元麻布春男の週刊PCホットライン

ナゾの多いチップセット、i810



■ i810の登場はWindows 98 Second Edition待ち?

 IntelのデスクトップPC向けチップセット中、最新のものといえば4月26日に発表されたi810である。だが、このチップセットには、何かとナゾが多い。たとえば、Intelの製品は、基本的には発表即出荷であるにも関わらず、i810は4月発表、6月出荷とされている。しかも、i810を採用する国内の大手PCベンダーの中には、製品の出荷は8月になるだろう、としているところさえある。なぜ、こんなに時間がかかるのか、筆者ならずとも気になるところだ。

 はっきりいえば、この理由はわからない。ただ、米国での6月、わが国での8月といえば、Winodws 98 Second Editionの出荷時期と、奇妙に一致する。これが単なる偶然である可能性は否定しないものの、あまりにも出来すぎている感も否めない。もし、i810搭載システムの出荷がWindows 98 Second Editionの出荷待ちなのだとしたら、考えられる理由はUltra ATA/66のサポート(現行のWinodws 98はUltra ATA/66をサポートしない)なのだが、果たしてそうなのかどうかは、残念ながら不明だ。仮にこれが正しいとすれば、Windows 98 Second Editionが出荷されるまで、大手PCベンダーからはi810-Lを採用したシステム以外(というよりUltra ATA/66をサポートしないICH0を搭載したシステム以外)登場しないハズ、ということになる。この仮説が正しいかどうか、各社の発表を注意深く見守りたいと思っている。

 次のナゾは、i810チップセットのデータシートだ。Intelの場合、チップセットのデータシートがWebサイトに掲載されるまで、若干時間がかかることも少なくないのだが、このi810については、ほぼ発表と同時にデータシートがアップロードされた。が、早くも2カ月後の6月、データシートの改訂が行なわれている。改訂は、GMCHとICHの両方に及んでおり、細かな修正が施されているのだが、特にGMCHのProduct Featuresの項(GMCHの特徴をまとめた、実質的なトップページ)には、大きな修正が1つ施された。4月版(29065601.pdf)のデータシートには“Optimized for the Intel Pentium II processor, Intel Pentium III processor, and Intel Celeron processor”と記述されていたのに対し、6月版(29065602.pdf)では単に“Optimized for Intel Celeron processor”という記述になっているのである。

 これに付随して、4月版で“Supports processor 370-Pin Socket and SC242 connectors”(SC242はいわゆるSlot1のこと)とされていた部分も、“Supports processor 370-Pin Socket connector”と改められており、i810のサポートからPentium IIとPentium IIIが除外された格好だ。しかしその反面、66/100MHz System Bus Frequencyという記述はそのまま残されており、現時点で100MHzシステムバスに対応したCeleronプロセッサがないことと、食い違いを見せている。

 これらの改訂が何を意味するのか。Pentium IIやPentium IIIのサポートが完全にi810の対象外となってしまったのか、それとも現行のi810とPentium IIIで非互換性があることを受けた暫定的な措置なのか、あるいは100MHzシステムバス対応は近い将来CeleronのFSBを100MHzに引き上げる予定があるのかなど、今のところわからないところだらけだ。その一方で、マザーボードベンダーの中には、4月版のデータシート通り、Slot1に対応したi810マザーボードをすでに発表済みのところもあり、彼らがどうするのか注目される。

 もう1つ取り上げておきたいナゾは、i810を搭載したIntel製マザーボードについてだ。Intelはマザーボードについて、基本的にプレスリリースを出さない。これ自身、1つのナゾではあるのだが、これまではチップセットが発表されると同時に、それとなくマザーボードについても公表されるのが常だった。Intel製マザーボードに関する情報を得るための最もポピュラーなサイトは、http://developer.intel.com/design/motherbd/ だが、いまだにこのページにi810チップセットを用いたマザーボードに関する情報はない。

 だが、IntelのWebサイトの別のところには、i810チップセットの発表直後からi810を使ったIntel製マザーボードに関するページが用意されていた。http://channel.intel.com/business/ibp/boards/ca810.htm がそれで、URLでもわかるように、Intelのビジネスパートナー(ディストリビューター等)向けのページである(ただし、別にパスワード等が必要というわけではなく、誰でも見ることができる)。ibpというのは、おそらくIntel Boxed Productsの略、要するにBoxed製品に関するページだ。また、関連情報としてhttp://channel.intel.com/business/ibp/boards/software/ にも、CA810の文字が見えるが、なぜかこのページで紹介されているPC Motherboard Software Programをアナウンスするプレスリリース(http://www.intel.com/pressroom/archive/releases/Cn061199.htm)では、CA810の名前は消されている。

 さて、上記のページで紹介されているi810搭載マザーボードは、URLからもわかるとおり、CA810というマザーボードだ。developer.intel.comと異なり、channel.intel.comにはこのマザーボードの詳細なスペックやマニュアルといった情報はないが、Boxed製品として売られるCA810は、82559 LANコントローラ(10Base-T/100Base-TX対応)の有無により、2バージョンあること、6月から出荷開始される予定である、といった情報が公開されている(OEM向けには、これ以外のコンフィギュレーションで出荷される可能性がある)。なぜ片方でCA810の情報をひた隠し、片方では堂々と存在が明らかにされるのか、これもまた1つのナゾといえるだろう。




■ オマケ 「バルク」という商品 追補

 以前筆者はこのコラムで、バルクという位置付けの製品をテーマにしたことがある。その時は、1つの例としてViper V550を取り上げたが、その後継であるViper V770にもバルクとリテールで異なる部分があるようだ。

 リテールパッケージのViper V770には、JP1~JP4まで計4つのジャンパピンが用意されている。これらのジャンパは、リテールパッケージ版ではV770をAGP 4Xモードに対応させるために設定する際に必要と記述されており、そのためのジャンパブロックも添付されている(少なくとも筆者の手元にある英語版パッケージはそうだが、説明書に日本語があることからして、日本語パッケージも同一だと思われる)。

 しかし、バルク版はJP3のジャンパピンが最初から用意されていない。残念ながら現時点ではAGP 4Xモードに対応したマザーボードがないため、本当にJP3の設定が必要なのか、バルク版とリテール版の単なる識別点なのかはわからない(バルク版も残る3ヶ所のジャンパピンがあることを思えば、本当に必要なものなのかどうか、わからなくなってしまう)。ただ、バルクとリテールが必ずしも同じとは限らない、ということの証ではある。

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[Text by 元麻布春男]


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