スタパ齋藤

久々の目の付け所シャープ的製品
インターネットビューカム



■ 久々の目の付け所シャープ的製品

シャープ インターネットビューカム
標準価格 60,000円。 サイズ78.8×42×88mm(幅×奥行き×高さ)、重量148gと非常にコンパクトながら、MPEG-4方式で約1時間の動画録画が可能
 なんと言うか、パソコンに絡んだデジタルな小間物ないし周辺機器という意味でのデジタルガジェット市場には、妙な波があるように感じる。ヒッジョーにつまらねえしもうこんな市場どーでもいいやみたいな時期があったと思ったら、ウハウハでイーヤッハァで目が血走っちゃうような豊作な時期があったりする。もちろん、ボーナスシーズンなどの、いわゆる“新製品ラッシュ”は相変わらずあるものの、その新製品が単に新しいだけの時期があったり、イイのもイマイチなのも混在するパターンだったり、どれも良いような豊作期だったりと、そんな波が感じられる。でもまあ、“豊作”と言えるような時期はそうめったに来るモンでもなく、このような不景気っぽいご時世では比較的ご無沙汰になり気味ではある。

 ところでここ数ヶ月はと言えば、わりと豊作なのではないだろうかと思う。いや、チョイ長めのピリオドで考えれば、大豊作かもしれない。ノートパソコンや液晶デスクトップパソコンの勢いもあるし、携帯電話、デジカメ、PDA類など、わりと多くの分野でおもしろい製品が出ている。

 安泰で好景気な時代なら、こういう時期にある種変態的なモノが登場したりしたもんだ。おもしろいから作ってみましたとか、おもしろそうでしょ買ってちょ、みたいな製品。例えば将来性はあまり考えられてないけどその突っ走り具合が非常に心地よい製品とか、斬新でありかつ斬新なだけの製品とか、すっげえ高度な機能を備えているけどすっげえ高価な製品とか。まあ、最終的には“色モン”としてホコリをかぶる運命にあるようなオモシロ製品がガンガン登場したものである。

 が、こんな時代やさかい、そーゆー製品はさほど出てこない。どの製品もかなり着実だったりする。慎重に作っている感じ。と同時に、その慎重さが“もしかしたらその製品が持ち得たであろう爆発的なおもしろさ”を殺している気がしなくもない。突き抜けた鋭さとか破天荒さを持った製品が、ほとんど出て来ない。

 そんな中、久々に非常に冒険的で斬新なガジェットが登場。シャープから出た、ウワサのデジタル動画録画装置、インターネットビューカムことVN-EZ1だ。例によってVN-EZ1の詳しいことはシャープのサイトで見ていただきたい。また、コレについては、この俺、試作機段階からシャープさんにいじくらせていただいており、そのインプレッションを書いているので、興味のある方はコチラを。また、コッチでは発売後速攻でゲットして使ったインプレッションも書いている。

 で、VN-EZ1の登場を知って最初に思ったのは、正直なところ「不況だっつーのによくやるなぁ」ということ。もっと言えば「斬新なだけで終わるガジェットかも」とも思った。ともあれ他社はどこもやってない、VN-EZ1ならではのMPEG-4フォーマットでの長時間の動画録画という点には、久々にシャープらしさを感じた。



■ 俺とVN-EZ1は相性がいいか!?

 結論から言えば、俺はVN-EZ1にアツくなってやっぱりゲットして現在も楽しみつつ使っているわけだが、最初はこんなに使うとは思わなかった。

 まず、試作機をいじった段階。インターネット経由で配信可能なビットレートの動画ファイルを生成するカメラ、ということで非常に興味深く、またエキサイティングだった。が、ウェブマスターをやってない俺としては、VN-EZ1の“インターネットビューカム”としてのメリットをそーんなには受けないんだろうなぁ、とも思った。

 次に、発売後の製品版をいじった段階。試作機からかなり画像のクオリティが上がっていたことや、やっぱりコンピュータと非常に良く親和する動画生成マシンとして、改めてVN-EZ1を見直した。やっぱイイじゃんコレいいスよおもしろいっス、という物欲野郎根性丸出しで喜んだってわけだ。

 ただ、まだほ~んの少しだけ、不安みたいなモンがあった。というのは、俺ったら小型のDVビデオカメラとか持ってるし、DVビデオ映像撮り込めるパソコンも持ってるし、MPEG-1動画を生成するデジカメも持ってるし、つまり、そんなに何台も動画記録装置を持ってたら、結局いちばん画質が悪いVN-EZ1を使わなくなるんじゃないかなぁと、そう思ったのだ。また、やっぱり現在もウェブマスターじゃないので、MPEG-4動画を撮影してもそーんなに意味ないかもしんないなぁと、そうも思ったのだった。

 要するに、他にたくさん動画録画装置を持ってて、しかもネット上で動画をやりとりする予定のない俺と、このVN-EZ1は、もしかしたら結局スレ違う感じで相性もあんましよくないのかも~と思っていたのであった。

