後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Palmがクローン戦略に走る


お詫びと訂正:IEEE-1394ライセンスはユニット単位

 まず最初に、大きな間違いを訂正しなければならない。先週のコラムに重大な誤りがあった。WinHEC 99で発表されたIEEE-1394のパテントプールについて「1ポートあたり25セント」とレポートしたのは間違いで、これは「最終製品1ユニットにつき25セント」で、ポート数には関係がない。

 つまり、チップセットがIEEE-1394を2ポート備えた場合、Apple Computerが要求していたと業界関係者が証言する1ポート1ドルの場合は合計2ドルのパテント料になってしまうが、今回のライセンスプールでは25セントですむ。また、もう少し細かく説明すると、パテントロイヤリティは、プールされて、Apple、ソニー、Compaq Computer、Philips、東芝、松下電器産業で分割されるという。

-今回のミスは、あまりに初歩的で弁解の余地はありません。熱でふらふらの状態でカンファレンスに出て原稿を書くものではないといういい教訓になりました。また、この件に関しては、複数の方からのご指摘をいただきました。ご指摘下さった方々には、この場を借りて厚くお礼を申し上げます-


●Palmがクローン戦略に走る

 今年の後半には、もしかするといろいろなブランドからPalm互換マシンが登場しているかもしれない。「3Com not sheepish about cloning plans」(CNET NEWS.COM,'99/4/13)などの報道によると、米3Com社のPalm Computing divisionの幹部が、Palmをライセンスする方針でいることを明らかにしたという。それによると、近いうちにクローン製造の合意にサイン、年末までにはパートナーを公式に発表するだろうという。このニュースは、「3Com to revamp Palm licensing, open door for clones」(Infoworld,'99/4/15)も伝えているが、どちらも先週サンディエゴで開催されたイベント「DemoMobile 99」での発表をベースに、3Com関係者からの情報などを加えており、信憑性は高そうだ。Palmは、ライバルであるWindows CEベースのPalm-size PCに、市場シェアでは大きく水をあけている。しかし、相手はMicrosoft。有力なハードウェアメーカーをパートナーに、ひたひたと浸食してくるわけで、3Comとしてもうかうかしていられないというわけだろう。


●Compaq政変で浮かび上がったCompaqのキングメーカー・ローゼン氏

 さて、先週から今週で、米国でトップニュースになっているのはCompaqの政変だ。唐突に、エッカード・ファイファー社長兼CEOが辞職してしまったわけだが、興味深いのは、この件に関して、いくつかの記事が、この背後にあるのはCompaqのベンジャミン・ローゼン会長の意向だと指摘していること。ローゼン会長は、Compaqのキングメーカーと呼ばれ、Compaq創設者で前CEOだったRod Canion氏を辞職させ、ファイファー氏を据えたといわれている。「Compaq Computer Ousts Chief Executive」(The New York Times,'99/4/19、登録が必要)では、「あれ(Compaq役員会)はベン(ローゼン)の役員会だ。Compaqの後ろにいる男はいつもベン・ローゼンだった」、「この動きはRosenがCompaqのビジネスモデルをもう一度考え直している証拠」という調査会社幹部のコメントを拾っている。ファイファー氏は、Compaqのここ数年の低コスト生産・低価格攻勢路線をうち立てた人物で、その彼が退陣したとなると、Compaqが大きく路線を変更する可能性が高い。というか、ローゼン氏は当面、自分が陣頭に立ち、路線を変えていくと語っているようだ。


●AOLはインターネット家電へ走る

 AOLがインターネット家電を提供するというニュースがいよいよ広まり始めた。「AOL to Unveil Online Devices That Shake the Need for PCs」(The Wall Street Journal Interactive Edition,'99/4/16、有料サイト、 http://www.wsj.com/ から検索)によると、これは、スクリーン電話などインターネットアクセス機能を持つ家電群で、これから数週間のうちに発表されるという。この話は、昨年からウワサされていたもので、すでに1,700万会員にまで膨れ上がったAOLが、それでも新規会員を確保したいと思ったら、もう非パソコンユーザーに手を伸ばさなければならないという当然の『行き着く先』だとも言える。また、これは、ケーブルTV会社が、デジタル化でSTB(セットトップボックス)にインターネットアクセスを組み込んで来ることに対抗する手段でもあるだろう。デジタルSTBで、だれでもCATV網を使って簡単インターネットアクセスができるようになってしまうと、AOLにとっては大打撃となる可能性が高いからだ。今のAOLには、Sun Microsystemsというパートナーもいるわけで、SunのJava端末という展開もあるかも知れない。


●WinHECはサンクスギビング?

 先々週開催されたWinHEC 99についてだが、「Home nets and many Windows」(CNN,'99/4/14)がなかなか気の利いた表現をしているので紹介したい。この記事によると、WinHECはサンクスギビングのようなもので、おいしいものがたくさんあるように見えるが、終わってみるとごまかされたことに気がつくという。そして、クリアなテーマはほとんどこのイベントから浮かび上がってこなかったと言っている。実際に参加した身にとっては、こうこぼしたくなる気持ちはよくわかる。確かにWinHEC 99はフォーカスが明瞭でなく、2~3年前のWinHECと較べると、内容は薄かった。ところが、驚いたことに、それでも昨年のWinHEC 98よりはましだったのだ。


バックナンバー

('99年4月20日)

[Reported by 後藤 弘茂]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp