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今や、CPUの次に注目を浴びるアイテムとなっているビデオカード。新製品の動向やそのスピードなどの性能が色々な場所で取り上げられています。振り返ってみると、秋葉原ではWindows 3.1が広まってくると共にビデオカードが特に取り上げられ、注目を浴びてきました。
ビデオカードは時期により特定の商品に人気が集中するという、季節感が非常に強い商品です。過去に大ヒットしたビデオカードは数多くありますが、どれも一定の期間を過ぎると人気が急に無くなり、急速に売れ行きが悪くなります。それは技術の進歩が速いことと、ビデオカードにより個性がある事が理由として考えられます。CPUの進化は単純に考えるとただ速いCPUが新製品として登場するだけで、そのスピードを評価することが多く、付加機能はそれほど注目を浴びません。ところが、ビデオカードは単純にスピードを測定するだけでは評価できない商品であり、評価する切り口が2D性能や3D性能、画質など色々あり複雑です。また、付加価値の機能(Glide対応やTV OUT/IN機能など)を付け易いことから、昔から色々個性的な特徴をもったビデオカードが存在してきています。この複雑なところが、ビデオカードの面白いところであり秋葉原で注目を浴びる存在である理由だと筆者は考えています。
■ ビデオカードメーカーとビデオチップメーカー
ビデオカードメーカーを大別すると、2つにわかれます。ビデオチップを自社で開発しながら、自社のビデオカードを販売するメーカー(Matrox,ATIなど)と、ビデオチップを他社から購入し自社でビデオカードを製造するメーカー(DIAMONDやカノープスなど)です。ビデオチップを自社で開発しているメーカーは、大きな利益が得られる利点を持ちながらも、常に最新のビデオチップを開発し最新のビデオカードを投入しなければ売上が落ち込んでしまうという危険性があります。ビデオチップを他社から購入しビデオカードを製造するメーカーは、現時点で一番良いビデオチップを数多くある中から選択できるという利点がありながら、同じチップを搭載したビデオカードがたくさんあるためドライバや付加価値で他社との差別化を図る必要もあり、利益の幅も少ないです。
後者の場合、単純にビデオチップの違いだけで性能を測ることはできなくて、ドライバの性能も含めたトータルで評価することが多いです。同じビデオチップを搭載していても、大手メーカーの商品ほど人気が高くなります。カノープスやDIAMONDのビデオカードは総じてドライバの性能がよく人気も高いのですが、その分価格も高くなってしまいます。逆に台湾の無名メーカーのビデオカードは標準ドライバですが、価格は安いのです。最近の秋葉原の傾向としては、ドライバを自社で開発しているメーカーか、自社でビデオチップも生産しているメーカーに人気が集まるようです。
■ 新製品が秋葉原に登場するまでの裏話
秋葉原のショップにとって新製品をいち早く店頭で販売することは、そのあとの自店での販売量を増やし、市場にてイニシアチブを取るために必要であり、大きく仕入れの力を入れるところです。ところが、最近は一斉に秋葉原の店頭に並ぶことや、特定の大手ショップのみが新製品を販売していることが増えてきています。なぜでしょうか?
昔は、新しいビデオチップを搭載したビデオカードは台湾の無名メーカー製品が多かったのですが、最近は大手メーカーの商品で、しかも正規(国内代理店や国内ビデオカードメーカーの法人)から流通してきた製品版の販売が先行することが多くなってきました。なぜかというと、ひとつに秋葉原をはじめ日本国内におけるビデオカード単体での販売量が増えてきており、日本にも新製品の出荷割り当てがされるようになってきたことが言えます。昔はアメリカなどから輸入されてきたバルク品が秋葉原に登場したとき、メーカーや国内代理店の弁解の言葉は「アメリカでの販売分だけで初回出荷が精一杯で国内には割り当てがきません」とよく言われました。ところが販売量が増えて割り当てが貰えるようになってきたため、国内代理店やメーカーはいち早くかつ一斉に、秋葉原に投入するようになったのです。
実は最近はショップの間での新製品争奪競争より、メーカー間での新製品投入競争の方が激しくなってきているのです。あるビデオチップの新製品のとき「某ビデオカードメーカーD社よりうちは速く製品を出荷します」なんてメーカーの営業の人が言うぐらいです。「一番での投入を目指して開発している」というセールストークをするメーカーもあります。メーカーや国内代理店にとってもすばやく、世界とのタイムラグなく日本に投入することが売れ行きに繋がると感じているのでしょう。
先日の3Dfx/STB のVoodoo3も国内の正規代理店からの商品のみが秋葉原に登場したことからも、これらの事が裏付けられています。しかしながら、このような事態は小さなショップにとっては面白くない状況です。販売量が多いところやコネクションの強い大手ショップにはたくさん並んでいるのですが、中小のショップにはほとんど入ってこないという状況が発生しています。昔の怪しくて台湾の面白い製品がおいてある小さいショップに新製品が良く並んでいるという状況がなくなってきているのはある意味、秋葉原の変化を示しているのかもしれません。
■ Voodoo3にまつわるちょっと面白い話