 そう思っているトコロへ、(株)アスキーという出版社の編集者から釣りの誘いが。うっ、アフタースポーンのバス。釣行予定日は快晴。現在体調抜群。行きてぇ。釣って釣って釣りまくりてぇ!! そうだ俺は釣って釣って釣りまくって湖の全部のバスの口にフックの傷を刻むんだよそうなんだよアニキ!! とか思ってとにかく釣りに出かけた。ついでにVN-EZ1を持ってってみた。

 んで、実際遊びつつ、VN-EZ1を使った。
 VN-EZ1は小型軽量なので、釣り師状態の俺をまったく邪魔することなく胸ポケットに収まっていた。VN-EZ1は起動までは約5秒くらいかかるが、ビューカムと名乗るだけあって録画操作は快適で、録画ボタンを押した瞬間録画が始まって違和感なく撮影できた。VN-EZ1の液晶画面は室内では非常に見やすいが、ドピーカンすなわち超快晴状態の湖上では手で覆って日陰を作らないとほとんど見えないのであった。VN-EZ1は単3乾電池4本で動くが、ミョーに電池の持ちがよく、結局1日中比較的頻繁に出して撮影したり再生したりしたのだが、全然電池がなくならなかった。VN-EZ1はヘタするとフツーのDVビデオカメラよりずっと良く音を拾うのであった。

 でまあ、そこまではフツーであった。が、その後、改めてVN-EZ1の良さを知り、便利さを確認することになった。



■ 同行者に大評判のVN-EZ1

 私事っぽくて恐縮だが、前述の釣行は、餅月あんこチームvsスタパ齋藤チームの釣り対決!! ということで、まんが家の餅月あんこさんが記事を作るための取材という感じであった。餅月あんこチームは、餅月あんこ本人と週刊アスキーの担当編集者のT嬢、スタパ齋藤チームは俺と俺の釣りの師匠であり週刊アスキーの担当編集者である赤澤氏。で、俺以外の3人の方々は、俺に比べると全員かなりフツーの感覚の持ち主っていうか、PDCとCDMAの違いやBMPとJPEGの違いなどをほとんど気にしないおおらかさがあるっていうか、つまり俺のように神経質に画質のクオリティにこだわらない人々だ。当日においてはMPEG-4とMPEG-1の違いなんざぁもちろん誰も考えておらず、俺以外の3人は確実にフツーの釣り師モードもしくはレジャーな人モードなのであった。

餅月あんこ「ねぇねぇスタパさぁんルアーよりミミズの方が釣れるって本当ですかぁ。あとあたし今日は18匹とか釣れる予定なんですけどスタパさんは何匹ですか」
俺「いやそれよりもこの晴天下でのVN-EZ1の映像は……」
アスキーT嬢「あんこちゃんこれ見て見てトゥルーモーションルアーなんですよ凄いリアルでしょコレ~」
アスキー赤澤「あんたら全然ダメだよ!! ミミズ禁止!! そしてそんな通販のルアーじゃ1匹も釣れねえ!! こういう晴天時はバスの活性が案外落ちてるから流れのあるリバーチャンネルに沿ってまずスピナーベイトで攻めそれからラバージグ(以下4,096万語略)」
俺「ていうかぁ~コレがウワサのVN-EZ1なん……」
餅月あんこ「あっアヒルだ~お菓子食べるかなぁ~キャー寄って来たポテチ食べてるキャー」
T嬢「あら、1匹だけ頭が緑のアヒルがいるわ」
赤澤「あんたら釣る気あんのかよ!! どけこのアヒル野郎!! てめえらルアー引っか……スタパさんもデジカメなんかいじってないで釣りでしょ釣り!! 今日は釣り勝負なんスから!!」

 このようなのんきな釣行を俺のVN-EZ1で録画し、休憩時にその動画を見せてみた。そしたら、なーんか異常に盛り上がっているのであった、このフツーモードの3人。VN-EZ1がどうのと言うよりむしろ、単にビデオを見ているような喜びよう。
 ああそうか、MPEG-4じゃなくてもVN-EZ1じゃなくても、動画だったら何でもいいのかこいつらは。なーんか張り合いねえなぁ、と思ったらそうでもない。

餅月あんこ「ああっソレってナンか見たことあると思ったらインターネットビューカムでしょ!! 超カワイイですよねソレ!! ふぅん思ったより画像キレイですね~。超欲しい感じ。でもMacだと再生できないんでしょMPEG-4動画って」
赤澤「あぁソレっスかぁ話題のアレは。コレかなりイイっスねぇ。このサイズで最高1時間とかでしたっけぇ。コレ使えるじゃないスか、イイすねぇ。次回の記事コレやりましょうよさっそく」
T嬢「この緑頭のアヒルはガァガァイイながらポテチ食べてますね」

