技術の進歩がひとつの理由としてあります。メモリチップ(DRAM IC)は、シリコンウェハーから製造されます。技術の進歩とはプロセス技術を中心とした部分であり、CPUと同じように0.25ミクロンのプロセスから0.18ミクロンのプロセスに変わるようなものです(メーカーにより大きさは微妙に違うらしいです)。プロセスが小さくなれば、シリコンウェハー1枚から製造することができるメモリの数は飛躍的に多くなり生産力が上がります。それに1つのメモリチップを製造する原価は一気に下がります。また、台湾メーカーは安価に生産する技術力に長けており、安くそして大量に生産することを実現します。このことにより、メモリメーカーが値下げをしても利益が出るぐらいの原価になったわけです。


■ メモリの仕入れ価格はこう決まる

 メモリモジュールの価格は以下の式で決定されます。

(メモリチップの単価)×(必要枚数)+(基板/部品代)+(製造/検査費)

 このうち価格が大きく変動するのはメモリチップの単価だけであり、後は固定費としてモジュール1枚あたり500円~200円程度かかるのが一般的です。この価格差は良い基板を使っていたり、良い半田を使っていたり、きちんと検査をしているかどうか等によって変わってきます。
 ただし、多くの秋葉原のショップではメモリのチップ単価や固定費の部分はあまり考えず、モジュールとしての価格だけを追う場合が多いです。一部の販売量が多いお店や半導体ショップはメモリチップ単価から追って相場を見ている場合もあります。

 ショップはいくつもの仕入先からの価格を見て、基本的には一番安いところから仕入れるのですが、それ以外にもメモリチップのメーカーも考慮に入れて仕入れる必要があります。メモリにはチップセットやマザーボードとの相性問題が結構多くあり、安いメモリだけですと、例えばAladdinV CHIPSETで動かないなんてことも多々あります。最近の秋葉原のショップではメモリチップメーカーの名前を表記する場合や、チップメーカーごとに価格が変わるショップが増えてきたのは、ユーザーが取り付けるマザーボードが多様化してきたことと、チップメーカーによる値差が出てきたことが要因となっています。たとえば、128MBといえばすでに1万円を切る価格で販売されるのが当たり前になりつつありますが、NECのチップを使った128MBメモリモジュールを購入しようとすると、1万円以上します。
 さらに、オーバークロック耐性が良いメモリチップやメモリモジュールという部分がクローズアップされる場面も見受けられます。PC133メモリや125MHz保証メモリ等も登場してきていますがまだまだ主流ではなく、価格変動が少ないのが実情です。このような複数の要因を組み合わせてショップは判断し、メモリを仕入れるわけです。


■ ショップでの販売価格

 ショップでの販売価格は、仕入れ価格を眺めながら他店の価格を見つつ設定される場合が多いようです。ただし、単純にメモリだけを販売していても利幅は少なく、あまりおいしい商売ではないと筆者は思います。筆者はメモリについてはあくまでもマザーボードやCPUを買ってもらうためのアイテムであり、お店の価格のバロメータとしてお客さんが利用するものであると考えています。ショップによってはメモリをあまり重要視しない販売方針のお店もあるようですけど、最近はインターネットで他店の価格と比べられることが増えたため、価格競争はさらに激化する一方と言えます。

 しかしながら、筆者は苦言をひとつ呈したい。最近のメモリ価格の取り上げ方は安い価格ばかり重視されており、保証条件や基板の品質をあまり重視していないのはいかがなものかと思います。ショップによっては保証条件が3日の初期不良のみ、なんてところもあります。メモリモジュールは決して品質の高いものだけがあるわけでなく、使っていくうちに壊れることもあります。今後は保証や製品の質がもっと重視されてくる時代が来ると筆者は勝手に思っています。


■ これからどうなる

 今後、技術の進歩によりさらに価格が下がる可能性はありますが、すでに1万円を切っている128MBメモリが数百円になることは絶対にありません。

 今後のトレンドは256MB PC100 CL2のメモリ(128Mbit chip搭載品)がどこまで安くなるかだと思います。今は5万から7万ぐらいするのが普通ですが、これがいつ3万~2万円前後になるのか。将来、値段が下がることは間違いありません。しかし、これがどのぐらいのタイミングで訪れるのか、楽しみであると同時にショップとしては怖いところでもあります。また、DDR SDRAMやDRDRAMの登場も控えていますし、PC133メモリの値下がりも気になります。どうなることやら筆者は読めません。先がわかったら大もうけできるんですけどね。

[Text by AMUAMU]


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