Voodooシリーズを開発していた3Dfxは元々はチップのみを開発/生産し、大手ビデオカードメーカー各社がビデオカードとして製品が出ていました。ところが、昨年大手ビデオカードメーカーのひとつであるSTB社を買収。自社での開発/販売という一貫した体制に急遽変わりました。有名な話ですが、このSTB社買収と大手ビデオカードメーカーへのチップ供給停止は大きな波紋を呼び、業界でも話題になりました。今までの3Dfx社を担いでいた多くのビデオカードメーカーにとっては、昨日まで味方だったビデオチップメーカーが急に敵になったのですから、問題が起きるのは当然といえば当然です。
この買収劇がある直前に、某大手ビデオカードメーカーの営業の人は、自社の製品のロードマップにあるVoodoo3搭載ビデオカードに対して「絶対売れる、最速のビデオカードになるでしょう」と言っていたのですが、買収が発表されてまもなく「Voodoo3は思ったより速くない。うちの○○を搭載した製品が最速です」と、急に営業方針を180度転換したのには筆者は笑ってしまいました。3Dfx社に裏切られたビデオカードメーカーはみんなVoodoo3との比較広告を考えていると聞いています。いやはや、ビデオカードメーカーの間の競争も結構大変なのだと妙に実感してしまいました。
■ 新製品動向の裏側
'99年の最新ビデオカード戦争は前述した3Dfx/STBのVoodoo3が登場し幕を開けました。それぞれの注目製品の動向と秋葉原の裏側をまとめたいと思います。
・3Dfx/STB Voodoo3
国内代理店からの一斉出荷で秋葉原に登場。翌週、海外から並行輸入のバルク品/製品版が登場しました。しかしながら人気の3000モデルは国内代理店からの入荷が多いようです。並行輸入のバルク品は結構安いのですが2000モデルが多くて3000モデルは手に入りにくいという状況です。この後に投入される予定の3500モデルがどう投入されてくるかが注目されていますが、国内代理店の話ではもうちょっと先のようです。ところが、並行輸入のバルク品はすぐにでも登場するような話が出ています。実際のところはどうなるのか、また性能はどうなのか、まだまだわからないことが多いです。
□「Voodoo3」ニュースリリース
http://www.tradepia.or.jp/nelco/goods/prvooga.htm
・NVIDIA RIVA TNT2搭載ビデオカード
今回の一番乗りはMatroxの国内代理店でもあるinfoMagic(東和商工)の「Magic!TNT2」になりそうです。しかし、LeadtekやAopenを始めいくつかの台湾ベンダーの名前も挙がっていて今回は混沌としそうです。しかしながら、本格的にTNT2が立ち上がるのはUltraTNT2と呼ばれる高クロックバージョンを使用したビデオカードが投入されてからでしょう。DIAMONDの製品はUltraTNT2を搭載してくるようです。その他のメーカーはUltraなのかノーマルのTNT2なのかがあまりはっきり表明していないところが多いです。ここら辺の情報次第で人気や売れ行きも変わってくるでしょう。ショップも最初は通常のTNT2を店頭に並べますが、後にはUltraTNT2中心に品揃えしていくところが多いと思われます。5月中旬頃来ると思われるUltraTNT2の一番乗りはどこのメーカーなのかも注目されるところです。
□「infoMagic『Magic!TNT2』」ニュースリリース
http://www.infomagic.co.jp/japanese/news/tnt2-j.html
□ダイアモンドマルチメディア「Viper V770」(英文)
http://www.diamondmm.com/products/current/viperv770-pre.cfm
・S3 Savage4搭載ビデオカード
S3社の最新ビデオチップであるSavage4は前作のSavageの評判があまり良くなかったのをどこまで打ち消せるかが焦点となります。先日Creativeもこのチップを搭載したビデオカードを発表しました。この後も次々と発表もしくは市場への投入がはじまるでしょう。しかしながら、TNT2やVoodoo3に勝てるパフォーマンスを持っているという話は聞きません。低価格路線の製品になってしまうことは否めないでしょう。メーカーの人は「結構速いですよ。思ったより」というコメントを筆者は聞いています。
□Creative「3D Blaster Savage4」ニュースリリース
http://www.creaf.co.jp/graphics/savage4/
・Matrox Millennium G400
注目の製品がMillennium G400です。「全てにおいて最速を狙った」というMatroxの言葉がある製品ですから否が応でも気になります。近日、国内でもG400の内覧会がありますし(なんとカナダ大使館で行われる! 国ぐるみの取り組みなのか?)、国内外を含めて色々な情報がこれから出てくるでしょう。ゴールデンウィークにショップの店員さんに聞けば、内覧会での話が聞けるかも? すでにショップ間や代理店との話にも何回も出てくる超注目の新製品です。
□Matrox Millennium G400(英文)
http://www.matrox.com/mga/feat_story/mar99/g400_launch.htm
[Text by AMUAMU]