 という感じであった。この日の俺は、ネットとかは関係なくVN-EZ1をビデオカメラとして使ってみたらどうかなと思って使ったのだった。で、最初は「何このきたねぇ映像、まったくダメですなこのカメラ」とかなんか不評かと思ったが、そうでもなく、とりあえずかなりの好評だった。



■ MPEG-4ってけっこうイイかも

ちょっと取り出して撮影できる手軽さ。画質は素晴らしいとは言えないが、デジタルカメラ市場を作ったカシオのQV-10の持っていたような気軽さ、面白さ、シンプルさがある
 まあ、たぶん、動画を録画できる装置を遊びに持っていけば、だいたい盛り上がるのだとは思う。が、VN-EZ1はDVビデオカメラ等にないちょっとイイ感じのメリットがある。

 例えば、前述の釣行後、撮影した動画をよこせという要望があった。俺が撮影した映像は最大1分くらいで、そういうのがいくつかバラバラのファイルで保存されていた。で、このうち、よさげなのを選び、VN-EZ1付属のアプリでトリミング(時間軸で前後をカット)してメールに添付して送ってみたら、思いの外好評だった。なるほどこういうコトができるのはMPEG-4動画ならではだ。

 まあ、VN-EZ1で撮れる動画は、その鮮明さやキレイさにおいてはDVビデオの映像には遠く及ばず、また、サイバーショットのF55Kで撮れるMPEG-1動画よりもかなり見劣りする。でも、32MBのスマートメディアにかなり長い時間(最高だと2時間以上)録画できて、メールに添付して気軽に送れるというのは、映像の新しい楽しみ方だと感じる。恐らくウェブマスターをやっていたら、撮影した映像の利用価値がもっと高くなっただろう。

 それから、VN-EZ1のコンパクトさがイイ。感覚としてしてはAPSのコンパクトカメラという感じなのだが、このサイズで動画を録画できるのは、想像したよりもずっと便利なのであった。ちょっと携帯電話を使うような感覚で撮影できる。非常に気軽に取り出して使えるのだ。このコンパクトさに電池の持ちの良さがあるので、マジな話、気分的にはAPSカメラのよう。あっそうだカメラあったんだっけじゃあ撮ろう、みたいにリラックスして使える。

 それと、映像的なクオリティの低さを見越してか、音声はかなりしっかり録れる。微細な音もけっこうよく拾ってくれるので、映像的にわかりにくい部分があっても、音像がかなりフォローしてくれる。なお、録画するモード(クオリティ)によって映像はスムーズだったりガクガクだったりするが、音声はどのモードでも途切れずにちゃんと聞こえる。

 けっこう遊べて、ウェブにおける動画配信のためのツールとしても使える、このVN-EZ1、さっき調べたら5月25日現在のLAOX価格で49,800円だった。俺としてはわりと安いような気がするのだが、いかがだろうか。

 最後に、「ビデオカメラの代替え品として使える」と思われる可能性があるので、ちょっと。動画が撮れるという点ではビデオの代替え品としても使えるが、VN-EZ1はあくまでもインターネット上で扱うための動画を撮る装置。基本的に“鑑賞目的の美しい映像”などは撮れない。加えて、レンズの画各外辺部分の光量低下(いわゆるケラレですな)が目立ったりもする。つまり、映像の美しさに価値があると考えて撮るような目的には、恐らく使えないだろうということ。また、観る者の記憶と関係のない映像を録画するのにも向かないだろう。例えば、取り壊される建築物の記録とか、初対面の人に向けた自己紹介ビデオを撮ったとする。で、その被写体を見たことがない人がその映像を見ても、低クオリティ動画ゆえ、映像としてほとんど役立たないだろう。

 逆に、記憶を喚起させるための映像とか、メッセージとしての映像を撮るなら、VN-EZ1のクオリティでも十分役立つ。自分が住んだ家とか、知人へのメッセージビデオを撮れば、十分な情報量を持った映像として利用できると思われる。

 なんかイロイロ書いてしまったが、最初はVN-EZ1について「不況だっつーのによくやるなぁ」とか「斬新なだけで終わるガジェットかも」などと思ったが、現在は、そうは思わなくなった。目的に合えば十分役立つし、楽しめるし、よーく考えたら斬新さとか冒険心だけでは作られていない製品である。MPEG-4での動画配信はもちろん、しっかり音のクオリティとかは持っていて、オサエとして静止画撮影やインターバル撮影もできる。突っ走っているように見えて、実は押さえるところは押さえている手堅い製品だと感じた。

□インターネットビューカム製品情報(シャープ)
http://inet-viewcam.sharp.co.jp/index.html
□関連記事
【5月14日】山田久美夫の「シャープ インターネットビューカム」レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990514/sharp.htm
【3月17日】シャープ、スマートメディアにMPEG-4動画を撮影できる「インターネットビューカム」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990317/sharp.htm

□週刊スタパトロニクス バックナンバー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/backno/wstapa.htm

[Text by スタパ齋藤]


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